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認知症治療に投じる新たな一石

2024-02-21 10:33:46 | 健康・医療
認知症の7割を占めるアルツハイマー病の原因は、アミロイドβ(Aβ)など脳に蓄積した異常タンパク質を原因物質とみなすAβ仮説が定着しています。

この治療薬として非常に高価な抗体医薬の「レカネマブ」が承認され、専門家の間でも評価は高いようです。私はクスリは誰でも使えるような安価で、簡便なものという信条を持っていますので、レカネマブで認知症が治療できるとは思っていません。

国際医療福祉大学の研究チームは、超音波を脳に当てて微小血管の新生を促し、脳血流を回復させるアルツハイマー病治療の研究に取り組んでいます。

研究チームは生体の自己治癒力を高める音波の作用に20年以上前から注目し、まずは「低出力衝撃波」によって重症狭心症の治療を成功させました。次に目を付けたのが低出力パルス波超音波(LIPUS)です。

衝撃波も安全性は認められているものの、肺を損傷させる可能性がありました。そうしたリスクのない音波を探すうち、LIPUSにも血管新生効果があることを発見しました。あくまでも心臓病向けの研究でしたが、LIPUSを認知症治療に活用できないかと考えました。

血管新生には一酸化窒素(NO)が関わっており、NOは脳内のAβの蓄積を抑えるという論文があったのです。認知症も血管病ではないのかと考えた研究チームは、2014年からマウスによる動物実験をスタートさせました。

その結果LIPUSの照射によって微小血管内にNOが多く生まれ、微小血管の障害を改善させること、その結果脳血流が戻り認知機能の低下を抑制することを明らかにしました。動物実験の結果を踏まえ、2018年からは東北大学病院でヒト相手の治験を始めました。

ヘッドギア型の医療機器を両側のこめかみに当て、LIPUSを照射します。1年半実施したところ、LIPUS治療群は認知機能の悪化が抑制された一方で、プラセボ群は悪化が進んでいました。

また認知機能が改善した人の割合でみても、LIPUS治療群は50%だったのに対し、プラセボ群は0%でした。コロナ禍などで被験者集めに苦労し、最後まで治験に参加できたのは15人と少なかったため、統計学的な有意差は得られませんでした。

それでも厚生労働省は治験結果を高く評価し、2022年9月この医療機器を「先駆的医療機器」の第1号に選びました。有効性や画期性を重視し、選ばれると承認の審査期間が通常の半分程度、半年ほどに短縮される仕組みです。

2027年に国へ承認申請することを目指し、昨年9月から最終試験に着手しました。東北大学、東京大学、名古屋大学など17施設で約220人を対象に2026年まで続けるものです。

こういった治療法であれば、薬の代わりの簡便な方法として期待が持てるような気がします。


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