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肝機能の検査数値は何を表しているのか

2022-08-01 10:29:43 | その他
最近私の仕事を通じた友人で、数年前に亡くなったA君の思い出話をする機会がありました。

A君は長年臨床検査薬の研究をしていましたが、最も力を入れていたのが新しい肝機能マーカーを見つけることでした。

現在でも血液検査をすれば、肝機能としてγ‐GTPやGOT、GPTなどの数値によって肝機能を推定することができるとされています。

これはA君に詳しい説明を聞くまで知らなかったのですが、こういった数値はもう何十年も昔から肝機能を見るものとして使われていますが、実はこれらの数値は肝臓の機能とは無関係なのです。

これは肝臓の専門家を含めた多くの医師や臨床検査技師でさえ間違った解釈をしているところです。例えば指標のひとつであるγ‐GTPはガンマグルタミルトランスペプチダーゼという酵素のことです。

この酵素は解毒作用に関わるグタチオンの生成に関与しています。そこで酒を飲みすぎたりすると、その解毒作用のためにグルタチオンを多量に生産する必要が出て、この酵素量も増えることになります。

そこで飲み過ぎて肝臓がいわば疲れてくると、γ‐GTPが上昇するという説明がされるわけです。ところがこの説明には根本的な誤りがあります。肝臓は代謝や分解を行う臓器ですので、肝臓内にはそういった関連の酵素が無限といっていいほどたくさんあります。

ところがこういった酵素は肝臓から外部に出ることはありません。検査でこういった酵素量を測定するのですから、あくまで血液中に存在する量を測っています。

また代謝分解が活発になっても、その関連酵素量はそれほど増えるものではありませんし、そもそも肝臓から出ないはずですので、血液中濃度を測定する意味はあまりないといえます。

ではなぜ肝臓内に留まっているはずの酵素が血中に出て来るかというと、肝臓細胞も新陳代謝によってある程度壊れており、その内容物が血液中に出てくるわけです。これは他のGOTやGPTも全く同じメカニズムといえます。

つまり肝臓の指標は肝機能を見ているわけではなく、肝臓細胞の壊れ具合を見ていることになるわけです。肝臓に負担がかかり、多くの肝臓細胞が壊れれば、この3つの数値が上がりますのである程度は肝臓の状態を知ることができています。

また壊れて中の酵素が出てくるのですから、3つの数値はすべて上昇することが多く、どれかひとつが高くなるのは肝臓以外に原因があるのかもしれません(あまりないことですが)。

以上のように肝機能の指標といわれる数値は、肝臓の機能を見ているわけではなく、肝臓細胞の壊れ具合を見ていることから、A君は生涯をかけて肝機能のマーカーを探し続けていたわけです。

彼はいくつか候補を見つけたのですが、現行の指標に変わるほどではなかったようです。肝機能の数値を見て一喜一憂するほどの精度が無いというのは残念なことですが、この指標はずっと使われ続けるでしょう。


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