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「阿弥陀堂だより」南木佳士

2021-05-06 | 読書

久しぶりに小説らしい小説を読んだ。金座街の古書アカデミィで110円で購入。

1995年3月発表の長編。

映画にもなったので

amidado dayori 2002 trailer - YouTube

ご存知の方も多いと思うけれど、肺腫瘍の専門医の妻と、小説の新人賞受賞後四苦八苦する夫が、体調不良と都会の生活に疲れ、夫の生まれ故郷に戻り、美しい自然と素朴な人情に触れて再生する物語。

ストーリーもちゃんとしていて、医師でもある作者は医療の部分の描写も的確で(たぶん、私は素人なので)、安心して読めました。そして人は結局、自然の中で人とのつながりで生かされるのだと、作者の強い確信を感じました。

1995年と言えば阪神淡路大震災の年、書かれたのはその前だと思うと、あれから続く天変地異に事件の数々、感染症の広がりは、その心のよりどころさえ頼りにならない時代になったのかと、殺伐とした思いにとらわれます。

帰るべき美しいふるさとも人情も、もうこの国には残されていないと結論付けるのは早すぎるけれど、わずか四半世紀前の作品なのに、とても昔のことのように感じてしまう。

時代は逆に向いては流れない。新しい時代の、コロナと天変地異の時代の新しい再生の物語を読みたいと思った。

作者は、私の遠縁の友達のお兄様、一度だけ消息を聞いたことがある。たったそれだけの御縁ですが、遠い知り合いと勝手に思っています。

作者自身、助からない患者さんを見続けて心身不調になられたと、何かで読みました。もう回復されたのでしょうか。世界中の病気のニュースを見るにつけ、生きて成長するものを見て元気になりたいと、しみじみと思う。

コメント (6)
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