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「ガンが消える」という稀に起きる「自然退縮」

2023-04-22 10:31:37 | 健康・医療
このブログでは「ガン」の話題をよく取り上げますが、ガンは標準治療によってかなりの確率で治癒できるようになってきました。

ちまたでは各種ガンの標準治療以外に「ガンが消える」と称する食事法や治療法が数多くあります。さまざまな方法でガンが消えたと、WEBサイトや書籍、雑誌、書品の通販ページなどにかかれています。

しかしガンが消えたとする体験談を詳しく検討すると、併用していた標準医療が効いたと考えられたり、もともとのガンという診断が疑わしかったり、ガンが消えたとする根拠が不明確だったり、ひどい場合は最初から捏造だったりすることさえあるようです。

それでも「自然退縮」といって、特に治療していないのにガンが小さくなったり消えてしまうことはあるようです。おおむね数万人に1人のガンが自然退縮するとされており、極めて稀で正確な数字は分かっていません。

実際のところガンの自然退縮は古くから研究されてきました。自然退縮を利用した治療法としては、19世紀末の「コーリーの毒」がよく知られています。

当時からガンの自然退縮は細菌感染後に起きやすいことが知られていました。皮膚の感染症である「丹毒」により高熱に苦しめられたのちに悪性腫瘍が消えた症例を発見し、患部にわざと細菌を感染させて丹毒を起こし、ガンを自然退縮させようとしました。

19世紀末にはまだ抗菌薬が発明されていませんので、生きた細菌を使うのは大変危険でした。そこで生きた細菌を使うのではなく、細菌を加熱殺菌した抽出液を治療に使い、これが「コーリーの毒」と呼ばれたのです。

しかしこの方法は不安定で用量用法が定まらず、普及しませんでした。以降自然退縮を利用した治療法の研究は下火になりましたが、自然退縮の症例報告は続いています。

最近の症例としては、新型コロナワクチン接種後に転移性唾液腺ガンが自然退縮したという報告があります。その患者はモデルナ製の2回目のワクチン接種を受け、発熱や倦怠感といった激しい副作用が出ました。

その後予定されていたガン治療の直前に受けたCT検査で肺の転移巣が縮小していることが分かり、治療は中止されたそうです。その後のフォローアップでも治療をしていないにもかかわらず転移巣は縮小を続け、ガン組織には免疫細胞が多く観察されました。

ここではワクチンによって刺激された免疫系がガン細胞を攻撃したという仮説を提示しています。ガンの自然退縮のメカニズムは複雑でまだ解明できていませんが、少なくともその一部に免疫が関係していることは確かです。

このように100年以上前から知られているガンの自然退縮ですが、ガンになった場合自然退縮を期待するのは無理としても、この現象の解明にはもう少し真剣に取り組んでほしいと感じています。


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