■【心 de 経営】 徒然なるままに日暮パソコンに向かいて 003 第3段 よろづにいみじくとも 男は恋をしろ
「徒然草(つれづれぐさ)」は、吉田兼好による随筆集の冒頭の文章です。作者は、兼好であるという明確な証拠はないようです。おそらく大半の方が、何らかの形で、この文章に接しているのではないでしょうか。
徒然草といいますのは、清少納言の『枕草子』、鴨長明の『方丈記』とならび日本三大随筆の一つといわれています。
高校生時代に戻った気分で、また、社会人として人生を歩み、自分の高校時代には理解できなかったり、誤解していたりすることを発見しながら、独断と偏見に満ちた、我流の解釈を僭越ながらお付けしました。
徒然なるままに、日暮パソコンに向かいて、よしなしごとを、そこはかとなく書き付けてまいります。
お届けも、徒然なるままにアップロードしますので、読者の皆様も、日暮パソコンに向かいて、末永く、徒然にご覧下さるよう、お願いします。
◆第3段 よろづにいみじくとも 男は恋をしろ
出家をした兼好は、恋文の代筆をしたりして、俗世的なものを引きずっているのが面白いですね。
第三段は、男は、恋をしなければ一人前になれないというようなことを書いています。徒然草は、兼好の人間らしさが綴られているのも、「いとおかし」ですね。
◆003 原文 よろづにいみじくとも
よろづにいみじくとも、色好まざらん男は、いとさうざうしく、玉の巵(さかづき)の底なき心地ぞすべき。
露霜にしほたれて、所さだめずまどひ歩(あり)き、親のいさめ、世のそしりをつつむに心のいとまなく、あふさきるさに思ひ乱れ、さるはひとり寢がちに、まどろむ夜なきこそをかしけれ。
さりとて、ひたすらたはれたる方にはあらで、女にたやすからず思はれんこそ、あらまほしかるべき業(わざ)なれ。
【語彙】
さうざうし: 物足りない、心寂しい、張り合いがない(ウェブリオ古語辞典)
玉の巵(たまのさかづき): 玉(ぎょく)製の杯(さかづき)
【現代語訳】
どれほどすばらしいと思える男でも、恋を経験したことがない男は物足りないと兼好は言っています。
恋をしたことのない男は、みごとな玉製の盃の底がないようの役の立たない人間だとこころしています。要は、見かけだおしで、真の男の魅力というのは、恋という修羅場をくぐり抜けて身につくものであると考えているのです。
「恋は盲目」と言われますが、恋をすると朝から晩まで、歩き回れば露や霜でびっしょりと濡れるまで歩き回るような、愚行とも思えることをすることもあります。恋する人のことばかりを考え、親の説教や世間の避難は、恋する男を背手間立て、神経をすり減らして、あれこれと気をもみますが、自分では、それでも恋を止められないでしょう。
近年では、ストーカー行為として、警察のお世話になるかもしれませんが、恋をすれば、そのくらいのことをするようでなければ、ストーカー行為を推奨するわけではないですが恋をしているといえないかもしれません。
現実には、いくら、相手のことを思っても、「ひとり寝が多く、恋人と共寝する夜は少ない」と兼好は、それをおもしろいと思っています。
「恋をすべし」と兼好は言ってはいますが、恋に夢中になって、まっしぐらになってしまうと恋は成就しません。女性に、いつも好感を持たれるように節度をもった行動をすることが理想的な恋のあり方であると指南してくれています。
【コメント】
何ごとをするにおきましても、恋に夢中になるくらいの情熱や熱意がなければ、ひとかどのものを手に入れることは難しいでしょう。
「今を大切に」に日々生きていくことが大切なのではないでしょうか。
「日日是好日(にちにちこれこうにち)」という言葉があります。
この言葉は、文字通りの意味は「毎日毎日が素晴らしい」という意味です。しかし、兼好が言いたいことは、「毎日が良い日となるように、意識をして日々を送るべきである」といいたいのでしょう。
日常生活には、喜怒哀楽がこもごもです。それらに一喜一憂するのではなく、「今」「この瞬間」を大切に生きることが大切であるということです。
人によっては、「今この時が大切なのだから、やりたいように生きていくことで良いのだ」といいます。
その様なことをおっしゃる人に出会いますと、イソップ物語のひとつ、「アリとキリギリス」というお話を思い出します。
キリギリスは、今を謳歌して人生(「虫生」かな?)を楽しんでいました。冬じたくに勤(いそ)しむアリを見て、彼等を莫迦にしていました。ところが冬が到来しますと、キリギリスは生きて行かれなくなってしまいました。有名なお話ですね。
人生設計をキチンと立て、それに向かって「今を大切に生きる」ということを兼好は言いたいのではないでしょうか。
恋をするということは、何ごとにも一所懸命になれという比喩的な表現として私は解釈しています。
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