1月 20日 (大寒)

2018-01-20 04:47:15 | Weblog
                 (  大寒  )



英霊に大寒の雲夕焼けたり            沢木欣一



大寒に会ふや誓子の白き髪            細見綾子



大寒の一戸もかくれなき故郷            飯田龍太



大寒の屋根の鴉と睨み合ふ            丹羽康碩



大寒の空張りつめて音もなし           下里美恵子



大寒や指跡しかと血天井             国枝隆生



大寒や火伏札貼る消防車             関根切子



燃え尽きて大寒の日の沈みけり          伊藤旅遊



大寒の閼伽水に湯を少し足す           谷口千賀子



大寒のうすら日に夫居眠れり           児玉美奈子



大寒の帳場に匂ふ青畳              武田稜子



大寒の寺賽銭の硬き音              田畑 龍



大寒の老師一喝死者生者             鈴木みや子



大寒の陽を一身に慈母観音            武藤光晴



大寒や底擦りて発つ渡し舟            平松公代



大寒の鍋釜伏せて静かな夜             菖蒲あや



大寒のぬくき日向をひろひゆく           高木晴子




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1月 19日

2018-01-19 04:56:21 | Weblog
                (  冬鴎・都鳥・百合鴎  )



ゆりかもめ水に羽根打ち胸打ちて        細見綾子



北欧の船腹垂るる冬鴎              秋元不死男



隅田川越えて色町都鳥              森澄雄



百合鴎橋に干さるる諸子網            若山智子



開かざる勝鬨橋や都鳥              菊池佳子



冬鴎声の散らばる風の浜             内田陽子



東郷の立ちし艦橋冬かもめ            武藤光晴



木場堀にさざ波立てり都鳥            日野圭子



パンを撒く人に群れくる百合鴎          今泉久子



冬かもめゆつくり刻の過ぐる島          服部鏡子



百合鴎堅田の湖の日溜りに            伊藤克江



近づける船よろこべり冬鴎            右城暮石



都鳥空は昔の隅田川               福田蓼汀


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1月 18日

2018-01-18 04:21:19 | Weblog
              < 万両・千両(仙蓼)・百両(唐橘)・十両(藪こうじ >


万両や着丈合ひたる借り衣裳           飯田龍太


万両や使ふことなき上廁             富安風生


棕櫚縄の朽ちし籬や実万両            佐藤とみお
      

屋根神に傾ぐ万両艶めけり            橋本紀子
      

万両の一粒づつに雨の粒             関根近子
      

出棺の触れてこぼるる実万両           近藤文子
      

万両や湯桶置きあるにじり口           坂本操子





いくたび病みいくたび癒えき実千両        石田波郷


枝折戸を閉ざす山荘実千両            五十島典子


梁に吊る嫁入り駕籠や実千両           松本恵子


神鶏の長き尾を曳く実千両            小田二三枝


実千両ほめて一鉢もらひ受く           田中さくら


墓浄め庭の千両供花に添へ            山鹿綾子


実千両横木の太き冠木門             丸山節子


石棺に鎌の研ぎ跡黄千両             国枝隆生





吉良さまを敬ふ寺の藪柑子            能村登四郎


ひとつづつ陽の一点や藪柑子           森澄雄


藪柑子小壺に挿せり藍染屋            中村たか


住み古りて増ゆるにまかす藪柑子         清水弓月


皇子の囲みて赤し藪柑子             国枝洋子


蹲の水細りたり藪柑子              鈴木真理子




         千両か万両か百両かも知れず 星野立子


         千両ならず万両ならず藪柑子 清崎敏郎


         千両も万両もわが庭は富む 山口青邨
            





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1月 17日

2018-01-17 05:09:58 | Weblog
                    (  水鳥・浮寝鳥・鴨  )


尻向けて水鳥のみな無防備に           栗田やすし



鴨射ちの下げたる鴨の目は見ざり         細見綾子



地を歩くときの楽しさ鴨の顔           沢木欣一



いつときの鴨の騒ぎや夕川面           武藤光晴



荒波にしやくられづめの浮寝鳥          矢野孝子



賀茂川の夕日かきまぜ鴨遊ぶ           武田稜子



行く雲の影と流るゝ浮寝鳥            梅田 葵



水鳥が宙で捕へしパンの耳            河原地英武



鴨睦む玉のしぶきを日に散らし          上村龍子



浮寝鳥コンビナートの灯と揺るる         橋本 淳



鴨の陣源平池のかがやきに            鈴木真理子




佇めば寄り来る鴨にパンの屑           山鹿綾子



嶺映す水面乱せり鴨の陣             藤田岳人



百の鴨翔たせて湖の乱反射            熊澤和代
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1月 16日

2018-01-16 04:54:20 | Weblog
                  (   囲炉裏・炉・炉明かり・炉話  )



炉火明り夫婦抱き寝の一と呎(かます)        沢木欣一



遺墨見て越後炉ばたの灰かぶる           細見綾子



炉火明かり師の忌近しと思ひをり          栗田やすし



目をしかむしぼり泪や炉火の酔            阿波野青畝



囲炉裏火やたちまち回る旅の酒           清水弓月



炉話や嬶座に猫の大欠伸              下里美恵子



十能で炭火足しゆく囲炉裏かな           鈴木みすず



本陣の三和土に炉火の煙満つ            藤田岳人



唐からし火天に吊られ炉火赫し           巽恵津子



炉明りや灰を均して干魚焼く            森垣一成



炉の匂ひ纏ひ五箇山あとにせり           小栁津民子



炉の熾の音無く崩る一人の夜            高橋幸子



囲炉裏端煤けし柱時計鳴る             青木しげ子



別珍のたび湯気上ぐる炉の火棚           山下智子



ジーパンの脚投げ出せり囲炉裏端          江口ひろし



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1月 15日

2018-01-15 04:28:22 | Weblog
                 (  女正月・小正月  )



喪の女鎌倉で降り小正月             沢木欣一



夜をこめて大根を煮る小正月           細見綾子



囲炉裏にて馬の豆煮る小正月            瀧澤伊代次



女正月五彩あふるる京干菓子           小栁津民子



口中にチョコが溶けゆく女正月          太田滋子



小吉といふ幸もらふ女正月            梅田 葵



真つ白に百合根を煮上げ女正月          矢野孝子



地下街にシャネルの匂ひ女正月          河原地英武



持ち寄りて漬け物旨し女正月           松原 香



蔵店のがらくた市や女正月            武藤光晴



美少年てふ酒にほろ酔ふ女正月          篠田法子



古里の土間でこぼこや女正月           伊藤範子



ばらの花朝湯に浮かべ女正月           上杉美保子



豆源の豆菓子ありて小正月             鈴木しげを



コルク屑ワインに混じる小正月           能村研三



湯上がりの爪の手入や小正月            鈴木真砂女



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1月 14日

2018-01-14 06:49:16 | Weblog
                  (  室咲・室の花  )



冴え~(冴え)と顔に来るもの室の花          細見綾子



室咲の散りたる花も葉の上に              波多野爽波



やはらかに反れる花びら室の花             清崎敏郎



ほほゑみし遺影を包む室の花              福田邦子



サイフォンで点つる珈琲室の花             渡辺慢房



薄目開け受くる点滴室の花               奥山ひろ子



室の花咲き献体の骨帰る                大島知津



あかちやんの寝息すこやか室の花            月光雨花



紅唇の濡るるがごとく室の花              富安風生



見舞花どれも室咲雪のあと               石田波郷



室咲きに水やることも旅支度              片山由美子



わづかなる雨の二度ほど室の花             岡本眸




七七忌までを盛りに室の花                こころ





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1月 12日

2018-01-12 04:49:55 | Weblog
                (  干大根・懸大根・大根干す  )



母病んで掛大根に夕日濃し           栗田やすし



干し大根海鳴りいつもそこで聞く        細見綾子



大根干す土蔵の紋の仮名一字           鍵和田釉子



軒先に余呉の波音大根干す           林 尉江



大根干す伊吹の風の通り道           栗田せつ子



並べ干す大根匂ふ湖北晴            岸本典子



干大根赤城おろしに痩せ細る          菊池佳子



干されたる大根縮む荒筵            渡辺慢房



正ちやん帽被る農夫や大根干す         磯田秀治



黒姫の風に乾びし懸大根            倉田信子



廃校の鉄棒を借り大根干す           渋谷さと江



縁日に買ふ藁干の凍み大根           若山智子



掛大根くの字くの字に干し上がり        篠田法子



田の中に干す大根の白さかな          矢野愛乃



真白な干大根の一日目              太田土男



富士山に竿を渡して大根干す           上道直美




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1月 11日

2018-01-11 03:46:14 | Weblog
                (  寒卵・寒玉子  )



寒卵二つ置きたり相寄らず            細見 綾子



霊場の瀧へ供へし寒玉子             栗田やすし



寒卵わが晩年も母が欲し             野澤節子



寒玉子ゆだりゆらげる湯村の湯          阿波野青畝



掌に受けてまだあたたかき寒玉子         掛布光子



寒卵割つて言ひたきこと忘れ           服部冨子



三輪山の祠に赤き寒卵              国枝隆生



寒卵呑むのど仏二度動き             山 たけし



朝の市産毛貼りつく寒たまご           上杉美保子



寒卵狂ひもせずに朝が来て            岡本眸



大つぶの寒卵おく襤褸の上            飯田蛇笏



籾殻の底よりとりて寒卵             長谷川櫂
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1月 10日

2018-01-10 04:26:53 | Weblog
               (  初氷・氷・氷張る・氷田・氷上・氷面鏡  )



神の鹿跳んで踏み割る初氷           栗田やすし



氷上に夫婦の旅嚢一個置く           沢木欣一



氷割つて漬菜取り出すその暮らし        細見綾子



氷りたる蓮田に残る足の跡           夏目隆夫



池の端に風の筋目の初氷            国枝洋子



氷る田に火祭の幣ちぎれ飛ぶ          牧野一古



老残の吾を映せり氷面鏡            下山幸重



初氷浮きて小鳥の水飲場            井沢陽子



金魚沈む鉢の氷の厚きかな           安藤幸子



水底の鯉の透けゐる初氷            小原米子



滝壺の渕に氷塊ただよへり           立川まさ子



汀よりさし入るひかり初氷           鷲谷七菜子



遅刻教師に八方まぶし初氷           福永耕二
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