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香りのデジタル化で脳を活性化

2021-05-29 10:48:34 | 化学
好きな香りを嗅ぐと気持ちが安らいだり、気分転換できたりするのは香りに情動を動かす力があるからとされています。

香りは数千年前から注目され、多くの研究がなされてきましたが、近年「香りの研究」が盛んになってきたようです。

嗅覚は五感の中で唯一嗅覚細胞などを介して喜怒哀楽などの感情を司る大脳周辺系に直接つながっているため、情動と関連付けしやすいとされています。香りの感覚に個人差が大きいのは、嗅覚受容体の遺伝的差異や記憶、人生経験とも密接につながっています。

地球上には数十万種類ものにおい分子があるといわれています。ヒトはそれらを鼻腔の奥にある約400種類の嗅覚受容体を使って感知しています。一つひとつの匂い分子は複数の嗅覚受容体によって認識され、どの受容体と結合するかは匂い分子ごとに異なっています。

香りの研究をさらに複雑にしているのが、嗅覚受容体の特徴です。例えばAという匂い分子とBとは異なった受容体に結合し、良い匂いとか嫌な香りと認識されます。ところがAとBが一緒に嗅覚受容体に結合すると、それぞれ異なった受容体に結合しているのに全く違ったCという香りとして認識するのです。

このあたりが香り研究の難しい所でもあり面白いところかもしれません。東京工業大学は嗅覚受容体の解明を進めることで、ヒトの香りの感じ方を予測し自在に香りをデザインする技術の確立に取り組んでいます。

ターゲットの受容体が結合する匂い分子を特定できれば、その受容体を活性化する匂い分子をデザインできます。その人の嗜好性、性格、体調などの情報と合わせれば、好みや場面に応じた香り成分の配合が可能になり、テーラーメイドで香りを供給できる時代になるとしています。

またここでは遠隔地でにおいを再現するシステムの開発にも取り組んでいます。匂い分子は嗅覚細胞にある嗅覚受容体に結合し、受容体が活性化され嗅覚細胞の内と外の間に電位差が生じ、匂いの電気信号として脳へ運ばれます。

この匂い分子ごとに異なる応答パターンを脳の中で認識し、どのような臭いかを識別すると考えられています。そこで脳の神経回路の一部を模した数理モデルを用いて応答パターンをデータ認識し、匂いの識別を行うセンシングシステムを開発しました。

いわば嗅覚のデジタル化と言えます。このように香りの研究は近年一段と進んでいますが、このブログで取り上げた「香害問題」などという課題もあります。

ただ嗅覚受容体がわけのわからないブラックボックスから、科学的な光が当て始めらて来たことは確かなようです。


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