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大腸を使って小腸の再生に成功

2021-03-09 10:24:30 | 健康・医療
胃から来た栄養分を吸収する役割を持つ小腸は、長さが約6〜7メートルもあり、独特な構造を持っています。

この小腸の機能を大腸を使って再生することに動物実験で成功したと慶応大学などのチームが発表しました。

病気で小腸を切除し、栄養吸収が充分にできなくなった場合の根本治療法は、現在小腸移植しかないようです。人間の身体はどこかを切除しても他の臓器がその機能を補うようになると思っていました。

例えば胃ガンなどで胃を全摘出しても、十二指腸などが徐々に胃の役割を果たすとされていましたが、どうも小腸は他の臓器が代わりになることはないようです。

小腸は栄養や水分を吸収する生命維持に欠かせない臓器で、表面が絨毛と呼ばれる長さ約0.5ミリの突起で覆われており、そこから栄養などを吸収しています。研究チームはラットの小腸の細胞を培養して、小腸上皮の元となる細胞を作製しました。

切り取った約3センチの大腸組織の表面をはぎ取って、この細胞を注入しました。細胞注入後の大腸組織を、小腸を切除したラットの大腸の入り口付近に移植したところ、消化液などの流れによって表面に小腸特有の絨毛ができました。

本来大腸には無い脂質を吸収するためのリンパ管ができ、内容物を押し出す蠕動運動も確認できました。移植を受けたラット7匹のうち6匹は19日以上生存し、2匹は体重も増えました。

一方小腸ではなく大腸由来の細胞を注入した大腸組織を移植したラット4匹は体重も増えず、移植後10日以内に死亡しました。この実験では生体内で小腸細胞を入れた大腸が、自然に小腸の機能を発現したわけですが、この辺りの生体の仕組みはすごいものだと感心します。

難病のクローン病や小腸がねじれる腸捻転では、小腸を切除しなければならない場合があります。研究チームによると、国内では1996年に初めて生体小腸移植が実施され、脳死後に提供されたケースも含め2019年までに32例が実施されました。

他の臓器より拒絶反応が強く、移植が成功しても生存率は低くなってしまいます。極めて複雑な構造を持つことから再生医療研究も進んでいないようです。今回の動物実験では非常に短い大腸組織が使われていますが、移植後に大きくなることは確かなようです。

またこの大腸組織をどこから持ってくるのかや、人間の5メートルにも及ぶ長さの小腸の機能が十分に果たせるかなどの課題はありますが、従来の小腸移植よりは有効な治療法となるのかもしれません。

研究チームは、大腸の一部を小腸化できれば、移植後の免疫抑制剤を必要としない新たな治療法につながる道筋になると述べています。


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