小学校入学や七五三詣りなど記念日に、若い親子が正装をして記念写真をとることも多くなりました。若い親子をターゲットにした写真スタジオのコマーシャルが行き渡って、写真スタジオのレンタルはかまで着かざって記念写真をとる若い親子が増えています。そうしたほほえましいファミリーが増えていることは喜ばしい光景です。
この4月に次のような記事が毎日新聞奈良版に載りました。
(毎日新聞 2019年4月25日 09時12分)
■生駒市教委 小学校卒業式のはかま、自粛要請へ
奈良県生駒市教育委員会は市立小学校に通う児童の保護者に対し、卒業式でのはかま着用の自粛を求める通知を出すことを決めた。小学校卒業式でのはかまの着用は全国的に増加傾向にあるが、慣れない着用による事故を防止したり、経済的な事情で準備が難しい家庭に配慮したりする狙いがある。【熊谷仁志】
市教委は今春の卒業式で、市立小12校のうち、標準服がある4校(生駒北、生駒台、俵口、鹿ノ台)を除いた8校で児童の服装を調査した。その結果、例えば生駒小では卒業生101人中25人(男子1人、女子24人)がはかま姿で、全体で約4分の1、女子は約半数が着用していた。あすか野小が着用率が最も高く、186人のうち4割超の約80人がはかま姿だった。他は、真弓小約20%、生駒南、生駒東、桜ケ丘、壱分の各小約25%、生駒南第二小約33%だった。
市教委によると、慣れないはかま姿の児童が転倒しかけたり、トイレを我慢したりするケースがあるほか、式の最中に着崩れて教員が直すこともある。また家庭の経済的事情で着用できる、できないの差が出ることにも配慮する必要があると判断した。
通知は中田好昭教育長名で、「禁止」まではしないが各家庭に配慮を求める。来春の卒業式向けのレンタル予約などが既に始まっており、市教委は「なるべく早く通知したい」としている。
この問題は3月の定例教育委員会で取り上げられ、今月22日の定例委員会で再度議論し、事務局の方針を承認した。
7人の教育委員からは「まずは自粛を要請し、来春の状況を見て、再度対応を検討しては」「クレームが来るだろうが、『公立の学校なので協力を』と自信を持って対応を」という意見が出た。また、「(通知が)卒業式の意味を保護者と子供が一緒に考える機会になれば」という声もあった。
■パパさん・ママさん、一度立ち止まって考えてみませんか
わたしは奈良県人です。奈良県生駒市の小学校卒業式出席学童の4分の1から半数までが、袴姿であることにびっくりしました。わたしはいろいろな人からいろいろな話を聞いているほうだと思っていましたが、この話はまったく知らなかった。わたしの居住地ではどうなのか、聞いてみようと思っています。
誰人にとってもわが子は特別にかわいい。まだ小さくてかわいい自分の子に袴を着せて記念写真をとるのはほほえましい。けれども袴姿のわが子を小学校の卒業式に送り出す親のセンスはどうなんでしょう。
わたしには高校育友会の会長を務めた経験があります。あるとき事務長さんと二人でよもやま話をしていました。事務長さんが「払ってあたりまえのわずかな授業料を払わない人がいる」と非難がましく話しました。
事務長さんには、払いたくても払えない人がいるというおもいやりが欠けていました。あるいはおもいやりがあったところで、無理をいって授業料を集めなければいけない責任ある立場ですから、つい愚痴がこぼれたのかもしれません。
わたしが経験した県立高校では、1学年320人のうち修学旅行不参加が毎年10人ほどおりました。不登校などの事情もあるでしょうが、半数以上は経済的な理由です。
高校生になると、通学のための月額交通費もばかにできません。部活に伴う費用や交流や試合などで他校に出かける機会も増えるし、小中学校にくらべると飛躍的に出費が増えます。
袴姿に着飾ったわが子と卒業式に行こうと思っているうちに、わが子にはいろいろな家庭環境にある卒業仲間がいることをついつい忘れてしまっている親のことを心配します。一度立ち止まって、小学校にはわが家庭とは異なったいろいろな立場や環境で育っている同学年児童がいることに思いを馳せてほしい。そうしたいろいろな環境や成長度合いの子どもたちの中で、思いやり合ったり競争し合ったりして育っていくことは小学校の意義の一つです。
ほかの卒業児童のことに思いを寄せてほしい。経済的にレンタルや着付け費用が負担になる親がいるでしょう。仕事の理由で、卒業式に着付けをしたわが子を連れていけない人もいるでしょう。そういう方やお子さんの気持ちに心を寄せて、袴を身に着けた晴れ姿のわが子を連れて歩くパパ・ママの喜びは、学校の外で味わうことにしてはいかがかと思います。
■アルマーニ監修の標準服採用――東京銀座 中央区立泰明小学校
これには唖然とする。これを望んだ親の一群がいるのはまちがいありません。そして採用した校長も、抵抗を排し批判を乗り越えておし進めることにまい進しました。この校長は熱意を持って仕事にまい進したものと見えます。
■総地方日本から見れば東京都は異郷異国か
東京は日本の首都であり、日本のほかの地域とはまったく異なる様相があります。日本のほかの地域のことを話す場合に、東京では「地方では」と総称しています。日本の他の道府県の総面積や総人口を東京都に対比すれば、首都東京は少数派になります。地方対首都の視点で地方を日本に見立てると東京都は異郷であり異国で、公立小学校アルマーニ標準服は総地方日本にとって想像もできなかったできごとです。アルマーニ標準服小学校を支えている一群の親と校長の「常識」が首都東京の常識にならぬよう、東京都民や東京通勤人が強く自覚してくれるであろうと期待します。
(毎日新聞 2018年2月9日)
■銀座の公立小制服 アルマーニがデザイン監修 計8万円、保護者が批判
東京・銀座にある中央区立泰明小学校(334人)が、4月に入学する新1年生の60人から、イタリアの高級ブランド「アルマーニ」がデザインを監修した「標準服」に変更する方針を示し、保護者から疑問や批判の声が上がっている。
区教育委員会によると、標準服は上着やシャツ、ズボンなどをそろえると計約4万5000円と現在の2・5倍になり、セーターなどを加えると8万円を超す。区教委は8日に記者会見し「着用は強制ではなく、校長には改めて保護者にしっかり説明するよう指導したい」と述べた。
同小は1878(明治11)年創立で、島崎藤村らの出身校。周囲はオフィスや百貨店が多く、学区外からも児童が通える「特認校」に指定されている。標準服は、ほぼ全児童が着用する。
区教委によると、同小は昨年9月、新入学児童の保護者説明会で、アルマーニの標準服に変更すると説明したが、価格を明示しなかった。区教委には「変更の理由が理解できない」などの保護者の声が寄せられ、区教委はアルマーニを採用した理由を学校に確認。和田利次校長は「銀座の中で育てられてきた学校。銀座に誇りを持ち、きずなを感じられる標準服にしたかった」と説明したという。この問題は8日の衆院予算委員会でも取り上げられ、林芳正文部科学相は「保護者らステークホルダー(利害関係者)ともう少し話をして決めていれば、という印象を持った」と語った。
教育評論家の尾木直樹・法政大特任教授は「公立小なのに、標準服があまりに高額。スクールアイデンティティーは制服でなく、知的、文化的な活動で確立するもの。銀座(という土地柄)に対する奇妙なうぬぼれに思える」と話した。
(注) この校長は鈍感なのか一人よがりなんでしょうね。銀座界隈で育ったお子さんなら
ば、大方が育った土地柄にひとりでに誇りを持つようになると思います。アルマーニ
標準服に教育意欲を燃やす校長に、誰か再教育してくれへんかなあ、と奈良県の片隅
から思っています。
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