二胡工房 光舜堂

二胡を愛する全ての人へ

蛇皮を張替えよう!

2016-10-31 14:37:14 | ■工房便り 総合 
ここ10年近く、二胡の世界に関わって来て感じられたことの一つが、

弾き込まれた楽器と言うのにそれほど出会っていないという事です。

皆さん90%の方が二胡を最初、先生から花梨材の二胡を購入することが多いです。

あるいは老紅木ですかね。

希に、中国で二胡を買ったかたは、かなり良い紫檀の二胡を最初から手にする事もあります。

あるいは、通販で、何の材料かも分からないく塗装がしてある楽器だったりもします。

このしっかりと真っ黒に塗装してある楽器、今から10年以上前の物は、案外良い楽器も多かったりします。

ちゃんと紫檀であったり、中には花梨だけれど今ではもう見られない、黄花梨などという場合もあったりもします。

中国で買えば数千円、日本で買っても精々2,3万円の楽器、、さすがに皮は良い物では無く、1,2年も使えばもう伸びてきてしまうようなものですが、

これが意外に、10年以上前の物は、良いものが多いのです。

いつのころからでしょうか、この黒く塗った楽器、塗装をはがしてみると、真っ白な材料が出てきたりするようになってきてしまっています。

ま、ともあれ、皆さん習い始めて、1,2年すると良い楽器を買いたいという衝動が出てきますね。

当然といえば当然なのですが。

これが、今も、過去においても問題続出という感じなのです。

ここから少し辛口になります。

皆さんの中でどの位その2台目の楽器納得しておられる方がいらっしゃいますか?

先生に選んでもらったり、楽器屋さんで購入したり。

かなり、高額な物を買ったとしても、

コレコレこれこそ自分の楽器というのに出会える人と言うのは、相当少ないと思うのです。

当然、購入したばかりの二胡というのはなんだかんだ、雑音ポいところがあります。

これは木でできた楽器すべてに於いて言えます。

様々な、少しずつ違った木の部分の音色が一つにまとまるまでには、雑音ポイ感じは否めません。

そこへ持って来て二胡の場合は皮があります。

自分で蛇皮を扱ってきて思うのですが、蛇皮を均一に張るというのはこれはかなり大変なことです。

蛇それぞれに個性がありますし、また各部分によっても違います。

ある中国の二胡造りの名人が、蛇皮は、張ってみなければその良し悪しは解らない、といっていたのを思い出します。

正直、皆さんが光舜堂に持ち込まれる楽器のそのほとんど、

私だったら張替えたいです。

木はせっかく良い木がそろっているのに、きっちり皮が張れていないという事はかなり多いです。

それでも駒や弾き込みで、そこそこには鳴るようにはできます。

でも、これは良いという感じの皮にはなかなかお目にかかれません。

このことは二胡の製作の過程の問題です。

よほど名人といわれる人たちが、一枚一枚の皮を大切に引き延ばしていかない限り、皮は均一にはのびてくれません。

まず第一に、皮の裏についている肉をそぎ落とします。

この時に刃物で削っていきますので、その削り具合でもう均一にはなりにくいのです。

それを伸ばしていきます。

一回に伸ばしていくのに1週間ぐらいかかります。

勿論もっと急ぐことも出来ますが、いきなり伸ばせば、繊維が傷みます。

何回か水に漬けこんで伸ばして伸ばしてという作業を、一日かけて均一になるようにし。

その後、乾かします。

祖の乾く時の、縮む力が、皮の張力を引き出します。

どんな張力にするのか、それが二胡の音色に大きくかかわってきます。

そしてその時の張力の出し方によっては、二胡の寿命も変わります。

これは致し方ない事なのですが、蛇皮はいつかは張替えなければいけません。

ところが最近、蛇皮はどんどん高騰していますし、入りにくくなってきています。

また、世界的な動きで行けば、ワシントン条約も相当に厳しく規制してきています。

二胡に貼る蛇皮はそのほとんどが今は、養殖です。

それもベトナムや、タイ、そして海南島などで、飼育されています。

ところが、タイやベトナムなどの経済がどんどん成長し、世界中の産業の、下請けという感じになってきていますね。

経済が発展するとともに人件費も上がり、当然、蛇の養殖だけが今までの金額であるわけではありません。

また、動物愛護の問題もどんどん押し寄せてきています。

これはいつかは、三味線などと同じように、人工皮に移行してしまうことでしょうが、

まだまだ今の段階で、中国では蛇皮に匹敵する鳴りを持つ人口皮は作られていません。

今のところ蛇皮に代わる素材はCDMだけでしょうね。

CDMではなくとも、あの蛇皮の2重構造に作り上げていくのは、かなり大変なことだと思います。

私は、このCDMの作り方を残そうとは思っていません。

そのほか、二胡の構造にしても、これを残すことは考えていません。

それは中国の演奏家達が認めないからでもあります。

これはとても良く鳴るねといいながらも、中国の物では無いから、二胡の音ではないと、

二胡は高音こんなに出なくとも良いのだと平気で言ってしまう人達に、残してやる気はないのです。

私の技術は、私一代で終わりにします。

それは蛇っ皮張りにしろ、CDMにしろ、DODECAGONにしろ、私の個人的な感覚が必要とされているからですし。

良い音を追求しながら、弾きながら、削り込んでいく世界だからです。

これは二胡の修理に関しても同じです。

胴が割れた!では、ボンドでくっつけておけばよいと、そのままボンドでつけてしまうような扱いはしたくないのです。

楽器の修理というのは、楽器としての良い状態を作り出すということであり、

単に割れを直し、見た目を整える事ではないと、

この数年二胡を修理してきて、学んできたことです。

とにかく私の人生残りは、全ての日本にある二胡、ちゃんと修理します。

まずは皮の張替え!










、、

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