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共通世界語エスぺランテート(連載補遺)

2021-04-15 | 〆共通世界語エスペランテート

補論:エスぺランテート語辞書の編纂方針について


 一般に語学辞典というと、国語辞典を含め、アルファベットなど当該言語の文字の公式の並び順に単語を蒐集・収録することが常識となっている。たしかに、辞典利用者が知らない単語に遭遇した時、最も手っ取り早く引くことができるためには、こうした構成が合理的ではあろう。

 それは多くの自然言語において、当該の単語の品詞の種類が字形からは直ちに判別できないため、とりあえずは形式的な文字列としてとらえて、それに該当する単語を辞典から探し出すほかないという事情によるのであろう。

 それに対して、エスペランテート語では、文の核を成す基本的な品詞に固有の品詞語尾が与えられるため、字形から品詞を識別することができる。

 例えば、名詞なら‐о、動詞なら‐i、形容詞なら‐aのようにである。従って、知らない単語に遭遇しても、語尾から品詞の見当がつくのである。これは、祖語である先行の計画言語エスペラント語から継承した簡便な特質である。ただし、前置詞や接続詞などのように、品詞語尾が与えられない品詞もあるが、これらの数は限られている。

 そのため、エスペランテート語の辞典は、単純なアルファベット順である必要はなく、品詞ごとに収録したほうがむしろ合理的と言える。

 その場合、大見出しから品詞別に構成する方法(例えば、「名詞」の大見出しの下位階層をアルファベット順に構成)と、大見出しは通常の辞典にならいアルファベットで示し、その下位階層を品詞別に構成する方法(例えば、「A]の大見出しの下位階層を「名詞」、「動詞」等々の品詞別に構成)とがあり得る。

 この二つの方法のうち、いずれが妥当であろうか。これは辞典利用者の習熟度によるかもしれない。その点、辞典を初学者用と上級者用とに分けて編纂するとすれば、初学者用には後者のアルファベット大見出し型が便利であろうが、品詞語尾を習得している上級者用には前者の品詞大見出し型で十分であろう。

 もっとも、100年以上の歴史を持ち、世界中に話者・学習者を擁する祖語のエスペラント語ならいざ知らず、筆者が個人的に創案し、まだ筆者以外に「話者」も存在していないエスペランテート語の場合、筆者以外に「上級者」は存在しないはずであるから、辞典も初学者を念頭に置く必要があるというのが道理であろう。

 そこで、辞典の構成としては、アルファベット大見出し型を選択する。従って、外形上は通常の英和辞典などと類似したものとなるが、上述したとおり、大見出しの下位階層では品詞別に単語が収録されるので、スペルのアルファベット順等にランダムに単語が収録される通常の辞典類とは大きく構成が異なることになる。
 
 一例を挙げれば、次のような構成となる(・・・・の部分が収録単語であるが、各単語の並び順はスペルのアルファベット順に従う)。

 

[名詞]

・・・・
・・・・
・・・・

[代名詞]

・・・・

[動詞]

・・・・
・・・・
・・・・

[形容詞]

・・・・
・・・・
・・・・

[副詞]

・・・・
・・・・
・・・・

[前置詞]

・・・・
・・・・
・・・・

[相関詞]

・・・・
・・・・
・・・・

[接続詞]

・・・・
・・・・
・・・・

 
 ところで、エスぺランテート語辞典のもう一つの編纂方針として、エスペランテート語と各民族言語及び英語の間の変換に対応するということがある。このように、一つの辞典が三つの言語間の変換に対応するということも、現在の辞典編纂の常識からは外れるかもしれない。ほとんどの辞典類が、二つの言語間の変換にしか対応しないからである。

 なぜ、英語への変換にも対応するかと言えば、筆者は英語至上主義には反対であるとはいえ、現時点では、英語が世界における事実上の共通語ないしは準公用語となっている言語現実を考慮し、英語との対応関係も明らかにしたほうが実際的と判断するためである。

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