( 豌豆・八月・葉月 )
豌豆の実のゆふぐれに主婦かがむ 山口誓子
豌豆剥く母の戒めこもごもと 平吹史子
豌豆や子がそつと出す通知表 野中亮介
☆ 葉月とは陰暦で八月のこと。語源由来は諸説あるようです
新暦では九月上旬から十月上旬の秋にあたるため葉の落ちる月
「葉落ち月」から転じて葉月になったという説、稲の穂が張るころ稲張り月
から張り月、葉月となった説、まだあるようですね。それにしても良い音
です。
恋ひ来ては虚しきセーヌ葉月雨 林 翔
引際の白を尽して葉月潮 岡本眸
葉月来ぬ木の葉のやうな月あげて 三嶋 隆英
★深川の事 今でこそ東京の下町として多くの人たちが訪れる深川
少し時代を遡れば・・・
「深川の夜」 (芭蕉七部集・第三番)
雁がねもしずかに聞けばからびずや (発句 越人)
酒しゐならふこの比の月 (脇 芭蕉 )
「冬の日」の五歌仙を巻いたあと、芭蕉が名古屋から江戸に伴い帰った越人との
両吟歌仙で深川芭蕉庵に越人を招いての作。
越人が招かれて挨拶句詠み、芭蕉が応える。このころの深川は芦荻の茂った水辺
であったから、そのあたりに降り立った雁の声、雁が音だという。
それにしても自らほとんど酒を口にしないという芭蕉が酒豪の弟子、越人に酒を
すすめている師の情を感じますね。
俳句といえばほとんどモノローグ(独白)ですが、このようなダイアローグの俳境も
連句ならではないでしょうか。