ごっとさんのブログ

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科学論文にご用心

2018-07-29 10:28:39 | その他
数年前ある研究者が、普通の料理本で最も使用されている50種類の材料を取り上げ、ガンのリスクや予防に関連付けられているものがいくつあるかを科学雑誌に掲載された様々な論文を基に研究しました。

その結果、塩や小麦粉、パセリ、砂糖など50種類中40種類がガンと関連付けられていることが分かりました。この結果を2013年に論文として発表し、私達が食べている物はすべてガンに関係しているのではないかという疑問を呈しました。

この調査は、科学界において認識されてはいるものの依然起こり続けている問題、十分な量の試料を収集していない研究が多いことを示していました。またスタンフォード大学の研究者も、発表される論文の大半は、たとえまじめな雑誌に掲載されたものであってもかなりずさんなものだと結論付けています。

一部の雑誌は現在、論文の執筆者に対し研究計画書(プロトコル)の事前登録と未加工データの提供を求めており、これによって研究者が結果を不正操作することが困難になったとしています。こうした方法を取ることで、論文を著者以外の人々が検証したり再現したりすることも可能になります。

ここでは2015年に実施された大規模な試験では、心理学の3大専門誌に掲載された100件の論文のうち再現に成功したのはわずか3分の1と報告しています。この記事ではこういった再現性が出ないのは研究方法や研究者の問題といいたいようですが、私はそういった結果が出るのが科学であると感じています。

昔から私の専門である有機化学では論文の内60%は再現され、生物・生態学では30%、医学・生理学分野では10%といわれてきました。この再現されない研究論文の著者が不正をしたわけではありません。

私の経験からもある反応が1,2回うまくいったのに、その後同じ条件でやっているはずなのに何度やっても失敗してしまうということは結構ありました。私は反応理論を研究しているわけではなく、あくまでモノ作りですので、こういった場合はほとんど深追いせず違うルートを取ってしまいますが、追及していけば新しい発見が出るのかもしれません。

ここで強調しておきたいのは、良い結果が出た場合もその時点では真実であるということです。しかしその後の実験でうまくいかないことが分かり、この反応は駄目という結論を出したときもその時点での真実であることです。

なぜこんなことが起きるのか全く分かりませんが、私はこういった現象が起きるから科学は面白いと思っています。例えば健康に関しても、昔と運動した時の水分補給など常識が全く変わってきています。論文などの情報を読むときは、こういった科学の世界を知ったうえで読む必要があるのかもしれません。