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ここまで進歩した人工骨開発技術

2021-01-11 10:27:36 | 健康・医療
高齢になると骨粗鬆症と診断されなくても、骨がスカスカになりもろくなっていきます。

骨は骨芽細胞によって形成され、破骨細胞によって壊され常に新しくなっています。加齢により破骨細胞は働くものの、骨芽細胞の活動が弱くなるために脆くなってしまうのです。

ここで必要となるものが人工骨ですが、明治大学ではこの開発に長年取り組んでいます。人工骨の素材はバイオメテリアルと呼ばれていますが、人の身体に接して使わる材料ということで、コンタクトレンズなどがあります。

人工骨の素材はいろいろ研究されていますが、例えば人工関節は筒状の大腿骨に差し込んで固定する棒状の部分はチタン素材、股関節の動きを生み出す球状のものはセラミックス、その受け皿部分は超高分子量ポリエチレンで構成されています。

人工骨は実際の骨と結合したり、吸収置換するタイプの素材が求められています。リン酸カルシウムのひとつである「水酸アパタイト」は実際の骨の組成に近い素材で、これを体内の骨に付着させると骨と結合して骨そのものになっていきます。

実際の治療でこうした素材を使うときは、多くの場合自家骨移植を行います。例えば治療する部分の骨を少し採取し、アパタイトを混ぜて体積を増やし患部に移植する方法です。しかし患部から骨を採取するには限界があり、他の部分例えば腰骨から骨を採取することもあります。

これは患者の負担も大きく、人工的な素材だけで済むような研究も進んでいます。骨は常に代謝していますが、骨芽細胞によって骨が作られることを「骨伝導」といいます。骨芽細胞がないところでも骨が作られる現象があり、これは「骨誘導」と呼ばれています。

アパタイトでは骨伝導は起こりますが、骨誘導はほとんど起こりません。そこで素材を多孔体にすることで骨が孔に入ってきて回復が早くなるのですが、その孔の大きさによって骨誘導が発現しやすくなることが分かりました。

次に骨芽細胞を培養して骨のような組織を作ることを目指し、細胞を培養するのに重要なスキャホルド(足場)を作製しました。これはアパタイトのファイバーとビーズ状のカーボンを混ぜて焼き、「アパタイトファイバースキャホルド」という多孔体を開発しました。

バイオリアクターという装置を使い、細胞を付着させ三次元循環培養を行いました。まだラットを使った実験の段階ですが、「再生培養骨」が製造できこれを自家骨の代わりに使えることを確認しています。

まだ完全な人工骨を作るには時間がかかりそうですが、自分の骨を使った治療と同じような効果が得られることも期待できそうです。


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