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昆虫と細菌の不思議な共生

2018-02-28 10:46:24 | 自然
自然界においては色々な生物が非常に面白い共生関係を築いています。

私が出向していた研究所でも、シャコガイと微細藻との共生を研究していました。シャコガイは貝を開くと表面にびっしり微細藻が付着しており、すべての栄養を自分では取らずこの微細藻からもらって生きているという面白い生物でした。

ここでは昆虫と細菌の不思議な共生関係を紹介します。昆虫の中には、生命を維持するための極めて重要な役割を細菌が担っており、細菌を除去すると死んでしまうものも少なくないようです。

まず八重山諸島に分布するクロカタゾウムシですが、その特徴は体を覆う翅や脚などの外骨格が非常に厚く頑丈なことです。そのため鳥などが食べようとしても、硬すぎて消化できず捕食者に敬遠されています。

この硬い体をつくるのに、実は共生細菌が関わっており、細菌が働かないようにすると軟らかい体になってしまいます。このクロカタゾウムシは、単に「持って生まれたもの」と考えられてきましたが、実際は細菌の助けにより硬さを生み出してきたわけです。

最近研究が進んでいる昆虫としてカメムシがあります。カメムシの仲間は植物の葉や幹に産卵しますが、その周りをゼリー状の物質で覆っています。孵化してきた幼虫がこのゼリーを食べますので、栄養分を与えるものと考えられてきましたが、この中には細菌が入っており共生する細菌をこのように次世代につないでいることが分かりました。

この発見により、細菌を除いてしまったり、他の種類の細菌と交換するといったことが容易になり、カメムシの共生関係が詳しく分かってきました。

カメムシは腸内に盲腸のような構造が多数あって、その中に共生細菌を蓄えています。実験的にこの共生細菌の感染を妨げて無菌状態にすると、幼虫はほとんど成長せず死んでしまいます。また細菌の方も腸内でしか増殖できないものも多いようです。

こういった共生がいつごろ出来上がってきたかが、進化生物学における大きな謎だったようです。これがチャバネアオカメムシの研究で手掛かりが出てきました。

これは日本全土に生息しコンビニの灯に飛んでくるような一般的なカメムシです。このカメムシの日本全国の共生細菌を調べていったところ、すべて同じ菌が見つかりました。ところが南西諸島にはこの菌以外5種の細菌が見つかりました。

これはすべて本土のカメムシにも共生細菌として機能し、3種は腸外では生育できませんでした。しかし2種は腸外でも生息可能で、南西諸島の土壌中に生育していることが分かりました。そこで無菌状態にした幼虫をこの土壌中で飼育したところ、1種の菌が取り込まれ成虫まで育つことができました。新たな共生関係が樹立できたことになります。

つまり地球上では現在も新しい共生関係ができているところなのかもしれません。