ごっとさんのブログ

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新型コロナの治療薬に期待「siRNA」

2020-05-07 10:29:37 | 
新型コロナウイルス感染症に対する治療薬の発見や開発が世界中で進むなか、期待されているのが「siRNA」による核酸医薬品です。

siRNA(small interfering RNA)は21-23塩基対からなる低分子二本鎖RNAで、RNA干渉と呼ばれる現象に関与しています。新型コロナウイルスは、細胞内に侵入して自身の遺伝子を複製することで増殖します。

siRNA核酸医薬品は、その遺伝子の発現を抑制してウイルスの増殖を抑止するものです。多くの植物や動物にはもともと「RNA干渉」という遺伝子発現制御機構が備わっています。

たとえば自身の細胞を乗っ取ろうとするウイルスがあった場合、siRNA、shRNA、miRNAといったRNAが、標的とするウイルス遺伝子(RNA)に結合し、遺伝子の鎖を切断して発現を抑え込み、主にウイルス感染から身を守る生体防御機構として機能しています。

今回の新型コロナにたいしては、中でもsiRNAを使った治療薬が有望視されています。ヒトの場合miRNAがRNA干渉を誘導しますが、近年化学合成したsiRNAがヒトの細胞でもRNA干渉を誘導することが分かってきました。

siRNAには標的とする遺伝子に対する特異性が高いという特徴があり、他の遺伝子には影響を及ぼしません。これは薬として使ったときに副作用が少ないという特徴となります。

またsiRNA核酸医薬品は、既に製品化されていてある病気に対する治療薬として使われ、参考にできる製品化ノウハウが蓄積されているのも期待が大きいポイントです。

しかしまだ課題は多く、ウイルスの増殖を阻害するRNA干渉を最も効率的に起こさせるには、3万塩基の中から最適な21塩基を選び出し、その配列に対応したsiRNAを合成する必要があります。

これはスクリーニング技術が進歩していますので、ウイルス遺伝子のどこの部分がホットスポットなのか、予測がつくようです。最大の課題は、siRNAをどうやって狙った細胞の中に到達させるかという点です。

今回はウイルスに感染している細胞を選び、さらに細胞の中までsiRNAを到達させる必要があります。細胞膜に包まれた細胞の中にsiRNAを到達させるのは難しく、実験では細胞膜を緩める試薬と混ぜたりしています。

このようにまだまだ解決すべき課題は多く、ハードルは高いといえますが、治療薬開発にはなるべく多くの方法論が必要です。こういった核酸医薬も理論的な増殖抑制剤として可能性を追求してほしいと思っています。