逮捕・抑留・訴追された人
【第35条】
1 犯罪の疑いで逮捕されたすべての人は、次の権利を有する。
(a) 黙秘すること。
(b) 直ちに次のことについて告知されること。
(ⅰ) 黙秘する権利について。
(ⅱ) 黙秘しないことの結果について。
(c) 不利な証拠として使用され得るいかなる自白または自認も強制されないこと。
(d) 可能な限り直ちに、しかし以下の時間内に、裁判所に引致されること。
(ⅰ) 逮捕から48時間後、または―
(ⅱ) 48時間が通常の開廷時間外に満了するか、または通常の開廷日でない日に満了する場合は、48時間の満了後、最初の開廷日の終了時
(e) 逮捕された後、最初の出廷時において、告発され、もしくは抑留を継続する理由を告知され、または釈放されること。
(f) 正当な理由が認められれば、適正な条件に従い、釈放されること。
2 全受刑者を含む抑留されたすべての人は、次の権利を有する。
(a) 抑留された理由を直ちに告知されること。
(b) 弁護人を選任し、相談すること、及びこの権利を直ちに告知されること。
(c) 実質的な不正義が生ずる場合は、抑留された人に国の費用で国選弁護人が付けられること、及びこの権利を直ちに告知されること。
(d) 抑留の合法性について裁判所で直接に争い、もし抑留が違法であれば、釈放されること。
(e) 少なくとも運動を含む人間の尊厳に合致した抑留の条件及び国の費用による適切な収容環境、栄養、読書、医療を得られること。
(f) 以下の人と通信し、またはその訪問を受けること。
(ⅰ) 配偶者または伴侶
(ⅱ) 近親者
(ⅲ) 選任された教誨師
(ⅳ) 選任された医師
3 訴追されたすべての人は、次の権利を含む公正な裁判を受ける権利を有する。
(a) 答弁するために起訴事実の充分な詳細を告知されること。
(b) 弁護の準備をするのに適切な時間及び手段を持つこと。
(c) 通常裁判所の面前で公開裁判を受けること。
(d) 不合理な遅延なしに裁判を開始させ、終結させること。
(e) 審理の際、在廷すること。
(f) 弁護人を選任し、代理されること、及びこの権利を直ちに告知されること。
(g) 実質的な不正義が生ずる場合は、抑留された人に国の費用で国選弁護人が付けられること、及びこの権利を直ちに告知されること。
(h) 公判中は、無罪を推定され、黙秘し、証言しないこと。
(i) 証拠を提示し、または争うこと。
(j) 自己に不利な証拠の提供を強制されないこと。
(k) 被告人が理解できる言語で審理を受け、またはそれが実際的でない場合は、手続きを翻訳させること。
(l) 当時の国内法もしくは国際法の下では犯罪でなかった作為または不作為を理由に有罪判決を受けないこと。
(m) 当該被告人が以前に無罪もしくは有罪の判決を受けた作為または不作為に関わる犯罪で裁かれないこと。
(n) 当該犯罪の法定刑が犯行時と判決時の間に変更された場合は、その軽いものによること。
(o) 上級裁判所に上訴し、またはその審査を受けること。
4 本条が個人への情報提供を要求する場合は必ず、その情報は当該個人が理解できる言語で与えられなければならない。
5 権利章典中の何らかの権利を侵害する方法で得られた証拠を容認すると、裁判を不公正なものにし、または司法の運営に害をもたらすおそれがある場合は、その証拠は排除されなければならない。
本条は、現代的憲法では定番となっているデュー・プロセス条項である。内容的には、相当詳細に定められており、デュー・プロセスの現代的な水準が過不足なく網羅されている。特に、刑が確定した受刑者についても、抑留された人全般の権利として、国選弁護を含む弁護人選任権が保障されているのは先進的である。
また、多言語主義がデュー・プロセス条項にも反映され、公判審理のみならず、すべての情報提供に際して該当者が理解できる言語によるべきことが憲法上保障されていることも特徴的である。
このように南ア憲法がデュー・プロセスの保障に手厚いのは、旧アパルトヘイト時代、特に反アパルトヘイト運動関係者に対するデュー・プロセス無視の苛烈な弾圧が加えられたことへの反省に基づくものであろう。