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持続可能的計画経済論(連載第43回)

2018-09-10 | 〆持続可能的計画経済論

第10章 計画経済と政治制度

(3)世界共同体の役割
 前回、世界共同体には政経二院制は適用されず、世界経済計画機関は世共総会の下部機関の位置づけとなると論じたが、とすると、そうした政経一元的な世界共同体というものは計画経済体制においていかなる役割を担うことになるであろうか。
 その点、旧ソ連の行政指令型計画経済は、複数の構成共和国の連邦体ではあったが、ソ連邦という単一の主権国家一国限りでの計画経済として運用されていたから、その目標はソ連邦一国の経済開発に置かれていた。そのため、一国を越えたグローバルな計画経済の構想は、ついに現れることがなかった。
 これに対して、新たな計画経済は、地球環境の保全を何よりも優先する持続可能的計画経済という性格上、地球規模で実施される。そのために、その究極的な計画も全世界を包摂するようなレベルで協調的に行われる必要がある。そのような協調主体が、世界共同体である。
 ここで、そうしたグローバルな計画経済をより実効的に行なうには、「世界連邦」のような本格的な世界政府機構を設立したほうが効果的ではないかとの疑問が向けられるかもしれない。「世界連邦」はまさに世界を統一する政治機構であり、かねてより主として世界平和の観点から提唱する運動も存在している。
 実際、世界共同体は英語でWorld Commonwealthと表されるが、このcommonwealthには「連邦」という政治的な意味もあり、現存する制度としては、英国とその旧植民地諸国で結成する国家連合体の英連邦がCommonwealth of Nationsと呼ばれている。これと同様にWorld Commonwealth を「世界連邦」と訳しても誤りとは言えない側面もある。
 しかし、行政指令型でなく、企業体による自主的な共同計画を軸とする新たな計画経済にあっては、国家という枠組みが無用であるのと同じように、「世界連邦」のような連邦国家的な枠組みも無用であり、「世界連邦」のような制度はグローバルな計画経済を上部構造的に保証する政治制度としてふさわしいものとは思われない。
 その点、commonwealthとは語源的にcommon=共通+wealth=富という二語の合成語であり、そこには「世界共通の富」という経済的な含意も認められる。このようなグローバルな人類共通の富の計画的な生産・分配に関わる統合体としての世界共同体というものが、想定されてくるのである。

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