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■【経営四字熟語で目から鱗が落ちる】6-01 旱天慈雨 個から組織で動くへ~苦境に立っているときに差し伸べられる助け ~

2025-03-01 12:03:00 | 【心 de 経営】 経営四字熟語・名言

  ■【経営四字熟語で目から鱗が落ちる】6-01 旱天慈雨    個から組織で動くへ~苦境に立っているときに差し伸べられる助け ~   


 
  四字熟語というのは、漢字四文字で構成された熟語であることはよく知られています。お恥ずかしいながら、その四字熟語というのは、すべてが中国の故事に基づくものとばかり思っていましたが、実はそうではないことを発見しました。
 経営コンサルタントという仕事をしていますが、その立場や経営という視点で四字熟語を”診る”と、今までとは異なった点で示唆を得られることが多のです。「目から鱗が落ちる」という言葉がありますが、四字熟語を講演や研修の場で用いたり、自分の仕事や日常会話に活かしたりするようにしましたら、他の人が私を尊敬といいますとオーバーですが、自分を見てくれる目が変わってきたように思えたことがあります。
 四字熟語の含蓄を、またそこから得られる意味合いを噛みしめますと、示唆が多いですので、企業経営に活かせるのではないかと考えるようにもなりました。これを「目鱗経営」と勝手に造語し、命名しました。
 以前にも四字熟語をご紹介していましたが、一般的な意味合いを中心にお話しました。このシリーズでは、四字熟語を経営の視点で診て、つぶやいてみます。以前の四字熟語ブログもよろしくお願いします。

第6章 仕事上手になる法
 論理思考で現状分析をキチンとし、方向性を明確にしてからPDCAサイクルを回し始めても、実際に行動に移したときに旨くいかないことがあります。やりたいという気持ちはあっても、いざ行動に移そうとしたときに、動けないこともあります。
相手の人を説得したり、納得させたりしても、必ずしも相手は期待通りに動いてくれないことがあります。日常生活においてだけではなく、経営者・管理職にとっては、社員や部下が動いてくれないというのは深刻な問題です。
 人の価値観というのは、多様性に富んでいます。論理思考で相手を説得したからといって、相手は納得したわけではありません。一つの価値観だけでは、相手は納得してくれません。人は、理屈だけで動いているわけでもなく、感情もあります。
 うまくいかない原因として、やろうとしていることにコツやカンというものがあったり、それを行うための技術が必要であったりして、その習得ができていないことでうまく行かないことがあります。コツの飲み込み方が上手な人もいれば、そうでない人もいます。
 このような時に、役立つ四字熟語がありますので、ご紹介します。ここでは、四字熟語の中から、相手を理解し、一方、相手にその気になってもらうには、どうしたらよいのか、心に訴えるヒントを感じ取っていただきたいです。

■6-01 旱天慈雨    個から組織で動くへ
    ~ 苦境に立っているときに差し伸べられる助け ~


「旱天(かんてん)」とは、「干天」とも書き、「干ばつ」という字からも想像が付くと思いますが「日照り」のことです。「慈雨(じう)」は、文字通り恵みの雨ですので、「旱天慈雨(かんてんじう)」という四字熟語は、「干ばつのような日照りが続いているときに降る恵みの雨」のことです。このことから、私たちが「苦境に立っているときに差し伸べられる助けや支援が提供されるありがたいこと」をいいます。
 このことから「干天慈雨(かんてんじう)」とも書きますし、同じ意味合いで「大旱慈雨(だいかんじう)」とう言葉もあります。

 かつて私が経営コンサルタントの第一線で活動していたときに、「乳母日傘(おんばひがさ)」の若者がいました。その青年は、某証券会社の重役の息子さんで、子供の頃いつも乳母が付き添って世話をしてくれました。箸より重い物を持ったことがないような、何不自由ない恵まれた環境に育ちました。まさに「乳母日傘」を地で行くような生活で、どこかへの移動は運転手付きで乳母と共に移動し、車から目的地までのわずかな距離でも日傘を差してもらうような生活でした。
「砥㸿之愛(しとくのあい)」は、「㸿」は、「仔牛」のことで「犢」という旧字体で用いられることが多く「砥犢之愛(しとくのあい)」というのがもともとの表記のようです。「親牛が仔牛を舐めてかわいがる」ことから「親が子供を溺愛する」という意味です。
 そのような乳母日傘で育てられた子供がどの様な大人になるのかは想像がつきます。その結果、「横行闊歩(おうこうかっぽ)」がまかり通る人間になってしまいました。「横行」は、勝手気儘に、我が物顔で歩き回るという意味で、それが転じて「自由に振る舞う」と言う意味でも使われます。「横行闊歩」というのは、「辺り構わず、思いのままに大いばりで歩く」という意味で、そこから転じて「わがまま勝手な振る舞い」の意味でも使われます。
 同じような意味で「気随気儘(きずいきまま)」という四字熟語があります。「気随」という熟語も「気儘」も、自分の思うがままに勝手に振る舞うという意味で、同じ意味の熟語を重ねることにより、意味を強めています。

 その青年が大学生の時に父親の会社が倒産し、大学も中途退学をせざるを得なくなりました。そのために、無名な中小企業の会社に勤務することになり、始めは遅刻・早退はあたり前、無断欠勤もしばしばでした。社内での発言も、周囲の空気を読むことができず、勝手気ままな発言をするなどして、鼻つまみ者の存在でした。各部署の管理職が厭がり、たらい回しにされて、最後にたどり着いたのが営業部でした。
 営業という仕事は、結果が数字として出てきますので、この青年にとっては、「孤軍奮闘(こぐんふんとう)」しても、万年最下位の結果に甘んじなければなりませんでした。「孤軍」とは、孤立した軍隊が、「奮闘」して善戦すること、支援者がない中で、ひとりで懸命に努力することを指します。
 営業部長が「これから三か月以内に一度でも良いから最下位を脱出できなければ、会社を辞めてもらう」と厳しく言い渡しました。もともと、頭の良い青年だったらしく、真剣に仕事に取り組み始めたのですが、一向に注文をとることができません。
 そのようなある日、営業部長から、ある知恵を授かり、三週間目にして、初めて注文をとることができました。この青年は、その時初めて人の心の温かさを感じたと後になって漏らしています。営業部長のアドバイスが「旱天慈雨」だったのです。「背水之陣」で、必死に仕事をすることで結果を出せることを学んだ彼は、「君子豹変(くんしひょうへん)」して、まじめにコツコツと仕事をするようになりました。
 その青年は、後に「神出鬼没の営業パーソン」といわれるほど、ライバル企業の営業パーソンに怖れられるようになったといいます。「神出鬼没(しんしゅつきぼつ)」は、「神や鬼のように変幻自在に出没する」とうことから「神や鬼のように自在に現れたり、隠れたりする」という意味です。「鬼出電入(きしゅつでんにゅう)」ともいいます。後者の「電」は「稲妻」のことで「現れたり消えたりがすばやく、目にとまらない(新明解四字熟語辞典)」という意味です。
 易経の中で、得のある君子が、自らの過ちを素直に見つめ、直ちに自分のやり方を改めた結果、直ぐに良い結果を生むようになったという話から「君子豹変」という四字熟語が生まれました。「豹変」とは、豹(ひょう)のまだら模様がくっきり、鮮やかに変化しているという意味です。このことから転じて、君子豹変とは、「態度や思想が急に変わる」という時にも使われます。ただし、希に「変わり身の早さ」というあまり良くないニュアンスで使われることもありますが、もともとは肯定的な意味でした。
「首尾一貫(しゅびいっかん)」は、「始めから終わりまで言動が変動せず、一筋に貫かれている」という意味です。「終始一貫(しゅうしいっかん)」とか「徹頭徹尾(てっとうてつび)」も同じような意味で、主義や主張、あるいは態度が定まっていて、ぶれない人のことを指します。

 ここに登場します営業部長ですが、大変有能な管理職で「管理職は、ルールを破る人」という考えをもっていました。私も十年間サラリーマンをしていましたので、有能な管理職からいろいろと学んだことがあります。ところがその管理職は、しばしば始末書を書かされていました。例えば、部下が自分の権限内では、定められた値引きしかできないときに、部長権限で大幅値引きをしました。顧客が困っていることを解決するにあたりまして、現状の商品では対応できない状況に遭遇したときのことです、勝手に規格外の仕様で、顧客の要望を聞いて注文をとってきました。社内に戻ると技術部に掛け合い、そこで埒があかなくなりますと、開発部に掛け合って、特別仕様の商品を作らせたとのことです。そのために、新商品開発が遅れたり、生産計画が乱れたりと大変な影響が出て、始末書を書くことになりました。
 私は、この話を目の当たりにしたときに、有能な管理職というのは、会社の種々の決まり事に縛られていては、手腕を発揮できないことを感じ取りました。すなわち、仕事で結果を出すには、「臨機応変(りんきおうへん)」な考え方が必要なのです。臨機応変という四字熟語も、いまさら説明する必要もないほど、一般に流布された言葉です。「各種の条件下で、その条件に応じて適切な判断をしたり、道具を使ったりして対処する」ことです。
 この営業部長も、会社のルールを「金科玉条(きんかぎょくじょう)」のごとく守っていては仕事にならないことを知っているのです。かといって、この人がコンプライアンスを軽視しているわけではなく、むしろ社会人としては立派な人です。
「金科玉条」の「金」も「玉」も貴重で、高価な物です。「科」と「条」は法律や決まりごとのことです。すなわち、金科玉条とは、「黄金や珠玉のように、素晴らしく、美しくもある」ようなルールという意味です。ここから、融通の利かないこととして、あまり良い意味では使われないことも多い四字熟語です。
 また、この営業部長は「即決即断(そっけつそくだん)」の人で、「朝令暮改(ちょうれいぼかい)」を厭いません。それどころか臨機応変な経営管理こそ金科玉条で、朝令暮改はあって当然と言うことを口癖のように言っていました。
「即決即断」は、「意思決定を、その場で直ぐに行う」ことで、日本企業は、商慣習上の稟議制度などがあり、海外の企業から嫌われることの一つです。「速戦即決(そくせんそっけつ)」ができないために、グローバル市場で負けてしまっているとも言われています。
「朝令暮改」の戻りますが、「朝令」とは、朝出した法律という意味です。「暮改」は、夕暮れに、それを改める、すなわち夕方には、朝一旦決定した法律を直ぐに改めてしまういう意味です。このことから「命令や法規法令などが頻繁に変更される」ことを言います。あまり良い意味で使われなく、「しばしば」、すなわち「再三再四(さいさんさいし)」変更されて、あてにならないという意味でも使われます。
 朝令暮改は、漢書に出てくるのですが、類似四字熟語として「朝改暮変(ちょうかいぼへん)」というのがあり、同じ意味で使われています。

 旱天慈雨の人は、単に優しさを持つだけではなく、考え方がフレキシブルなのかもしれません。
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