国の立法権
【第44条】
1 国会に帰属する国の立法権は―
(a) 国民議会に以下の権限を授与する。
(ⅰ) 憲法を改正すること。
(ⅱ) 附則第4条に掲げられた権限領域内の問題を含むあらゆる問題(ただし、第2項に従い、附則第五条に掲げられた権限領域内の問題は除く。)に関連する法案を通過させること。
(ⅲ) 憲法改正を除くあらゆる立法権限を他の統治領域のあらゆる立法機関に委任すること。
(b) 全州評議会に以下の権限を授与する。
(ⅰ) 第74条に従い、憲法改正に参加すること。
(ⅱ) 第76条に従い、附則第4条に掲げられた権限領域内のあらゆる問題及び第76条に従い通過させることを要求される他のあらゆる問題に関連する法案を通過させること。
(ⅲ) 第75条に従い、国民議会を通過した他のあらゆる法案を審議すること。
2 国会は、以下のことが必要なときは、第76条第1項に従い、附則第5条に掲げられた権限領域内に当てはまる問題に関連する法案を通過させることにより、介入することができる。
(a) 国家の安全を維持すること。
(b) 経済的統合を維持すること。
(c) 基本的な全国基準を維持すること。
(d) サービスの提供に必要とされる最低基準を定めること、または
(e) 他の州もしくは国全体の利益に害を及ぼす州の不合理な行動を抑止すること。
3 附則第4条に掲げられたあらゆる問題に関連する権限の実効的な行使にとって合理的に必要であるか、付随しがちな問題に関連する法案は、あらゆる点において、附則第4条に掲げられた問題に関連する法案である。
4 立法権を行使するときは、国会はこの憲法にのみ拘束され、この憲法に従い、かつその限界内で行動しなければならない。
本条は、国の立法権の内容を総則的に示したものである。本条で言及されている附則第4条とは、国と州が競合的に管轄する領域を掲げたリストであり、附則第5条とは州が独占的に管轄する領域を掲げたリストである。連邦国家ではこうした国(連邦)と州の権限関係を憲法上明確に定めておく必要がある。国会が立法権を有するのは、基本的には競合領域内の事項に関してであるが、第2項では一定の国家的重要性のあるときは、州の独占領域内の問題に関しても立法権を行使できることとされる。
合同規則及び命令並びに合同委員会
【第45条】
1 国民議会及び全州評議会は、以下のことを規定する規則及び命令を含む両院の合同任務に関連する規則及び命令を制定する合同規則委員会を設置しなければならない。
(a) 立法過程のあらゆる段階を完了する時間制限の設定をはじめ、立法過程を円滑にするための手続きを決定すること。
(b) そうした委員会に付託された第74条及び第75条で想定される議案について審議し、かつ報告するための両院代表者から成る合同委員会を設置すること。
(c) 少なくとも毎年憲法を審査するための合同委員会を設置すること。
(d) 以下の委員会の任務を規制すること。
(ⅰ) 合同規則委員会
(ⅱ) 両院調整委員会
(ⅲ) 憲法審査委員会
(ⅳ) b号に基づいて設置されるあらゆる合同委員会
2 閣僚、国民議会議員及び全州評議会議員は、両院合同委員会の前において、両院の前に有するのと同様の特権及び免責事項を有する。
本条は、両院で構成する合同委員会とその権限について定める規定である。二院制を採りつつ、合同の活動を重視する趣旨である。