五 汎ヨーロッパ‐シベリア域圏
(3)バルカン合同
(ア)成立経緯
旧ユーゴスラビアから独立した主権国家セルビア、ボスニア‐ヘルツェゴビナ、モンテネグロ、北マケドニアに加え、ブルガリアが合同して成立する合同領域圏。アルバニア‐コソヴォも招聘領域圏として参加する。
(イ)構成領域圏
合同を構成する領域圏は、次の5圏である。
○モンテネグロ
主権国家モンテネグロを継承する統合領域圏。
○セルビア
主権国家セルビアを継承する統合領域圏。事実上の独立国となっていたアルバニア系のコソヴォはアルバニア‐コソヴォに包摂される。
○ボスニア‐ヘルツェゴビナ
主権国家ボスニア‐ヘルツェゴビナを継承する連合領域圏。クロアチアの飛地ドゥブロヴニクを隔てていたネウムは飛び地禁止原則により、クロアチアに編入される。
○新マケドニア
北マケドニアに改称していた主権国家マケドニアが再改称して成立する統合領域圏。ギリシャ系古代国家に由来するマケドニア名称をスラブ人による冒用と主張する旧ギリシャ(ヘラス)との紛議に一定の妥協が成立。
○ブルガリア
主権国家ブルガリアを継承する統合領域圏。
(ウ)社会経済状況
農業に加え、自動車工業なども発達したセルビアを軸とする合同共通経済計画に基づく持続可能的計画経済が施行される。陸地の三分の一を森林が占めるブルガリアは持続可能的林業のモデルとなる。
(エ)政治制度
合同領域圏は、各領域圏民衆会議から選出された同数の協議員から成る政策協議会を常設し、圏内重要課題を討議し、共通政策を協調して遂行する。政策協議会は、ボスニア‐ヘルツェゴビナのサラエボに置かれる。民族紛争の再発防止のための調停機関として、民族関係高等評議会を常設する。合同の共通語はエスペラント語。
(オ)特記
バルカン半島は歴史的に世界でも最も熾烈な民族紛争が起きた場所として記憶されるが、民族紛争を社会主義連邦という形で一定止揚していた旧ユーゴスラビア連邦を構成した共和国中、クロアチアとスロベニアを除く領域に、ブルガリアが新たに加わって成立したバルカン合同の成立は、地域紛争の歴史に新たな解決をもたらし、同種事例に対する範例となる。
☆別の可能性
かつて民族紛争の中心であり、内戦終結後も民族分断的な状況が続くボスニア‐ヘルツェゴビナ全体が合同直轄圏となる可能性もある。
(4)ダキア
(ア)成立経緯
言語的・文化的な共通性の高かった主権国家時代のルーマニアとモルドバが統合して成立する領域圏。ただし、ロシア系・ウクライナ系住民の多い旧モルドバ東部の沿ドニエストル地方は準領域圏として高度の自治権を保持するため、複合領域圏となる。
(イ)社会経済状況
ルーマニア、モルドバともに農業を土台産業としつつ、旧ルーマニア地域は社会主義時代の計画経済経験を活かし、環境持続的な工業生産も活発化する。旧モルドバ地域では工業生産の拠点がある沿ドニエストルが経済的な軸となる。
(ウ)政治制度
全土民衆会議には沿ドニエストルに人口割合に応じた優先議席枠が配分される。また少数民族ロマも民族自治体を構成し、民衆会議に代表者を送る。
(エ)特記
ルーマニアの旧称に由来するダキアは、モルドバを包摂することに伴う名称変更である。なお、沿ドニエストルはモルドバから事実上分離し、ロシアへの帰属を要望していたが、世界共同体の飛び地禁止原則によりロシア帰属は断念し、ダキアに包摂されつつ、高度の自治権を保持する。
☆別の可能性
ルーマニアとモルドバ、沿ドニエストルがそれぞれ単立の領域圏としてダキア合同領域圏に包摂される可能性もある。