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乗っ取られた「脱原発」

2014-01-15 | 時評

細川、小泉という20年前、10年前の元総理二人による突然の都知事選「脱原発タッグ」は、従来革新派のシンボルであった「脱原発」までが保守勢力に乗っ取られた事実を示している。

総理在任中はともに原発推進の立場だった二人の老公が突如「脱原発」をぶち上げて保守勢力を分裂させようとしていることには、最近後継者らから軽んじられていることへの老公二人の不満だけでなく、それなりの政治的な背景が隠されていると考えられる。

本質的には保守主義者であり、エコロジズムとは無縁の二人が「脱原発」という緑色の看板の裏に隠し持っているのは、電力自由化というエネルギー経済政策である。これは、小泉政権のシンボルでもあった郵政民営化とも共通する新自由主義的なアイテムである。

もっとも、日本の電力各社はすべて株式会社形態ではあるが、各々が地域独占企業として無競争の特権を与えられた準国策会社であるので、ここでの「自由化」とはそうした地域独占体制の解体を意味する。

それにしても、従来あまり共通点がないかに見えた奇妙な元総理連合ではあるが、そうでもない。細川が結党した旧日本新党は、いくぶん曖昧ながら新自由主義のさきがけ的な政党であったし、短命に終わった細川内閣最大の「成果」である衆議院小選挙区制導入は、革新政党の弱体化に加え、その性質である地すべり効果の恩恵により10年後の郵政解散総選挙で小泉政権圧勝をもたらした技術的な仕掛けでもあった。

拙論でも論じたように、93年の非自民系細川内閣こそは、今日にまで至る戦後日本史の「逆走」を加速化させ、それをいっそう急進化させた小泉政権にもつながる突破口だったのである。一見唐突に見える奇妙な元総理連合には、そうした歴史的な符合性がある。

元総理連合の参戦により14年都知事選をめぐって保守勢力が分裂する形にはなるが、大局から見れば、保守勢力の一部が「脱原発」を乗っ取ることで、大震災後の反原発世論の風を利用して「脱原発」を軸に緑の党なども含む革新勢力が蘇生することを阻止する効果もあり、保守支配層にとって、この分裂は必ずしもマイナスとはならないだろう。

情けないのは、大震災後の二つの国政選挙でも世論の変化を有利に活用することができず、「脱原発」をまんまと盗み取られてしまった革新側の戦略的無策である。

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