三 汎アメリカ‐カリブ域圏
(10)環カリブ合同
(ア)成立経緯
カリブ海を囲む地域の島嶼諸国と中米大陸側のベリーズ、南米のギアナ三国に加え、周辺に散らばっていた欧米の海外領土がすべて独立する形で成立する合同領域圏。その範囲は、旧カリブ共同体を形成していた地域にほぼ相当する。
(イ)構成領域圏
合同を構成する領域圏は、次の9圏である。
○ジャマイカ
主権国家ジャマイカを継承する統合領域圏。
○ケイマン
旧英領から独立する統合領域圏。
○ベリーズ
主権国家ベリーズを継承する統合領域圏。合同の中で、唯一中米大陸部に所在するが、英語を公用語とするため、スペイン語圏の中央アメリカ連合には加入しない。
○東カリブ‐アンティル
小アンティル諸島に属する独立小国(トリニダードトバゴは除く)に加え、欧米の海外領土がすべて独立したうえで、改めて成立する連合領域圏。結果、旧独立諸国は連合を構成する準領域圏に移行する。連合公用語はエスペラント語で、各準領域圏は英語、蘭語、仏語のいずれかを公用語とする。
〇トバゴ
トリニダードトバゴ共和国に属したトバゴ島が分立したうえで、成立する統合領域圏。
〇トリニダード
トリニダードトバゴ共和国の本島に当たるトリニダード島単独で成立する統合領域圏。
○ギアナ
南米大陸北東部に所在する独立国のガイアナとスリナム、さらに旧フランス海外領土のギアナが合併して成立する連合領域圏。三つの準領域圏の公用語がそれぞれ英語、蘭語、仏語と分かれているため、連合公用語はエスペラント語を指定。フランスが旧ギアナに設置したギアナ宇宙センターはフランスと世界共同体の共同運営機関に移行する。
○ルカヤン
地理上のルカヤン群島を構成する独立国バハマと、その南東の英領タークス・カイコス諸島が独立したうえ、合併して成立する統合領域圏。共に金融で著名であるが、貨幣経済の廃止に伴い金融は廃絶、自給自足的な島嶼共産主義となる。
○バミューダ
旧英領から独立して成立する統合領域圏。合同内では最北に位置し、地理的にはカリブを越え出ているが、地政学的な理由から、環カリブ合同領域圏に加入した。ここも英領時代は金融で繁栄したが、ルカヤンと同様の経緯となる。
(ウ)社会経済状況
この地域の島嶼は、主権国家か西欧諸国の領土かを問わず、ほぼ観光と金融に依存する経済構造であったところ、貨幣経済廃止に伴い、回復された自足的な農漁業を基盤としつつ、合同内で持続可能的計画経済を運用する。また、北アメリカ連合領域圏との経済協力を通じて工業製品を調達する。
(エ)政治制度
合同領域圏は、圏内各領域圏の民衆会議から選出された同数の評議員で構成する政策協議会を常設し、圏内重要課題を討議、共通政策を協調して遂行する。政策協議会は、ジャマイカのキングストンに置かれる。この地域の言語は多種にわたるため、合同全体の公用語はエスペラント語。
(オ)特記
この合同領域圏に属する領域圏は、歴史的にほぼ例外なく旧奴隷貿易の結果、解放黒人奴隷を中心に形成されたことから、政策協議会が所在するキングストンには奴隷貿易記銘館を置き、奴隷貿易の歴史の記録と犠牲者の顕彰を行なう。
☆別の可能性
ベリーズが参加せず、中央アメリカ連合領域圏に加入する可能性がある。また、トバゴが分立せず、高度な自治権を保持する準領域圏として残留し、トリニダードトバゴが複合領域圏となる可能性もある。あるいは、トリニダードトバゴが東カリブ‐アンティル連合領域圏に加わる可能性など、多様なバリエーションが想定できる。