Ⅷ 課外教育体系
(1)地域少年団活動
共産教育はその多くを公教育が占めているが、公教育を含めた法令に基づく正規の教育体系に含まれない教育をここでは広く課外教育体系と呼ぶことにする。従って、課外教育体系は公的な課外教育と純粋に私的な課外教育の両方にまたがることになる。
そのうち公的な課外教育の中心となるのは、地域少年団活動である。すでに述べたように、義務教育に相当する13か年の基礎教育課程は原則的に通信制によって実施され、校舎を持った学校で子どもが集団生活を強いられることはない。
その点で、基礎教育課程は相当に個別教育化される。これは共産主義社会の市民として共有すべき基礎的素養を身につける点では効果的であるが、反面として、基礎教育課程は社会性を備えた人間の育成には限界がある。そこでよりインフォーマルな教育として地域をベースとした「地域少年団」が導入される。
具体的には最も重要な社会性育成期の満7歳から15歳までの子どもたちを対象に、地域で年齢混合・男女混合の少年団を編成し、訓練を受けた指導員の下、週末や祝日を利用して、月2回の割合で行う野外活動である(夏季休暇には宿泊を伴う活動もある)。
その目的は、社会性の本格的な発達が促進されるべき年代の子どもたちを対象に、基礎教育課程では限界のある社会性教育を施すところにあるからして、該当年齢の子どもたちは、医学的な理由から参加が困難な場合を除き、全員参加を義務付けられる。
医学的に参加可能な条件を満たす限り、障碍児も参加するため、その限りでは反差別教育の一環としての交流学習の意義も持つ。同時に、活動内容は教科学習やスポーツのような技芸でもなく、自然観察などを通じて自然環境の中で自由に遊ぶ形式で、インフォーマルながら環境教育を兼ねたものとなる。
その実施主体は、中間自治体としての地域圏のレベルで担われる基礎教育課程とは異なり、市町村である。市町村では地区ごとに少年団を編成し、指導員を養成・配置する。少年団指導員は適性審査に合格し、全土一律の講習を修了した成人に限られる。