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「くわしすぎる教育勅語」 高橋陽一

2019-06-03 | 読書

教育勅語は明治憲法が発布された後、国民を教育するに当たっての基本的な方針を、天皇の勅語として与えたものです。

発案起草は幕末の儒学者トップにして洋楽も修めた中村正直、その原案を受け継いで井上毅と元田永孚が起草、戦前の教育の基本に置かれたものでした。

教育勅語が廃止されて71年が経ち、学校で意味も分からずに暗唱させられた世代も超高齢になって歴史の彼方へと遠ざかったはずの今、なぜこんな本を出したかと、その理由が後書きにあります。

2017年、「教育に関する勅語を教材として用いることまでは否定されることではない」と閣議決定され、それに対して教育史学会がシンポジウムを開き著者も参加、その発表を膨らませたのが本書のようです。

著者は「主権在民、基本的人権、平和主義という日本国憲法の基本原則を尊重することが教育のあり方を豊かにすると考えていますので、教育勅語の書かれているとおりに行って現在の教育が良くなるとは思っていないからです。」とはっきり書いています。

私もまったく賛成です。

あの悲惨な戦争とそれの反省の上にたって新しい国作りがスタートしたのですが、74年も経つと人々の記憶は全部が次世代へと受け継がれるわけでもなく、一部には戦前の教育を賛美する動きもあり、私自身はとても疑問に思っています。

教育勅語の中の、親に孝行、きょうだい友達仲良く、夫婦は仲良く、しっかり勉強して社会の役に立つ人間になる。ここまではまあよろしい。がしかし、これは教育勅語を今さら持ち出さなくても、毎日の生活の中で大人も子供も努力目標として頑張ればいいこと。

教育勅語の眼目は「一旦緩急あれば義勇公に奉じ…皇運を扶翼すへし」にあると、読めば誰でもすぐ分かると思います。

一旦緩急の最上級の出来事は戦争、戦争に躊躇せずに協力できる臣民を作るのが教育勅語の真の目的でした。全体の文意、文脈を無視して、一部をのみ取り上げ、昔の日本人は偉かったと、昔の教育はよかったと称揚するのはいかがなものでしょう。

著者は教育勅語を歴史的文献として読み解き、当時の社会のあり方に迫ろうとしています。子供たちが意味も分からずに勅語を暗唱し、躊躇なく戦争に参加する人格に育て上げられる。言葉と、その運用の仕方は大きな力を持っています。そういう時代の文献として読んでいく。

文字通り詳しすぎるのですが、何かあった時には読み返してみたいと思います。

教育勅語を今の時代に生かしたいと思っている人がいるのが、私には不思議でたまりません。人に率先して戦場に出向き、死ぬのもいとわない。そう考えるなら首尾一貫していますが、死ぬのは自分や自分の孫子ではない、自分のような立場の者は前線に行かなくても済むと楽天的に思っているのなら、矛盾しているのではないでしょうか。

日本人は戦後、誰一人戦争で死なず、戦争で他国の人もただの一人も殺すことはありませんでした。これからもずっとそういう日本であってほしいものです。

それを言えば必ず、日本を取り巻く軍事的危機、これを言う人いつの時代にもいます。それは私が子供の頃、米ソが核開発競争をし、キューバ危機の頃がピークだったと、老婆は今になれば思います。いかなる戦争も、得るものに対してコスパが悪すぎ、私はそう思っています。

それでもあなたは教育勅語を今の時代に復活させたいですか。先頭に立って戦争に行きたいですか。子や孫を行かせたいですか。と、問いたい気持ちです。

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庭のハンゲショウ

2019-06-03 | 日記

庭のハンゲショウが咲き始めました。

七十二候のひとつ、半夏生の頃に咲くのでこの名があると言われているらしい。

半夏生は夏至から11日目の七月上旬、このころまでに田植えを終える目安とされたそうです。

子供のころ、大人が「半夏する」と言っていたのを憶えている。田植えを終えた骨休め、昔のことだから贅沢なこともせず、家でのんびりしていたか、近所で集まって食事していたか、定かな記憶はない。

ただ、「はんげ」という言葉で、稲刈りを終えたばかりのすがすがしい水田、その上を飛ぶツバメ、半袖になったばかりの制服で下校していた遠い日を思い出す。

実家の庭にはこんな感じの山野草はありませんでした。

松とかモミジ、サツキ、など伝統的な庭木ばかり。

山野草に雑木を植えるのはあくまでも私の趣味であります。

毎日少しずつ夏。

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