第6章 犯則法の体系
(5)矯正処遇の諸制度②
前回触れたように、矯正の必要度が高い反社会性向の進んだ犯則行為者には矯正施設での矯正処遇が実施される。この矯正処遇の細分類については、政策的に様々なものを想定できるが、処遇制度は簡明かつ人権上も配慮されたものであるほど望ましい。
その点、共産主義的犯則法における矯正処遇は刑罰とは異なり、罪の重さに比例した懲罰ではないので、その期間ははじめからx年、y年・・・・というように数字的に提示されるものではない。
しかし、人権の観点からすべての処遇を無期限とすることも適切ではないので、予め法定された期間を一単位=タームとし、矯正の進展度に応じてタームを更新していく「更新ターム制」が適切と考えられる。
ここで、タームは予め法律で期間を定められた矯正プログラムの一単位を意味する。そしてタームの基本単位は対象者の矯正の必要度に応じて第一種から第三種まで三段階のランクが設けられ、ランクが上がるごとに1タームの年数も二年きざみで長くなる。
例えば、第一種矯正処遇のタームは一年、第二種矯正処遇のタームは三年、最大級である第三種矯正処遇のタームは五年といった按配である。このタームを矯正の進展に合わせて、更新していくことになる。
こうした矯正の必要性の度合いに応じた細分類と同時に、個々の犯則行為者の犯行原因として精神疾患やパーソナリティ障碍のような精神医学的要因が認められる否かを基準とする細分類が与えられる。
鑑別の結果、それらが認められない場合をA処遇、認められる場合をB処遇と名づけるとすると、上掲各級の矯正処遇のそれぞれをA処遇とB処遇とにふるいわけるのが、最も細密な分類となる。
最大限の矯正処遇をもってしても社会復帰可能な程度にまで矯正が進まないケースを想定して、対象者を終身的に拘束する終身監置は矯正処遇の限界点を示すが、これとて終身刑のような刑罰とは異なるので、一切の矯正的働きかけを放棄することなく、矯正が進んだ時点での社会復帰の余地は残される。