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アルツハイマー病の新薬が悪化抑制の効果を確認

2023-01-03 10:56:21 | 
認知症は今後も患者数の増加が見込まれていますが、国内外で新薬の臨床試験がことごとく失敗に終わっています。

この内日本のエーザイが開発している抗体医薬の「レカネマブ」が最近注目を集めています。最近の発表ではこのレカネマブのアルツハイマー病に対しての臨床試験で、症状の悪化を抑制する効果があったとする詳しいデータが出たようです。

レカネマブはアルツハイマー病の原因とされ、脳内に蓄積して神経細胞を壊すアミロイドβの除去を目的とする新しいタイプの薬剤です。アミロイドβが固まる前の段階で、人工的に作った抗体を結合させて神経細胞が壊れるのを防ぐ仕組みとされています。

治験データはサンフランシスコで開かれた「アルツハイマー病臨床試験会議」と呼ばれる国際学会で発表されました。治験は日本や北米、欧州、アジアの235の医療施設で早期アルツハイマー病と診断された患者の1795人(平均年齢72歳、男女ほぼ同数)を対象に実施されました。

治験対象者のうちレカネマブ投与群は898人、プラセボ投与群が897人となっています。新薬投与群とプラセボ投与群にそれぞれ2週間に1回静脈注射をし、投与開始から18か月後に記憶や判断力などの認知機能や身体活動などを画像診断も駆使して総合的に詳しく調べました。

その結果レカネマブ投与群では症状の悪化が27%抑制され、「ADCOMS」と呼ばれる早期アルツハイマー病の進行度などを評価する指標でも、症状の進行は24%抑えられました。

脳内に蓄積したアミロイドβについてもプラセボ群では増加しましたが、新薬投与群では大幅に減少させる効果があったようです。この抑制効果の27%というのはかなり低いような気がしますが、アルツハイマー病のメカニズムからするとよくてもこの程度なのかもしれません。

一方画像検査では投与した患者の12.6%に副作用とみられる脳の浮腫が、17.3%に脳の出血が見つかりましたが、大部分は軽症で発見4か月後には消失したとしています。

厚生労働省によると、アルツハイマー病は認知症全体の約70%を占め、軽いもの忘れから徐々に進行し時間や場所等に関する感覚が弱くなります。アミロイドβが発症の10〜20年前から脳内に蓄積し、次第に神経細胞を壊していきます。

認知症の世界全体の患者数は5500万人以上で、国内では2020年に約600万人、2025年には700万人に達するとされています。今回の新薬レカネマブが有効であったとしても、問題はその薬価がどこまで下がるかという事になりそうです。

抗体医薬ですので注射でしか投与できないのはやむを得ないとしても、これだけ多くの患者がいる状況で高価な薬がどこまで一般化するかは非常に疑問に思っています。

既に抗体医薬はいくつか承認されていますが、いかに安価にするかは医薬業界に課せられた使命と考えています。


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