前文
われら人類は、
地球環境を危機にさらしている既存の経済活動がもらしてきた弊害から現在及び将来の世代を救い、
健全な地球環境及び地球上の生態系の持続可能性を保障し、
改善された環境の中で社会的及び経済的な平等と生活の質の向上を促進すること、
加えて、
言語に絶する悲哀を人類に与えてきた戦争の惨害から現在及び将来の世代を救い、
永きにわたり国際紛争の要因となってきた主権国家間の分裂と対立を克服し、恒久平和の条件を確立すること、
並びに、これらのために、
生態学的に持続可能な経済活動を全人類が計画的に協働してこれを行ない、
国家及び一切の国家的常備軍事力を廃するべく、
既存の国際連合に代えて、全人類を包摂する共同体機構を創出することを決意して、
これらの目的を達成するために、われらの革命的な努力を結集することを決定した。
よって、世界各地の進歩的な民衆が結集した世界民衆会議は、集団的な討議の結果、この世界共同体憲章に合意したので、ここに世界共同体という民際機構を設立する。
[注釈]
国際連合を否定するのでなく、それを克服すべく、主権国家体制に基づかない世界共同体を設立するという趣旨を完結に表現することが、前文の役割である。そうした趣旨を明らかにすべく、国連憲章の前文と似た形式で構成されるが、内容はかなり異なっている。
特に、国連は第二次世界大戦に勝利した連合国主導で設立された経緯からも、前文の冒頭が「われら連合国の人民」で始まっていたことは、国連という制度の決定的な限界であった。国連とは、言わば第二次世界大戦の後始末の体制であり、設立から70年以上を経過し、加盟国が200か国近くに達した現時点でも、そうした旧連合国主導の運営体制は変わっていない。
また20世紀半ばという時代状況を反映して、地球環境保全という共通目的も国連憲章前文には見当たらない。当時は、資本主義か社会主義か、その体制イデオロギーを問わず、青天井の経済開発を至上目標としていたからである。
世共憲章の起草は、世共設立後に総会の役割を果たす世界民衆会議で行なわれるが、設立時点では世界連続革命が一巡完結していなくても、その時点における世界の独立国の過半数の民衆会議が参加した段階で、合意成立とする。