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微生物が宇宙で3年生存する意味

2020-10-17 10:27:09 | その他
2018年に国際宇宙ステーションを発った宇宙船は、珍しい荷物を載せていました。宇宙空間に数年間さらされた微生物のコロニーです。

この微生物は、宇宙空間が単純な生命体に及ぼす影響を調べる日本の宇宙生物学実験「タンポポ計画」の一環として、地球へ戻される最後のサンプルでした。

もし微生物が真空空間に長期間さらされていても生きていたら、「パンスペルミア説」と呼ばれる仮説を大きく後押しすることになります。パンスペルミア説は、生命が小惑星や彗星、宇宙塵に乗り惑星間を移動したと提唱しています。

タンポポ計画チームの研究論文では、ディノコッカス・ラジオジュランスという細菌の複数の菌種が、厳しい宇宙環境に3年間さらされても生き残ったことを詳しく解説しています。

このタイプのバクテリアは大量の紫外線を浴びても、遺伝子の損傷を受けにくいことで有名で、クマムシのようないわゆる「極限性微生物」のひとつに分類されています。

このなかでどのメカニズムが要因となっているのかをテストし、宇宙環境で生き延びるうえで、DNA修復システムが特に重要な役割を果たしていることを解明しました。地球に持ち帰ったコロニーを研究者が水で戻すと、最も外側の菌体は高線量の紫外線を浴びて死んでいました。

しかし死んだバクテリアの層が、その下にいる微生物のDNAが生存できなくなるほどの損傷を受けることを防いでいました。

宇宙空間にさらされることでバクテリアの無傷の遺伝子の数は徐々に減少するものの、1ミリの僅か半分しかないバクテリアの塊でも宇宙空間で最長8年間は生存することをチームの研究結果は示しています。

1970年代にうまれたパンスペルミア仮説は、地球上のものを始めとする生命が隕石に便乗した微生物によって銀河全体にばらまかれたとしています。主流の考えからはかけ離れているものの、これによって地球における生命誕生にまつわる厄介な問題がいくつも説明できると主張しています。

生命誕生の典型的な説明は、有機分子の塊が原始の混沌とした軟泥の中でぶつかり合い、次第に複雑な分子を形成したというものです。こうした分子が最終的に組み合わさってバクテリアのような単細胞生物となり、それが多細胞生物へと進化していったというものです。

地球上の生命の進化は進行が断続的で、種形成の急増期が短時間あり、それを挟んで長期の停滞期が存続しています。この辺りを説明するために、地球外微生物という仮説があり、今回のタンポポ計画によってその可能性が少しは出てきたといえるようです。

生命誕生の謎には程遠い結果ではありますが、こういった研究の積み重ねが少しは解明に近づくのかもしれません。


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