内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

祝杯。朝寝坊。それでも泳ぐ。原稿、2歩前進

2013-09-08 00:43:00 | 雑感

 金曜日夜の日本大使公邸での受賞レセプションでは、多数の招待客から次から次へと祝福を受けてその応対に大わらわだった受賞者本人とも少し話すことができてよかった。でも、レセプション開始直前に会場の前方の壁際の椅子に一人座っていたご本人に一言挨拶に行ったら、「大変だねえ、〇〇君も」と7年半ぶりの再会だというのにいきなり言われるので(注:彼女は生粋のパリジェンヌであったが、今では日本在住40年以上、彼女との会話はいつも日本語)、一瞬何のことかと戸惑ったが、どうやら私の近況について人づてに聞いているようで、同情されたり励まされたり、帰り際には「私が言うのも何だけどね」と助言までいただき、至極恐縮した次第です。会場には、知り合いの日本学研究者も何人か来ていて、その人たちとも挨拶を交わす。その一人は今回の賞の審査員の一人だったのだが、受賞者とはこれまで面識もないというので私が紹介した。
 今回の受賞は彼女が昨年出版した
島尾敏雄『死の棘』の仏訳に対してであり、審査過程ではつねに彼女の翻訳が一番高い評価を受け、最終審査でも満場一致で彼女への授賞を決定したと、賞の授与に先立って審査員長から報告があった。実際これまでも漱石の翻訳をはじめ数々の日本の近現代文学の翻訳でフランス語圏における日本文学の普及に多大な貢献をしてきた彼女だが、今回の受賞は対象が戦後の日本文学の中でも最も重要な作品の一つであり、彼女自身かねてから訳したいと願っていたのになかなかその機会が得られなかった思い入れの深い作品だっただけに、この受賞はとても嬉しいものだったのに違いない。原作者の息子さんとその奥様も欧州旅行の日程を延ばして授賞式に出席されていて、受賞者から紹介されて、しばらくお2人から貴重なお話を伺うことができた。
 というわけで、会場で飲んだシャンパーニュと日本酒も手伝って帰り道はいい気分、これは帰宅してからまた祝杯をあげねばならぬ(誰も頼んでいませんのにね)とわざわざメトロを途中下車してワインを買い込み、発表原稿のことがちらちら脳裏をよぎるのを振り払いながら、自宅で飲み過ごしたのであった。
 今朝(土曜日)は、目覚まし代わりのステレオのタイマーが機能しなかったこともあり、よく寝たなと思ったら、もう6時48分。もうプールの開場時間7時には間に合わない。朝の開場直後がとにかく一番快適に泳げるので、それを逃すとガクッとモチベーションがさがる。それに原稿があるし。しかし、ここで挫けてはいけないと、9時頃プールに行く。予想していたほど混んではいなかったので、なんとかいつものように2000mは泳ぐ。
 帰宅してからは原稿に集中。構成を変えることにした。「序」が長すぎるのは昨日言ったとおりだが、それを本論第1章にして、その前につける短い「序」を書いた。そして第1章の後に、1つの章とするには短すぎるが、考察の対象である田辺元の「種の論理」がなぜ今日批判的に検討されるに値するのか、その理由をより立ち入って説明する一節を置くことにし、そこまでは一応書き上げた。量的にはすでに発表時間に対して十分であるが、これだけは本論がないことになってしまう。明日はいよいよ「種の論理」のテキストに即した批判的考察を目的とする中心的章にアタックする。この部分についてさすがにこれまでメモを取って考えてきたことがあるので、材料には事欠かない。結論も実はすでにかなりはっきりしている。とはいえ、それら全部を一日で書き上げるのは無理だろうから、締め切りまで時間の許すかぎり書いて、未完成のまま集会責任者にはひとまず送り、先方の反応を見て、その後の対応を考えよう。