4年前の今頃、尾道で、義妹、夫、私の三人で食事しました。海の見える素敵な店でした。尾道・・・また行きいなあ。
著者は朝日新聞の記者。二年前の東日本大震災直後は二週間、東電本社に詰めて取材にあたり、のちに福島総局へ応援に出向く。
原発事故の報道については、大事なことを報道しない「大本営発表」との批判があり、一年以上も過ぎてから、多くの人に取材をし、地震直後からの政府の原発事故対策について、主観を排し、事実を積み重ねるという方法で一冊の本として著したもの。
いゃあ、大変に迫力のあるドキュメンタリーでした。突然の停電とそれが引き金となった原発事故、それが情報が何もない段階から手を打たなければならない混乱ぶりがこれでもか、これでもかと描かれています。
読みながら、本当にゾッとし、脱力し、怒りが沸々と沸き起こり、どんな屁理屈を持ってきても、二度と原子力発電などしてはいけないのだという確信を強くしました。
いったん事故が起き、原発が暴走を始めると誰にも制御できない。被害の大きさは天文学的で、石油や天然ガスが高いなどというレベルを超えている。人の健康、人命が大きく損なわれる。この本を読むとそういう結論しか出てこない。それでもまだ原発を動かしたいなんて、原発動かすことでよほどいいことがあるんだろうか。
ここのエピソードが、いちいち怖い。
事故直後、菅総理があちらから10台、こちらからいくつと、電源車の手配をしている光景。トップがこんなことしないといけないなんて、政府の危機管理、全然体を成してないと私は思った。
対策本部に詰めている東電の役員、政治家に何を聞かれても答えられない。じゃ、会社に聞いてくれと言われても全く動けない。パニックで、フリーズした状態。原発の前に社員がメルトダウンしているとここでは書かれている。
政府に情報がほとんど来ない。原発の爆発もテレビ報道で知るありさま。
保安院、東電、何も答えられない。何もできない。以前、朝日の記事で、福島原発の職員がホームセンターでバッテリーを買い集めるという話にずっこけてしまったけど、そんな話はここでもてんこ盛り。
対策室に来た東電社員が原発の内部の図面を持ってないとか、周辺の地図から放射能の拡散範囲を割り出そうとしても縮尺を知らないとか、コンセントが合わないので繋げなかったとか。いやあ、東京電力には原子力発電を管理する能力はないでしょう。その東電が原子力発電所なんて動かしてはいけないでしょう。他の電力会社も似たり寄ったりかも。怖い。
この中で許し難いことが三つ。一つは東電が途中で原子力発電所を放棄すると言ったこと。ありえんでしょ。後で、いや放棄とは言ってない、一部を遺して撤退なんて言い訳してたけど、さらには移動ですって。ものは言いようである。呆れた。複数の人間が確かにその言葉を聞いたと証言しているのに、あとから事実を捻じ曲げて言い訳をする東電の体質ってどうよ。
もう一つは今の総理ABEの当時のブログ。菅首相が海水注入をやめさせた55分で、原発の状態が一層悪くなったと書いてるそうな。そもそも官邸には海水注入の情報が上がって来てないのに、止めさせることなんてありえない。いつの間にかABEの話が一人歩きをし、週刊文春と読売新聞がリークした。記者たちは官邸に電話をかけて来て、「それは違う」というとがっかりしてたそうな。受けるためなら嘘だって書く一部マスコミ。党利党略の為なら、あんな大変な時に平然と事実と違うことを発信する政治家。著者はABEに取材を申し込んだけど、返事がないそうな。
人は生きている間はいろいろな立場にいる。しかし、亡くなって長い時間が経ったときにはそんなことはどうでもよくなる。その時代に生きた者の責任として、ただ事実を残すべきと私は思う。今からでも遅くありません。ソーリ、ひとつ情報源を明らかにしませんか。それとも妄想?
そして放射能の拡散予測データ、SPEEDⅠをアメリカの求めに応じて送り続けたのに、官邸にはそれが届かなかったという事実。私はこの本を読むまでは官邸は知ってて隠していたとばかり思っていたけど、そうじゃなかったんですね。官僚の誰一人として自分の仕事の範囲外だけど、データを上げようと思わなかった。この体質に、本当にどうしようもなさを感じる。
この本を読んで、まだ原発があった方がいいと思う人がいたら、頭がおかしくなっているとしか思えない。総理以下閣僚は本当によく働いたと思う。誰がこの立場にいても似たようなことしかできなかったと思う。