1作目は、吉田康弘監督の『旅立ちの島唄~十五の春~』(2013年)
この作品は、NHK『にっぽん紀行』で放送された「15歳 旅立ちの島唄」という番組に着想されたという。
沖縄県南大東島には高校がなく、進学する子どもたちは15歳になると島を離れなければならないそうで、番組では島の民謡教室で三線を習っている少女が「卒業コンサート」を迎えるまでの日々を追っていた。その時も、たまたま予告で知り、録画して視た。そして、今もハードディスク内に残してある。
主演は三吉彩花さん。以前、ドラマで大学生を演じていたのでそれくらいの年齢だろうと思っていたけど、その頃はまだ高校生だったそうだ。大人になりかけた感じは、ドキュメンタリー番組で紹介された少女もそうだった。
さって、番組をそのままなぞるのでは映画にはならないのだろう。15歳という多感な時期に、恋や家族の問題を物語に織り込んでいる。上映後に観客の方から、そうしたエピソードが必要だったのかといった質問が寄せられていた。その時僕は「15歳を描くのには必要だったのだろう」と思った。今思うと、少女が家族と離れ離れになるということを深掘りする内容もあったのではないかとも思うけど、多感な時期の淡い恋の話、好きだな。
グッと心を掴まれるような映画ではなかったけれど、じんわりとくる内容だった。三吉彩花さん演じる主人公の優奈、家族や友人、そして好きな人との距離を測りかねる複雑な役柄を、優奈になりきって演じられていた。
上映後のティーチインが終わり、ロビーで監督のサイン会があるというので、パンフレットを購入しその列に並んだ。そして、気になったことを質問させてもらった。それは、エンドロールで優奈たちが乗る船が遠くへ去っていくのをずっと映していた中で、優奈がデッキから船室に入っていくタイミングについてだった。
吉田監督は、そのタイミングを彼女に任せていたと仰っていた。これから始まる高校生活への希望と、島に残る家族と別れる事の寂しさ。同級生それぞれに違っているだろうその比率を、彼女は最後にゆっくりと船室に入っていった。そこから、優奈の父への愛情の深さを感じることができた。
ここはよく見ていないとわからないかもしれないけど…
で、次に観た『そこのみにて光輝く』についてはまた明日以降に…