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持続可能的計画経済論[統合新版](連載第45回)

2025-01-17 | 持続可能的計画経済論[統合新版]

第2部 持続可能的経済計画の過程

 

第10章 経済計画の細目

(1)生態学的持続可能性ノルマ
 持続可能的計画経済の出発点は、地球全域での経済計画の策定である。その際、世界経済計画の前提部を成すのは、生態学的持続可能性目標である。この点で、旧ソ連型の経済開発を最優先とする開発計画経済においては、経済計画の前提部に生産ノルマとなる目標値が提示されていたこととは対照的である。
 こうした生態学的持続可能性目標は、単なる環境保護政策の目標ではなく、具体的な各次経済計画の前提的な規準を成すという意味で、各次経済計画全体を規定する規範的な性質を持ったノルマである。従って、生態学的持続可能性は規範的な数値として各次経済計画の冒頭で明示される。
 その具体的な項目構成としては、さしあたり以下のようなものが考えられるが、環境科学の研究の進展に応じて、さらに新たな項目が追加されたり、各項目ごとの指標が細分化または精密化されるといった改良的変更が加わる可能性を排除しない。


①気候変動:温室効果ガス排出指標
②オゾン層破壊:オゾン層破壊物質消費指数
③富栄養化:水圏及び土壌への窒素・リン排出量
④酸性化:酸性化物質排出指標
⑤有害物質状態:重金属・有機化合物排出量
⑥都市域大気状態:都市域の硫黄酸化物・窒素酸化物・揮発性有機化合物排出量
⑦水資源:水資源利用強度(採取量/利用可能資源量)
⑧水産資源:漁獲量
⑨森林資源:森林資源利用強度(実伐採量/生産能力)
⑩土壌劣化(浸食/砂漠化):農業への潜在的及び現実的な土地の利用量
⑪各種廃棄物:一般廃棄物、産業廃棄物、有害廃棄物、核廃棄物の各排出量
⑫生物多様性:多様性保護区面積、絶滅危惧種等の生息回復目標個体数

 
 実際の世界経済計画では、これらの各項目指標の3か年ごとの規範的目標数値が提示されることになる。従って、例えば、気候変動項目に関しても、現行の国際的な目標数値のように、遠大な長期目標として示されるのでなく、向こう3か年ごとの温室効果ガス排出規制目標が規範的に示されることになる。

 

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