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抗生物質の使用と耐性菌の増加その2

2023-10-13 10:34:27 | 健康・医療
前回風邪やインフルエンザなどの感染症はウイルスが原因であり、細菌に効果のある抗生物質の処方はおかしいという事を書きました。

しかし私は風邪などの後には、常在菌といわれる細菌が増殖することが多いため、抗生物質が必要と考えています。こういった抗生物質の濫用が耐性菌を増やすという意見がまかり通っていますが、抗生物質の使用と耐性菌の発生には関係がないと思っています。

薬剤耐性菌は、突然変異によって生まれます。前回も書きましたが、目的を持った突然変異などはなく、あくまでも偶然の変異によるものです。おかしな言い方になりますが、抗生物質が発見される前から耐性菌は存在するのです。

微生物の耐性化のメカニズムとして有名なものに、ベータラクタマーゼという酵素があります。これはペニシリンやセファロスポリンといった抗生物質の基本骨格であるベータラクタムを分解する酵素です。

しかし耐性菌が遺伝子変異によって新しい酵素を作り出すことはありえません。酵素遺伝子は数万の数となりますので、そんなに大きな遺伝子を新たに作り出すことはできないのです。

この場合は細菌が持っているプロテアーゼなどのタンパク質分解酵素の一部に変異が入ることによって、基質特異性が変わりベータラクタムも分解できるようになったものを単に名付けたにすぎません。

これはあくまでも偶然ですので、この変異に抗生物質の存在は不要という事になります。さて細菌などの感染症にかかると、病原菌はかなりの速さで増殖します。本来備わった免疫機構でこの菌を処理しようとしますが、一般に増殖速度が早く間に合わなくなってしまうのです。

そこで抗生物質を使用することによって、この増殖を抑えると、後は免疫が完全に治すというのが感染症治療のメカニズムです。このとき耐性菌がいたとしても、免疫は問題なく排除しますので、普通の免疫力を持った人には関係がないわけです。

つまり抗生物質は、免疫が排除できる程度まで細菌数を減らすことが目的であり、ゼロにするまで使うものではありません。

よく医師は処方した抗生物質は、症状が良くなっても全て飲み切るよう指示しますが、これはあくまでも免疫不全などの重篤な病気の人に対するものであり、普通の人にとっては良くなったらやめるべきものと考えています。

ですから耐性菌の問題も免疫機構が働かない様な患者には問題となりますが、普通の人にとっては全く気にする必要が無いと考えています。抗生物質は、おかしいと感じたとき積極的に使う薬と思っています。


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