ごっとさんのブログ

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新発見 ユニークな命名

2017-08-30 10:13:51 | 化学
先日新聞に新発見をしたときの化合物に、日本ならではのユニークな名前が付いているという記事が出ていました。

最初に取り上げたのは1991年に合成された、新しいシクロデキストリンに「シクロアワオドリン」と命名したことでした。我々化学者は、新しく発見した化合物や新規に合成した化合物の命名権を持っています。最近では日本人が発見した元素に「ニホニウム」と命名したことをこのブログでも書いています。

ここではユニークな名前を紹介していますが、なかなか面白いものも多いようです。例えば受精に必要なタンパク質は縁結びの出雲神社にちなんで「イズモ1」と命名されています。また網膜にある視覚に関わるタンパク質は、電撃を放つポケットモンスターにちなんで「ピカチュリン」などがあるようです。

ここで化合物の名前について触れておきますが、正式名は国際純正・応用化学連合(IUPAC)というところで世界的に統一されています。しかしこの規則は非常に難しく、「化合物命名法」という本がかなり厚くて2冊も出ているほどです。

この正式名は特許などでは記載することもありますが、非常に長くなり少し複雑になると数行から十数行にもなってしまいます。そのため発見者が一般名を付けることになるわけです。私のような企業研究の場合は、命名するということは市販するが前提になりますので、あまりユニークな名前は付けられません。

またこの名前は商標登録するのですが、誰かが先に登録してあると当然使うことができません。そこで私が勤務していた会社では、何年かに一度社員から薬の名前にふさわしそうな名称を募集し、その中から良いものを先に商標登録してしまうわけです。

また企業の場合はその薬を発売するときに商品名を付けるわけですが、これは医者や消費者に覚えてもらえるような名前となります。この時一般名の一部を使ったり、全く違う名前にするとか色々ですが、この名前の付け方で企業のセンスが問われますのでかなり難しくなっています。

この記事には名前が変わってしまったものとして、オリザニンからビタミンB1などが紹介されています。また副腎皮質ホルモンのアドレナリンというのは日本ではなじみの名前ですが、米国ではエピネフィリンと呼ばれているようです。

この記事は取り上げていませんが、日本の命名で一番古いのは、酒麹の中に含まれる酸をコージ酸であろうと思っています。その他そのものずばりで、マツタケのあの独特の香り物質をマツタケオールとしたのも日本人です。

このように化合物命名には面白い由来も多いので、また思い出したらかくかもしれません。