第四章 議会の活動(続き)
議員の地位
【第一〇条】
議員及び代理議員は、いかなる職務上の義務又は他の類似の責務にも妨げられることなく、議員としての職務を遂行することができる。
本条から第一三条までは、議員の地位に関する原則をまとめているが、筆頭の本条はブルジョワ議会制度に見られる自由委任の原則、つまり議員(及び代理議員)の職務活動は外部からの拘束には服しないことを定めた規定である。
【第一一条】
1 議員又は代理議員は、議会が承認しない限り、その職務を放棄してはならない。
2 理由がある場合には、選挙審査委員会は、自発的に議員又は代理議員が第三章第四条第二項の規定に従い、資格を有するか否かについて審査しなければならない。資格を有しないと宣言された者は、それにより、その職務を免ぜられる。
3 議員又は代理議員は、その他の場合には、当該議員が犯罪により明らかに職務にふさわしくないことが示された場合にのみ、職務を免ぜられる。この決定は、裁判所により行われる。
議員は職務継続の義務を負う。そのような議員の地位を万全にするため、議員がその意に反して地位を奪われるのは、選挙審査委員会が議員の資格を否認した場合と裁判所が犯罪により職務不適格と決定した場合に限られる。
日本の国会のように、議会自身の議決で議員を除名することはできない。その点で、議会の自律権には制約がある。
【第一二条】
1 議会が投票者の六分の五以上の賛成を得た議決により承認した場合を除き、議員としての職務を遂行する者又は遂行した者に対して、当該議員の職務の遂行の際の言論又は行為を理由として訴えを起こしてはならない。こうした承認がない限り、職務の遂行の際の言論又は行為を理由として、前記の者の自由は、剥奪してはならず、国内の自由な移動を妨げてはならない。
2 その他の場合で議員につき犯罪の疑いがあるときで、かつ、当該議員が当該犯罪を認めているとき若しくは現行犯で逮捕されたとき又は二年の禁錮より軽い刑が規定されていない犯罪であるときにのみ、拘束、逮捕又は勾留に関する法律を適用しなければならない。
第一項は、ブルジョワ議会制度に共通する免責特権の規定である。ただし、議会の特別多数決による例外の余地を残すなど、特権を制約している。
同様に、第二項の不逮捕特権についても、日本の国会のように、議会の許諾を要件とはしない一方で、自白している場合、現行犯の場合、一定の重罪の場合には例外を認めるという制約を設け、実際的なバランスを取っている。
【第一三条】
1 ある議員が議長である期間又は政府に所属している期間、当該議員の議員としての職務は、代理議員によって遂行される。議会は、議員が欠員である場合に代理議員が当該議員の地位に就かなければならない旨を定めることができる。
2 第一〇条及び第一二条第一項の規定は、議長及びその職務についても、適用される。
3 議員としての職務を遂行する代理議員については、議員に関する規定が適用される。
本条は主として代理議員の地位を定めている。代理議員は議員とほぼ同等の地位を持つ。これにより、議員が議長職や大臣職にあるときに事実上欠員が生じないようにし、また個別的な欠員にも対応できるようにしている。議員の育児休暇などを取りやすくするとともに、議会を可能な限り定数どおり維持し、機能不全に陥らないようにするための仕組みである。
付加的規定
【第一四条】
議会の活動に関する付加的規定は、議会法で定める。
憲法に直接規定されていない議会の活動の詳細は、下位法である議会法に委ねられる。