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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載第42回)

2024-07-20 | 〆世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

五 汎ヨーロッパ‐シベリア域圏

(15)ルーシ

(ア)成立経緯
主権国家時代のロシア連邦から、「極東ユーラシア」として分離したシベリア最東部の極東連邦管区を除いたうえ、ロシアと国家連合を結成してきた主権国家ベラルーシが統合されて成立する連合領域圏。ウクライナとの間で係争地となっていたクリミア半島はウクライナとの協定に基づき正式にルーシに包摂される。また、ジョージア領内で分離独立状態となっていた南オセチアも、ロシア領内の北オセチアと統合されてルーシに包摂される。飛び地禁止原則により、旧ロシア飛び地のカリーニングラードとルーシを結ぶスバウキ回廊もルーシに帰属するが、回廊地域の行政管理は汎ヨーロッパ‐シベリア域圏が合同で行う。

(イ)社会経済状況
主権国家時代は、豊富な天然資源を活かした鉱業や旧ソ連時代を継承する軍需産業に強みがあったが、天然資源は世界共同体の下で世界共同体の管理下にあり、常備軍も世界共同体憲章に基づき廃止されるため、かつての二大産業部門は解体される。しかし、旧ソ連時代の計画経済の蓄積を再活用しつつ、環境持続的な計画経済に採り組み、成功を収める。ベラルーシ地域は麦類を中心とした農業生産に基盤を置く。

(ウ)政治制度
連合民衆会議は、旧ロシア時代の連邦構成主体を統廃合して引き継いだ準領域圏に、ベラルーシを加えた準領域圏から抽選された代議員で構成される。ただし、連合協約により、ベラルーシは他の準領域圏より高度の自治権が与えられており、代議員定数も多く配分される。連合の政治代表都市はサンクトペテルブルグだが、ベラルーシのミンスクも副代表都市と位置づけられる。

(エ)特記
ルーシ(英語:Rus')とはロシアの原型を成す古民族名ないし古地名に由来する。ベラルーシが包摂されることに伴う名称変更である。

☆別の可能性
ベラルーシが統合されず、単立の領域圏となる可能性、または単立の領域圏としてロシアと合同領域圏を形成する可能性もある。

 

(16)南コーカサス合同

(ア)成立経緯
アルメニア、ジョージアに、ジョージアから分立するアブハジアが合同して成立する合同領域圏。西アジアに近接した地理的条件から、汎西方アジア域圏の招聘領域圏でもある。一方、南コーカサスに位置しつつも汎西方アジア‐インド洋域圏に属するアゼルバイジャンが招聘領域圏となる。

(イ)構成領域圏
合同を構成する領域圏は、次の3圏である。いずれも統合領域圏である。

○ジョージア
主権国家ジョージアから、南オセチアとアブハジアを除いた領域圏。

アブハジア
ジョージア領内で分離独立状態となっていたアブハジアが正式に分立して成立する領域圏。

○アルメニア
主権国家アルメニアを継承する領域圏。

(ウ)社会経済状況
農業、工業ともに発達したジョージアを軸とする合同共通経済計画が施行される。同じ南コーカサス圏内のアゼルバイジャンとは経済協力協定を締結し、共通経済圏を形成する。

(エ)政治制度
合同領域圏は、各領域圏民衆会議から選出された同数の協議員から成る政策協議会を常設し、圏内重要課題を討議し、共通政策を協調して遂行する。政策協議会は、三つの領域圏の都市で輪番開催される、構成領域圏により使用言語が異なるため、合同共通語はエスペラント語。

(オ)特記
アブハジアについて、旧版では他の旧ソ連諸国内の分離独立地域とともに世界共同体直轄自治圏(それぞれの頭文字を取ったアブサップ直轄自治圏)に包摂していたが、改訂版では同自治圏を廃したため、アブハジアを単立の領域圏とした。

☆別の可能性
アルメニアとの関係改善が進展すれば、アゼルバイジャンが当合同に正式に参加する可能性もある。また、可能性は乏しいものの、アブハジアが分立せず、ジョージア領域圏内で高度な自治権を保持する準領域圏として留まる可能性もある。


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