現在最も強い効果を示す鎮痛剤としては、モルヒネ、ヘロイン、フェンタニルといったいわゆるオピオイド系薬物が上げられます。
当然ですがこういったものは麻薬としても知られており、その依存症を含めた副作用が問題となっています。こういった麻薬性をなくして鎮痛効果だけを取り出すことができないかという取り組みが盛んに行われています。
ここではオピオイド受容体、すなわち体内で薬物に結びつくタンパク質に注目した研究を紹介します。
オピオイド受容体は、脳や末梢神経の細胞膜に存在しており、細胞の「門番の役割」を担っています。重要な効能である鎮痛作用をもたらす一方で、深刻で依存性が高く、命を奪いかねない副作用にもつながっています。アメリカでは、鎮痛剤として処方されるオピオイド系薬物の依存症が蔓延しており、中毒による2016年の死者数は5万人を超えているようです。
ノースカロライナ大学の研究チームは、オピオイド受容体が薬の分子と結合している状態の構造を初めて解明しました。これまでに知られているオピオイド受容体は、ミュー、デルタ、カッパ、ノシセプチンの4種類が知らており、ヘロイン、モルヒネなどのいわゆる麻薬類はミュー受容体に優先的に結合します。
またこのミュー受容体は、薬の鎮痛作用を促進する一方で、依存性が高く致死的な副作用の原因でもあるとされています。その点カッパ受容体は痛みを和らげる作用をもたらすものの、副作用は幻覚や不快感に留まっています。
このカッパ受容体にのみ作用する薬を作ることが求められているわけです。このような選択的活性化を偏向シグナリングと呼びますが、これを達成するためには受容体の構造を知ることが必須と考えられていました。
分子がカッパ受容体に結合すると、受容体は活性化して変形し、細胞内のシグナルのネットワークスイッチが入ります。この場合ある形状への変化は、鎮痛効果をもたらすシグナル回路を駆動し、別の形状への変化は幻覚などの副作用に関わる回路を駆動します。
この活性化した形状を知るためにモルヒネに似た合成分子と小さな一本鎖抗体を使って、タンパク質を活性状態のまま固定しました。これにより活性型の構造がわかり、これに基づいた研究が進むと考えられます。
しかしここから麻薬作用のない鎮痛剤にたどり着くまでは、非常に時間がかかると思われます。こういった受容体の構造から新薬を創生するという手法で、コンピュータを使った面白い例がありますので、後で紹介します。
当然ですがこういったものは麻薬としても知られており、その依存症を含めた副作用が問題となっています。こういった麻薬性をなくして鎮痛効果だけを取り出すことができないかという取り組みが盛んに行われています。
ここではオピオイド受容体、すなわち体内で薬物に結びつくタンパク質に注目した研究を紹介します。
オピオイド受容体は、脳や末梢神経の細胞膜に存在しており、細胞の「門番の役割」を担っています。重要な効能である鎮痛作用をもたらす一方で、深刻で依存性が高く、命を奪いかねない副作用にもつながっています。アメリカでは、鎮痛剤として処方されるオピオイド系薬物の依存症が蔓延しており、中毒による2016年の死者数は5万人を超えているようです。
ノースカロライナ大学の研究チームは、オピオイド受容体が薬の分子と結合している状態の構造を初めて解明しました。これまでに知られているオピオイド受容体は、ミュー、デルタ、カッパ、ノシセプチンの4種類が知らており、ヘロイン、モルヒネなどのいわゆる麻薬類はミュー受容体に優先的に結合します。
またこのミュー受容体は、薬の鎮痛作用を促進する一方で、依存性が高く致死的な副作用の原因でもあるとされています。その点カッパ受容体は痛みを和らげる作用をもたらすものの、副作用は幻覚や不快感に留まっています。
このカッパ受容体にのみ作用する薬を作ることが求められているわけです。このような選択的活性化を偏向シグナリングと呼びますが、これを達成するためには受容体の構造を知ることが必須と考えられていました。
分子がカッパ受容体に結合すると、受容体は活性化して変形し、細胞内のシグナルのネットワークスイッチが入ります。この場合ある形状への変化は、鎮痛効果をもたらすシグナル回路を駆動し、別の形状への変化は幻覚などの副作用に関わる回路を駆動します。
この活性化した形状を知るためにモルヒネに似た合成分子と小さな一本鎖抗体を使って、タンパク質を活性状態のまま固定しました。これにより活性型の構造がわかり、これに基づいた研究が進むと考えられます。
しかしここから麻薬作用のない鎮痛剤にたどり着くまでは、非常に時間がかかると思われます。こういった受容体の構造から新薬を創生するという手法で、コンピュータを使った面白い例がありますので、後で紹介します。