二胡工房 光舜堂

二胡を愛する全ての人へ

楽器としての二胡、その5

2012-03-10 09:58:42 | ■工房便り 総合 
棹が鳴るには、棹が揺れなければいけません。

それには、胴が鳴った時に、棹と、胴の接触している部分の密着度というのが大切になります。

棹が入っている穴と、棹との間に隙間があったら、棹は鳴りません。

ところが案外、今の二胡は、ここに隙間のあるものがかなり多いのです。

ですから弦を外したとたん、胴だけ落下してしまうようなものがたくさんあります。

(弦を外す時には気を付けて下さい)

この事は、今の二胡の構造として、仕方のない事なのです。

棹が、経年変化で、痩せてきます。

そうすると、最初はぴったりしていた、胴の穴との間に隙間ができてきます。

勿論、私の作った二胡も同じ事ですが棹は痩せてしまいます。

私の作る二胡は、棹の上の方に向かって、少し太くなっていますから、

多少棹が痩せても、少し(1ミリぐらい)短くなっても、棹と胴の穴は密着しています。

棹が鳴ると言うことでは、他にも、要素が有ります。

棹を受ける処の胴の木の厚みの問題です。

ここの厚みというのが、ある程度無いと、棹は鳴ないのです。

薄いと、棹まで鳴らせないようなのです。

かと言って、厚すぎれば、鈍く振動しなくなります。

ですから、毎回、一度組み立てて、微妙に削りながら、この振動を調整します。

そして、一番肝心なのは、棹が胴にささっている、位置の問題でしょう。

この位置と、皮を気に張ってある、幅との関係が、かなり重要です。(位置の問題は又後にして)

通常、皮は木の胴に、13ミリかぶせて、そこをニカワで張ってあります。

これはホントは、いわゆる紅木、老紅木、マホガニー形に合わせてあるようなのです。

今は殆ど、本物のマホガニーというのが使われていませんが、それに近い、パドーク等なら、この13ミリというのは適正な幅のようです。

もっと硬い、黒檀や、紫檀などですと、もう少し、14ミリぐらいは欲しいのです。

この皮を張ってある幅によって、この部分の振動がかなり変わります。

今の二胡はどんな木の種類かよって、この幅を変えると言うことはしていません。

ですから、この13ミリを守るとしたら、この、老紅木が他の部分さえ適正に作られていたら一番遠鳴りがすると言うことになるのでしょう。

こんな些細な事が、二胡の鳴りをかなり大幅に、変化させてしまいます。

ところが、木は一本一本硬さも粘りも違います。

皮も当然厚みも違います。

今の中国の二胡の生産のように、マニュアル通り作るとしたら、それこそ、マニュアルに合う
材料で、木も皮も準備できなければ、よく鳴る二胡は出来上がりません。
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2 Comments

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二胡の作り手の思い (hiko)
2012-03-10 12:16:42
今まで二胡を作る人の思いや考え方について、まったく情報もなくてわかりませんでしたが、このブログのシリーズで製作者のご苦労や肝どころがよくわかり、二胡という一つ一つの楽器への愛着が深まりました。どこでどういうふうに作られてきたのか、すべてはわからないまでも、楽器を取り扱う際の心がけや愛情も深まっていくようです。シリーズはまだまだ続くようですが、毎日たのしみにしています。
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hikoさん (nishino)
2012-03-10 13:58:48
ご愛読ありがとうございます。

画像も無い、文章だけの超アナログ的なブログにお付き合いいただいて、すみません。

そのうちまた写真撮って何か載せます。
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