
【まみやん 2004年3月6日】
意外と寒い夜だ。外もそうだし、中に入っても。
帰ってLPレコード整理。傍には携帯ラジオ。約1時間半経っていたが、かなり充実した時間だった。たぶんそれは、一方的に脳が勝手に「思考暴走」するのを、目の前で肉体を持った物体を並べ替えていくことが揺り戻しをさせたのだろう。指が真っ黒になり、手を洗う。
『現実の厳しさに疲れたら、昔の友人に連絡を。』(本日の占いより)
・・・と言われても、連絡は取らなかった。
ただ帰り道、不意にメールをくれた天使からの数行に微笑んだ。
***
週の始まり。月曜の朝。
夜セットしたアラームが6時50分一度起きるが、しんどくて再度寝る。
そこから何度か繰り返し鳴ったようだが、はっと気づくと7時15分を過ぎていた。
土曜・日曜・各二万歩を超える歩き旅は良いものだったが、昨夜眠りに入れたのが2時半だった。
濃い緑茶を飲み、朝風呂に入り、外に出る。
今朝も日差しは強いけど、空の青さと陰影のコントラストは美しく、風はさわやか。
赤ともピンクとも言えない色のつつじが、光の満たす朝に鮮やかさを添えている。
何枚か、光と緑に向けてシャッターを切った。
***
そんな今朝を経て、仕事場へ。
午前中、訃報が舞い込む。元気でボーイッシュ、さっぱりした仕事仲間の女性が、突然死したことを知る。細かい理由は不明だが、自死などするタイプではない。病気にも縁遠い。
遠方にいるから、たまにしか会う機会はない。決して懇意な知り合いとも言えない。ただ、つい連休前まで電話で仕事のやりとりをしていた。私なりに励ましていた。
いつも元気な彼女が、調子悪くて休んでいる、と聞いたのは先週金曜日のこと。不穏な気配はあれども、あんな元気な人が休んでるなんてね・・・という具合だった。
国内労働人口不足背景の下、A政権曰く「女性が輝く日本」という、いつものモンタージュ作戦。すげかえと太鼓持ち。それに応じた流れは「女性管理職を増やさなきゃ」に至った。
彼女は、この4月、本人も回りも寝耳に水で、いきなり管理職に。
ステップを踏んでいない分、かなり動揺していた。何とか少しでも支えになれればと思い、相談があれば不安にならないように、出来るだけ平易な言葉で伝えるよう心掛けていた。
三つ下の同世代だった。
自分とは異なる性格だったが、気取りや媚びや巧妙な計算高い小技を使わない、いさぎよい人だった。亡くなったことを知って、何のてらいもなく九州弁で話す彼女の野生児みたいな姿が浮かんだ。それはドラマ「あまちゃん」に出てくる人々を想い出させる土着感。遠い気分になる。

ここ数年亡くなっていく好きだった人々や愛おしい相棒ネコたちを想うと、生きていることはきわめて今一瞬のまたたきと見えてくる。人生は短い。あっという間だ。
そのことが最近になって、リアルに迫ってきて、やっと分かった。じっとり冷や汗が来る。
それを他人は手遅れだ、という言い方をする。しかし、私には手遅れではない。
それを知った今こそ、ラッキー。生きること・そのものの日々を生き抜き、謳歌していく。
よくお年寄りだというだけの理由で、不遜な態度を示す者を見る。
だが、キミも私もあっという間にそうなる。そこまで行けない可能性も大いに高い。
同じ大地の上で過去から連なってきた先人たちと未来人への繋がりの間に、私は居る。
それが視えてきた。その同じ大地で会った人(全員ではない)に接する場面の広がり。歩く中、江戸時代・峠茶屋で出会った者同士のように、名前も知らない人と会話が始まる。旅は道連れじゃないか、同志よ、と肩を叩かれるみたいに。
■シンプルマインズ 「ウォーターフロント」1984■

1985年、ティアーズ・フォー・フィアーズに名曲「Everybody Want To Rule The World」が産まれた。
そんな奇跡に対して、作者であるローランド・オーザバルは、あるインタビューでこの曲がシンプルマインズの「ウォーターフロント」を下敷きにして創ったことを「他人の好きな曲を元にしたなんてね」と明るく告白していた。
「Speed Your Love To Me」も含めて、シンプルマインズのこれら「前に、前に・・・」といった曲にエモーショナルな内面を刷り込み、自らを沈下から浮上させようと試みる夜は、高校から時折おとずれる。
「ウォーターフロント」「Speed Your Love To Me」共に、1984年発表されたLP作品『スパークル・イン・ザ・レイン』に収録されている。

シンプルマインズの持ち味であった、静かで淡いトーンの色合いと高揚感を音上でクロスさせた繊細さは、スティーヴ・リリィホワイトがプロデュースした本作で粉々に壊されていた。
こういった変化はABCの1枚目から2枚目へのがらりとした違いを思い起こさせる。
『スパークル・イン・ザ・レイン』全体には、当時がっかりしたものだが、この2曲だけはかろうじてまだ前作からの名残がある。
シンプルマインズは、この後1985年「Don’t You」というシングルでビルボードチャート1位になってしまう。私には一体この曲のどこが良いのか?理解できず、彼らはそのままスタジアムバンドになってしまい、そこから彼らへの愛着が消えていった。
「それでも・・・」と食い下がり、同じ1985年から年越しの冬に我慢して「アライヴ&キッキング」をエアチェックして聴いていた。
「飛ばしていくよ」そんなアッコちゃんの言葉に励まされる。
