認知症治療薬は各国で開発が進んでいますが、そこには2つの大きな壁があるとされています。
日本では2011年7月を最後に、アルツハイマー型認知症の新薬は登場していません。現在、この疾病の新薬開発の停滞は全世界共通の問題となっています。
アメリカ研究製薬工業協会が2016年7月に公表したアルツハイマー型認知症治療薬開発に関する報告書では、同協会会員の製薬企業が1998~2014年に臨床試験を行った新薬候補127成分のうち、規制当局から製造承認取得を得ることができたのはわずか4成分、確率にして3.1%にすぎません。
この4成分が世界初のアルツハイマー型認知症治療薬・アリセプトを含む、現在ある4種類の治療薬そのものです。
一般的に薬の開発では、ヒトでの臨床試験に入ったもののうちおよそ10%強が実用化されますが、これ自体かなり低いといえますが認知症に関してはその3分の1という超低確率となっています。
このアルツハイマー型認知症の新薬開発にはいくつかの大きな壁が立ちはだかっているのです。第1の壁として原因が完全には特定されていないことが上げられます。現時点ではアミロイドβやタウと呼ばれるタンパク質が脳内に異常蓄積し、神経細胞を死滅させると考えられていますが、明確なエビデンスは得られていません。
このタンパク質の蓄積が進むことは確かですが、根本原因は別にあり、タンパク質の蓄積はその結果併発的に起こっているという説もあるようです。実は原因が特定できなくとも、薬の効果を見ることができる明確な指標があれば、治療上は大きな問題とはならないとも言えます。
例えば本態性高血圧のように原因が分からなくても、服用した薬で血圧値が下がれば、効果があると判定できるわけです。
ところが認知症では明確な指標がなく、そもそも診断自体が患者の物忘れの状況など医師の問診に加えて、記憶テストや簡単な計算などで認知機能を測定する「認知症スケール」の合計点数で診断を下します。
治療薬の効果判定の一部も、この認知症スケールで評価しますので、数値基準で測れない以上曖昧さが含まれることは避けられません。つまりアルツハイマー型認知症の新薬開発は、正体のわからない相手に効果のわからない手段で立ち向かう、いわば手探りの戦いといえます。
もう一つがこの病気に特有の一定以上に症状が進むと効果が発揮できないという点にあります。つまり臨床試験を行うには軽症あるいはそれ以前の前駆期と呼ばれる患者が必要になるわけです。
ところが前駆期の患者は、自分自身も周囲も認知症であると気付いていないのです。そのため医師も製薬会社も、治療効果が出る臨床試験に適した人を見つけることが難しく、参加者が集まるまでに数年を要することがあるようです。
こういった壁を克服し、一刻も早い治療薬の開発が望まれます。
日本では2011年7月を最後に、アルツハイマー型認知症の新薬は登場していません。現在、この疾病の新薬開発の停滞は全世界共通の問題となっています。
アメリカ研究製薬工業協会が2016年7月に公表したアルツハイマー型認知症治療薬開発に関する報告書では、同協会会員の製薬企業が1998~2014年に臨床試験を行った新薬候補127成分のうち、規制当局から製造承認取得を得ることができたのはわずか4成分、確率にして3.1%にすぎません。
この4成分が世界初のアルツハイマー型認知症治療薬・アリセプトを含む、現在ある4種類の治療薬そのものです。
一般的に薬の開発では、ヒトでの臨床試験に入ったもののうちおよそ10%強が実用化されますが、これ自体かなり低いといえますが認知症に関してはその3分の1という超低確率となっています。
このアルツハイマー型認知症の新薬開発にはいくつかの大きな壁が立ちはだかっているのです。第1の壁として原因が完全には特定されていないことが上げられます。現時点ではアミロイドβやタウと呼ばれるタンパク質が脳内に異常蓄積し、神経細胞を死滅させると考えられていますが、明確なエビデンスは得られていません。
このタンパク質の蓄積が進むことは確かですが、根本原因は別にあり、タンパク質の蓄積はその結果併発的に起こっているという説もあるようです。実は原因が特定できなくとも、薬の効果を見ることができる明確な指標があれば、治療上は大きな問題とはならないとも言えます。
例えば本態性高血圧のように原因が分からなくても、服用した薬で血圧値が下がれば、効果があると判定できるわけです。
ところが認知症では明確な指標がなく、そもそも診断自体が患者の物忘れの状況など医師の問診に加えて、記憶テストや簡単な計算などで認知機能を測定する「認知症スケール」の合計点数で診断を下します。
治療薬の効果判定の一部も、この認知症スケールで評価しますので、数値基準で測れない以上曖昧さが含まれることは避けられません。つまりアルツハイマー型認知症の新薬開発は、正体のわからない相手に効果のわからない手段で立ち向かう、いわば手探りの戦いといえます。
もう一つがこの病気に特有の一定以上に症状が進むと効果が発揮できないという点にあります。つまり臨床試験を行うには軽症あるいはそれ以前の前駆期と呼ばれる患者が必要になるわけです。
ところが前駆期の患者は、自分自身も周囲も認知症であると気付いていないのです。そのため医師も製薬会社も、治療効果が出る臨床試験に適した人を見つけることが難しく、参加者が集まるまでに数年を要することがあるようです。
こういった壁を克服し、一刻も早い治療薬の開発が望まれます。