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血液でアルツハイマー病を診断

2021-07-01 10:26:02 | 健康・医療
高齢化に伴い認知症患者が増加していますが、その大多数を占めるアルツハイマー病の簡便な血液を用いた診断機器を島津製作所が開発したと発表しました。

アルツハイマー病の診断は医師の問診や認知能力試験などがありますが、医師の判断によるところが多く、また病気自体に波があることから確定診断は難しようです。

アルツハイマー病は、脳内にアミロイドβと呼ばれるタンパク質が蓄積することによって発病するという特徴があります。このアミロイドβを直接測定すれば、診断や重症度の判断に有用とされています。

現在の測定法は放射線を用いるPET(陽電子放射断層撮影法)や、腰の部分から針を刺して脳脊髄液を採取する方法(CSF検査)がありますが、体への負担が大きいことが課題でした。

今回の機器はノーベル賞を受賞した田中耕一さんが開発した、多種類の物質を同時に測定できる質量分析という手法を応用しています。余談ですが、田中さんが受賞したTof-MSは高分子量のタンパク質を測定できるものでした。

当時私は高分子多糖類の研究をしており、これに応用できないかとTof-MSを購入してみました。しかし私の所属する研究所では、この多糖類への応用は難しく、いろいろ島津製作所とも相談してみましたが、結局この機器はタンパク質専用となり断念した経緯があります。

さて同社は2018年に国立長寿医療研究センターとの共同研究で、数滴の血液を用いて微量に漏れ出るアミロイドβ関連物質を検出し、脳内の蓄積状況を推定する方法を開発しました。その後実用化に向けた開発を進め、今回の機器に展開しました。

医師はこの装置の検査データに画像診断などを組み合わせて、総合的に判断します。計測技術の研究開発の進歩を受け、日本認証学会などが監修し、今年3月に公表した「認知症に関する脳脊髄液・血液バイオマーカーの適正指針」では、今回の島津の機器による測定結果について、補助的な情報のひとつとして用いるべきであるとしています。

ただ問題は今回の機器が約1億円と高価なところかもしれません。この測定法によって、アルツハイマー病の進行度や重症度が数値化できるという程簡単なものではないようですが、適性診断が非常に難しかったアルツハイマー病の診断や、治療薬の臨床評価などに応用できる可能性が出てきたといえます。

特に患者の負担がほとんどなくなることは重要なポイントと言えるようです。


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