ごっとさんのブログ

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今でも残るアスベスト被害

2017-08-04 11:06:10 | 化学
アスベスト(石綿)の人体への害が明らかになり、撤去されてからかなりの年月が経ちますが、未だに被害者が出ているようです。

アスベストはケイ酸のマグネシウムなどとの錯体で、非常に良い性質を示していました。これは繊維状の結晶ですがその1本の直径は0.02から0.35マイクロ(髪の毛の5,000分の1)と非常に細く、耐久性、耐熱性(不燃性)、耐薬品性、電気絶縁性などの特性に非常に優れ、しかも安価であることから「奇跡の鉱物」として重宝されました。

用途としては建設資材、電気製品、自動車、家庭用品など様々なものに広く使われてきました。しかし空中に飛散したアスベストを長期間吸入すると、肺ガンや中皮腫の誘因があることが指摘され、「静かな時限爆弾」と呼ばれるようになりました。

このアスベストの歴史は古く、古代エジプトではミイラを包む布として、古代ローマではランプの芯として使われていたといいます。日本でも古くから使用されていたのですが、特に20世紀に入ると建物などの断熱材や防火剤、機械などの摩擦防止用に大量に使用されていましたが、1970年代に入ると人体や環境への有害性が問題となりました。

日本では2006年9月から、化学工業プラントで配管同士の接続に使用されるシール材などの5品目を除き原則禁止となりました。しかし厚生労働省は、2008年に例外的に認められていた5製品についても2011年をめどに全廃することとし、新たなアスベスト製品は製造されないことになりました。

この人間への害は発症するのに非常に時間がかかり、数十年後という例もあるようです。2012年には日本で1,400名の中皮腫による死亡が確認されており、過去のアスベスト汚染の健康被害が本格的に顕在化し始めていると見られています。

私はこのアスベスト問題はすでに対策も済み、過去の問題となっているような気がしていましたが、まだまだ多くの建物に使用されているようです。

環境省では建築物の解体によるアスベストの排出量は、2020年から2040年ごろにピークを迎えると予測しています。この間は年間10万トンのアスベストが排出され、今後の解体に当たって建築物周辺の住民の健康への影響が懸念されているようです。

人間の体の特に肺は、異物が侵入してきたときに咳などによって排出する機能がしっかりしているといわれていますが、アスベストのような非常に細い結晶の線維が刺さると、排出することはできず蓄積してしまうようです。

これから建築廃材から出るアスベストは、個々にはそれほど大量ではないためそれほど被害は出ないはずですが、発症するまで時間がかかるというのはやや怖い気がします。私の自宅はこの禁止前ですので、どこかに使われているのかもしれません。