運び屋ほぉ の運送日記 其之壱

二胡を愛する皆様こんにちは、鞄持ち 改め、運び屋ほぉです。
ご心配おかけしております大殿様の手術も無事終わり、脅威の回復力は予想通り。
早くも術後２日目にはドクターに、
「西野さん、もう退院しても良さそうですね」 とまで言われておりますが、
「いやいや、慎重にしないとね」
入院早々に出たがってた本人の方が言い出しましたので「あら、珍し」と思ったら、
「木工作業のボンド付けは接着直後が肝心なんだよ」
って、ボンド使ってませんが。。。


さて、冒頭のよう改名したくなる通り、
ワタクシ、あれこれ運ぶために毎日病院へ通っております。
病棟内では「凄い美人達が来てる」 と、西野家の奥様、お嬢様達の噂が立っているようなのですが、
ワタクシに関しては「誰なんだ、あの毎日来てるチンクシャは？」 といったところでしょう。
面会申し込みの提出用紙の『間柄』欄には、毎回「部下」と書いておりますが、
傍から見たら謎でしょうねー。
叱られたり、命令されたりしてる割にはタメ口で言い返したりして笑ってるし(笑）


術後の経過としては、
オペ翌日はさすがに意識も時折ぼーっとしていて、
歩行訓練中はまるで健常者なのですが、横になると記憶が混乱？
「江戸時代の人達と記憶が混ざってる」「柳生一族の人が仕事の依頼に来て、お前に連絡したでしょ？」とか。

こ、これって、よくある、入院ボケ？？？

「もう眠る！」と布団に潜り込んだところへ「じゃぁ、西野さん帰りますね」と声をかけると、
「うん、ありがとね、明日は車で送ってあげるからね」

（優しいけど、明日は無理ですから！） とココロでツッコミながらも、
こういう半分の意識の時にも言えるって本当に優しい人なんだなー、と感動しながら帰ったのも束の間、
翌日はすっかり元気になっちゃって、完全に通常の仕事モードのボスそのもので、
ワタクシを叱る事、絶好調！
しかし、相変わらず“江戸の人達”は混ざったままで居るんだそうで、
「ボケたと思った」 と言ったら 「失礼な！！」
それって、多重人格になってるってこと？？？

見た目の方は、すっかり健康体。
タバコも吸えず健康的な食生活のおかげで、「お肌がツヤツヤ、スベスベだよ♪」
肌艶はナースにも褒められたとか自慢してます。

「それにしてもさ、、、」

いきなり声をひそめるもんですから何かと思えば、
「点滴の針を一つ刺すにも、個人差あるねー！」 ですと。
「左腕側やってくれた人の時は痛かったんだけど、右腕の人は全然痛くないよ！」
「ああ、基本はきちんと出来ている同じ仕事でも、上手い下手って、ありますよね」

同じ基準で話して良いかわかりませんが、
美容師さんのシャンプーや、エステのマッサージ、技工士さんの作る義歯とかも、
絶妙な技術を持つ人の施術や技術って、もの凄い感動的な感覚があるんですよね。
因みにワタクシには、ヘタクソなエステティシャンだったという職の黒歴史があるので、
左側に点滴処置をして下さったナースにシンパシーを感じてしまいますが。。。

「どの世界にもゴッドハンドと言われる人がいるのですよね」
そんな話をしていると、
「やっぱり一番適したポイントを的確に押さえるって大事なんだよ」

あれ、これは、どこかで似た話が、、、

「本当に的確な処置が出来ないと無駄な痛みが出るんだ、二胡の調整もね」

ああ、やっぱり。　

そう考えると解り易いですね。
ベストな調整って、ゴッドハンドの施術にかかるようなものだったんですね。
だから、同じような事をしいるつもりでも、強くやり過ぎたり、余分な事をすると、
痛みとして、雑音が出たり音が籠ってしまう。
逆に、絶妙な手際で超絶技巧を施すと、感動が生まれるのです。


さて、そろそろまた本日の荷物を運びに行かねばなりません。
今日のリクエストは、二胡の胴と、千斤用の金糸と銀糸、それにアロンアルファ。。。
花窓の新しいデザインを考えついたので、試しに組んでみたいのだそう。
お布団にアロンアルファを「絶対に垂らす！」「垂らさない！」で昨日はもめましたが、
やはりワタクシは自分が正しいと信じているのでシートも持参します。

それから、万世の絶品カツサンド。
なにしろ術後早々のメールが「コーヒーとサラミ持って来て」だったヒトですからね。
「ドクターのＯＫ出ましたか？」と返信したら、
「二胡神さまが」 とかワケのわからんことを送って来るので
「二胡神さまがＯＫしてもドクターがＯＫしなきゃだめです！」 と。
まぁ、とにかく、昨日から肉食解禁です(笑）

美しい奥方には頭が上がらないのか、わがままな殿の無茶なリクエストは全てワタクシの元へ。
運び屋ほぉ の運送業はまだまだ続くのです。