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「百年前の山を旅する」 服部文祥

2013-07-06 | 読書

2006年5月 滋賀県の武奈ヶ岳山頂付近から若狭街道(鯖街道)を見下ろす。右、小浜方面、左、大原を経て京都方面。

古代から中世の若狭街道は、小浜市内から遠敷川をさかのぼって山中に分け入り、山の稜線をたどったり、小さな盆地の集落を通り、鞍馬から鞍馬口へと出るルートだったとか。

向こう側の山並みの中にその街道があったとは、この時には夢にも思わず。。。。。

こちら鞍馬寺2007年7月


 

山歩きが好きで古いことの好きな私には、百年前の山歩きを追体験したこの本はたいそう面白かった。

著者は山岳雑誌「岳人」の編集者で登山家。日本近代登山黎明期の名著、ウェストンの「日本アルプスの登山と探検」、「日本アルプス再訪」、田部重治「山と渓谷」などに触発され、(ちなみにこれらの本は、私もよく北アルプスへ行っていたころ読んでいますとおばさんの見苦しい自慢平にご容赦)、はたまた山で拾った古い山歩き用の携帯コンロを直して実際に使ってみたりする山歩きは、山道具が未発達な時代の山登りが読み手にも想像できて、たいそう楽しい読書体験でした。

殆どは「岳人」に掲載された記事。分けても面白かったのは「鯖街道を一昼夜で駆け抜ける」というタイトルの山旅。

一昼夜とは24時間、「京は遠ても十八里」、つまりは72キロある。それを歩けるのだろうかと著者は2010年7月17日、二回目のチャレンジをする。

おおよその行程は次の通り。

3:30 小浜駅前発 6:45 根来坂 10:30過ぎ 久多中 12:00 オグロ峠 15:00 杉峠 16:00 鞍馬寺 17:30 大原

大原へ行ったのは友人の梶山正氏の家に宿を頼んでいたため。鞍馬寺から京都へは日没前に辿り着けたはず。

若狭から京都まで14時間歩いて着いたことになる。5貫目の荷物を背負い、山の中の道をたどったとして、24時間で京都まで荷物を届けるのは不可能ではないのではないか。著者の結論である。

そうかもしれない。テクノロジーに頼りすぎた現代人は昔の人の能力を見くびっている。久多中の集落で著者は老人に「どこか登ってきたんか」と声を掛けられ、「小浜からきて京都へ行くつもり」と自慢すると、驚くでもなく「あんたなら行けるやろ」と言われただけだったというのが面白かった。

山中のこの地区では、昔は人が往来していたという伝承があり、割と身近な話だったのではと私も思う。

こちら鴨川上流、高野川沿いの手作りの標識。2009年12月

 

 左、若狭街道旧道 右が現在の若狭街道 左京区大原で2009年12月 上の木札は左側の道にかかっておりました。

出町柳にある鯖街道口の石柱。2009年7月。

古代の鯖街道口はここではなく当然鞍馬口ということになるのかな。


 

45年くらい前、大原の奥の阿弥陀寺へ行ったとき、ご住職が「若いときは鞍馬寺に用事があったら京都まで下りて廻らず、直接山道を行った」と話しておられた。それは戦前のことと思われます。

この本の中では京都から大原へのメインルートは、昔は鞍馬経由で山中に入るのではなかったかと類推しているので、ご住職の話と照らし合わせると、そう大変な道でもなかったと思われます。途中には集落もあるし。

ああ、また旅行したくなった。出町柳から京都バスで滋賀県の朽木まで一時間半。ここで民宿か何かに泊まる。あとは歩いて保坂まで約8キロくらい楽勝。保坂からJRバスに40分乗ると小浜駅。帰りは今津までバスで引き返し、湖西線、新幹線で帰宅。

これで鯖街道完全制覇。行ってみたいなあ。。。。

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