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脳や心臓の病気も治る「ミトコンドリア移植」のはなし

2022-04-02 10:25:11 | 健康・医療
生後すぐに重い心臓の疾患のある少女が、「ミトコンドリア移植」の手術受けて劇的に回復した例が報告されていますが、この移植手術が注目されているようです。

小さなミトコンドリアは「細胞の発電所」と呼ばれていますが、これは細胞内でエネルギーを供給する器官だからです。呼吸した酸素を使ってミトコンドリアはアデノシン三リン酸(ATP)という細胞の燃料となる分子を作っています。

アメリカのアラバマ大学では、2000年代初頭からミトコンドリアの機能に着目し、これの生産量が少ない遺伝子改変マウスを開発しました。

このマウスでは皮膚のしわや脱毛などの老化の兆候が早くから見られましたが、マウスの遺伝子を再活性化させてミトコンドリアの数を増やすと、体に毛が生えてきてしわも亡くなったという研究結果を2018年に報告しています。

これは減ったミトコンドリアを補うと、生きている動物の組織の機能を回復させられることを明確に示しています。ミトコンドリア移植に最も期待されているのは損傷した心臓の治療となっています。

損傷したミトコンドリアは膨れ上がり中身が漏れ出したり、細胞のエネルギーや栄養を枯渇させたり、アポトーシスを誘発するシグナルを送ったりします。そうなると心臓はうまく鼓動できなくなるようです。

そこでECMOにつながれた患者の腹筋から組織標本を採取し、筋肉細胞中のミトコンドリアを速やかに取り出し、約10億個のミトコンドリアを患者の冠動脈から心臓に戻すか損傷部位の近くのに直接注入する治療が行われました。

2018年にはこの方法によって11人の患者のうち8人が生き延びることができました。新たな研究として、33匹のラットを心停止状態にして心肺蘇生を行ったのち、ラットの足の静脈に約10億個のミトコンドリアを注入しました。

その結果90%のラットが生き残ったのに対し、ミトコンドリアを注入しなかった対照群では40%しか生き残りませんでした。

また心臓が停止すると頭部への血流が低下するために脳も損傷を受ける可能性があります。研究チームは特殊な色素を使い、ラットに移植されたミトコンドリアの一部を追跡すると、ラットの脳にも色素が表れました。

このことはミトコンドリア移植によって、虚血性脳卒中後の脳も回復させられる可能性を示しているとしています。3人の脳卒中患者にミトコンドリア移植を行い、2人の患者は脳卒中の重症度からすればそれなりに回復しているという結果が得られたようです。

まだ脳へのミトコンドリア移植の効果を客観的に判断する方法はないのですが、画像には良い兆候が見られるとしています。

ミトコンドリア移植はまだ研究例も少なく、科学的有効性が確認できたとはいえないようですが、良い治療法がない心臓や脳の疾患に試す価値のある治療法といえるのかもしれません。


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