ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

脊髄損傷の新薬による治験開始

2018-02-21 10:45:13 | 健康・医療
大阪大学などの研究チームは、脊髄損傷の治療を目指し新たに開発した薬を患者に投与する臨床試験を始めると発表しました。

まずは背骨の中を走る脊髄の中枢神経がガン転移による圧迫で損傷し、手や脚が動かなくなった患者で安全性や効果を確認します。アメリカでも製薬会社による臨床試験が計画されており、外傷性の脊髄損傷の治療も含め、5年後の実用化を目指しています。

脊髄損傷は、事故などで脊髄の中枢神経が傷つき、手や脚がマヒする疾患です。国内外で治療法の開発がすすめられていますが、有効な治療法はまだ確立していません。

研究チームは、傷ついた神経の修復を妨げるRGMというタンパク質に着目しました。このタンパク質の働きを抑えるRGM抗体を田辺三菱製薬と共同開発しました。このRGMタンパク質は、多発性硬化症の研究から注目されているものであり、T細胞を活性化することで発症し悪化すると考えられていました。

本来は発生の途上で神経の回路形成を制御するタンパク質ですが、この研究チームは抗原提示細胞にも発現していることを突き止め、免疫系での機能解析を行っていました。この辺りはいろいろ難しく、私もよく理解できないのですが、抗原提示細胞がT細胞を活性化する際に、RGMはその活性化を促進しているということのようです。

脳脊髄炎の実験マウスに、このRGMの機能を中和する抗体を投与すると、脳脊髄炎による神経症状が抑えられたようです。

京都大学霊長類研究所で、重度の脊髄損傷を負った直後のニホンザルにヒト用のRGM抗体を投与したところ、4週間後にまひした手が動くようになりました。その後約3か月で小さな容器に入った餌を指で取り出す細かい作業もこなすなど、損傷前に近い状態まで運動機能が回復しました。

日本での臨床試験は、大阪国際がんセンターで行い、ガン転移で麻痺が出た患者5~10人の血管に抗体を注射し、約1年かけて安全性や効果を検証する予定です。日本脊髄障害学会の1990~92年の調査では、国内の脊髄損傷の患者は10万人以上で、新たな患者は毎年5000人と推計しています。

脊髄などの神経が損傷した場合は、自力では修復できないものと思っていましたが、本来はその能力があるのにそれを妨げるタンパク質が存在するというのは面白い気がします。

研究チームは、ペンを握ったり、コップをもって水を飲んだり、杖で歩いたりできる程度まで麻痺が回復するのではと期待していると述べています。