踊る小児科医のblog

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新型コロナ「緊急事態宣言」で何が変わる? 都道府県単位で区域と期間を指定、外出自粛などを知事が要請(罰則なし)

2020年03月30日 | 新型コロナ
以下、最近の記事などから抜粋してまとめておきます。

「緊急事態宣言を出してほしい」日本医師会が会見、医療崩壊に危機感
「緊急事態宣言を出していただき、それに基づいて対応する時期ではないか」と提案。
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5e817d91c5b66149226a148e
「入院状況は厳しくなってはいるが、現状においては新たな感染者への対応が可能。さらに(感染拡大が)急激になると、患者を収容できない状態になる」
「症状が軽症や中等症で、入院が必要ない人にはベッドを空けていただかないと重症者の治療ができない。自宅における健康観察、宿泊施設への移動をお願いしなくてはいけないというのが喫緊の課題だ」

「緊急事態宣言」…首相が地域や期間を指定し、知事が外出の自粛などを要請するという形になるようです。
(以下にNHK記事から抜粋)
28日の首相会見によると、罰則は伴わない。

政府/緊急事態宣言でも罰則なし「協力要請」
https://www.ryutsuu.biz/government/m032843.html
「ロックダウンのような状況。フランスのように強制的に罰則を伴うのではなく、知事からの要請と指示ということになり、その中で協力を得なければならない」

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・国民の生命や健康に著しく重大な被害を与えるおそれがある場合と、全国的かつ急速なまん延により、国民生活と経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある場合の2つの要件を満たすことが必要
・総理大臣は、緊急的な措置を取る期間や区域を指定し、宣言を出す
・対象地域の都道府県知事は、住民に対し、生活の維持に必要な場合を除いて、外出の自粛をはじめ、感染の防止に必要な協力を要請できるようになる
・学校の休校や、百貨店や映画館など多くの人が集まる施設の使用制限などの要請や指示を行えるほか、特に必要がある場合は、臨時の医療施設を整備するために、土地や建物を所有者の同意を得ずに使用できるようになる
・緊急の場合、運送事業者に対し、医薬品や医療機器の配送の要請や指示ができるほか、必要な場合は、医薬品などの収用を行える
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新型コロナ特措法基づく対策本部設置へ「緊急事態宣言」可能に 2020年3月26日
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200326/k10012351111000.html

新型コロナ:八戸市7名のうち5〜6名は誰にも感染させていない(専門家会議見解と同じ)

2020年03月30日 | 新型コロナ
濃厚接触者でPCR陰性だった人も、症状が出ないかもう少し観察する必要はありますが、2つのケースについてはここで断ち切れる可能性が高くなりました。
簡単にまとめておきます。

<流行の段階(フェーズ)>
八戸市では23日のスペイン旅行帰りの会社経営者と妻の2名、その濃厚接触者4名、28日の東京帰省女性1名、合計7名の感染が確認され、「1週間で感染急拡大、市民に広がる不安」という構図になっているようですが、これは連日報道されている「東京における(感染源不明の)感染者急増」のフェーズとは全く異なり、接触者をたどって封じ込めることが可能な「未流行国における散発例」の段階にあります。

ただし、東京からの帰省女性は元々の感染源は不明で、都内の感染拡大の結果として県内で検出されたので、今後も無症状や軽症の移入例が続いてくるものと考えて、特に首都圏との人の行き来は最低限に制限(自粛)しつつ、警戒が必要になってくるでしょう。
(折悪しく、新入学・転勤などで人の移動が最も多くなる時期なので)

そのような中で、県内での発生例が出てきた時に次のフェーズに移ることになります。
そこまで、いかにして時間を稼げるかが現在の最重要課題。

現段階では、市内のスーパーやバスで誰だかわからない感染者から感染する可能性は、1週間前とほとんど変わらず、1/10万(国内平均)よりも低い1/100万のレベルだと思います。
「3密条件」+県外からの移動者(旅行客・出張帰り)といった状況でなければ。

<接触者のまとめ>
最初の感染者はスペイン旅行1名、帰省女性1名と仮定
スペイン旅行の最初の感染者は誰だか不明だが、
1-a) 会社経営者(A)とすると、妻1名(B)、同行者4名(CDEF)、計5名に感染→その5名からの感染者はゼロ
1-b) 他の1名(C)だとすると、同行者4名(ADEF)、さらにそのうち1名(A)が妻(B)に感染

2) 帰省女性(G)の母も(−)

1-a) の場合、A→5名、他の6名→ゼロ
1-b) の場合、A→1名、C→4名、他の5名→ゼロ
7名のうち、5〜6名は誰にも感染させておらず、これは2月に出された専門家会議の見解「8割は家族を含めて誰にも感染させず、2割が複数名に広げている」と一致します。

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スペイン旅行 5名(+)男2・女3
       5名(−)男2・女2・不明1
(その他に4名関東+1名搭乗員:結果不明)
濃厚接触者 1名(+)会社経営者妻
      3名(−)
医療機関従事者 8名(−)
帰省30代女性 28日(+)
60代母親 29日(−)
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新型コロナ関連記事:東奥日報
https://www.toonippo.co.jp/category/news-original/%E6%96%B0%E5%9E%8B%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A

新型コロナ:6日間での欧州激変(人口あたりの死亡率で比較):先が見えないイタリア・韓国の拡大・日本の静的増加

2020年03月17日 | 新型コロナ
3月12日に(10日のデータを元にして)書いた、
新型コロナ:人口あたりの感染率・死亡率で比較:イタリア・韓国・日本の大きな違い(2020年03月12日)
https://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/5ee1ac330d0a3f11ab675462ca1d7fa1
の後の6日間の変動について。。

韓国は感染者数を分母とする致死率では0.7→0.9%の微増ですが、6日間で死亡者数は54→75で+21、人口1千万人あたりの死亡率も10.6→14.8で+4.2人となっています。
新規患者が回復者より少なくなっていると報じられているので、今出ている数字はその前の段階の重症者の反映なのかもしれません。

日本も死亡者が17→31(+14)と増加しましたが、主に高齢者施設での集団発生であり、ここが止まればまた緩やかになることが期待されます。
人口1千万人あたりの死亡率も1.3→2.4で+0.9人となっており、主な6国(一番下の表)の中では一番緩やかになっており、基本的にはこれまでの延長線上にあって急速に拡大する段階ではないと考えられます。

ドイツは死亡者数は2→11の9人増に留まっていますが、感染者数は5倍近くに増加しています。致死率の低さから、軽症者や無症状者を多く検出しているものと考えられます。

独仏伊と接しているスイスは、小国ながら感染者数は日本を抜いて9位となり、ドイツと同様に致死率は低いものの、人口あたりの死亡率はすでに韓国レベルに達しています。

真打ち米国は感染者数が5倍となり致死率は低下しましたが、人口あたりの死亡率では日本に迫る勢いです。
欧米諸国は封鎖や飲食店の休業など強力な規制に乗り出しており、今後の状況と政策の変化を見ていきたいと思います。

問題のイタリアは致死率が5%→7%超となっており、人口あたりの死亡率も桁違いに高い。
1千万都市東京で半月程度の間に新型コロナで300人が亡くなっている状況は想像できません。

高齢化率の高さや重症者を多く治療しているからなどと要因が報道されていますが、人口あたりの感染率なども圧倒的に高く、毎日増加する重症者・重篤者の治療が追いついていないことが想像されます。

(中国チームが応援に入ったとのことで注目されますが、日本は国内対策がまだまだこれからで、地方の医療リソースも薄氷の状態なので、他国への応援などできない状況です。)

2020年3月16日現在


2020年3月10日現在(前記のページより再掲)


主な国の人口あたり感染率・死亡率(3/10→3/16)

新型コロナ「PCR検査拡大で早期発見治療」が間違いである理由:陽性的中率は0.7%しかない(99%は偽陽性)

2020年03月13日 | 新型コロナ
なんとも頭が痛い。同じことを何度も書きたくないのですが、医師免許を持っている自称識者(?)でも「PCR検査を韓国並みに拡大して、早期発見治療」などと唱えている。
もちろん、まともな医者ならそんなこと言う人は誰もいないのですが。。

現在のPCR検査は感度が70%かそれ以下で、2回3回と検査して陽性になることも多く、陰性であることが感染していないことを意味しない(偽陰性)。
それが一つ。

更に大きな理由が、
陽性的中率は事前確率(ここでは検査対象者の「有病率」として表記)によって大きく変動し、有病率が小さい時には陽性的中率は低くなり、ほとんどが偽陽性になってしまうことです。
(陰性的中率は逆の変動をする)

ここで使ったエクセルのシートを公開します。ダウンロードして、ご自身で有病率の欄に適当な数字(%)を入れて確かめてみてください。
http://www.kuba.gr.jp/data/2020/2by2table.xls

前回は感度を95%に設定しましたが、現実に合わせて70%に下げます。

「感度70.0%、特異度99.9%」を固定して、
有病率を0.001%(10万人に1人)、10%、90%と変動させてみます。

1) 有病率 0.001%

 10万人の中の1人を見つけるために検査しても、陽性的中率は0.7%しかなく、100人も偽陽性が出てしまい、肝腎の1人は30%の割合で偽陰性となって見つけられないかもしれない。
 現在の日本では平均すると1/10万ですが、これは接触者や有症状者などの中で見つかったもので、リスクの低い国民の有病率はおそらくもう一桁低いと思われます。その程度の集団に対して、軽い風邪症状程度で「早期検査」して、1000人に1人陽性者が見つかったとしても、その99.3%は偽陽性であり、有害無益でしかありません。

2) 有病率 10%

 これは現状の「接触者や医師が必要と認めた有症状者」に相当します。
 陽性的中率 98.7%
 陰性的中率 96.8%
この数字は、いずれも臨床的に許容範囲内で、検査は有効に機能していると言えるでしょう。10万人検査して、陽性者7090人のうち、真の感染者が7000人、90人が偽陽性です。(感染者のうち3000人は偽陰性)
 偽陽性を更に少なくするためには、更に事前確率を上げる必要がありますが、そうすると3割もいる偽陰性者や、検査対象外とされた中での陽性者の見落としが増えるので、ある程度幅を広げて「有病率5〜10%程度と想定される対象者」に検査するのが現実的と言えるでしょう。(5%の場合、陽性的中率97.4%、真陽性3500人、偽陽性95人)
 
3) 有病率 90%

 この状況は、インフルエンザの流行期に典型的な症状で受診したけれど、(必要ないと思いつつやむを得ず※)検査したような場合です。
 陽性的中率 99.98%(=100.0%)
 陰性的中率 27.0%
その結果、陽性なら間違いないけれど、陰性でも大半はインフルエンザと診断できるので、インフルエンザの薬を処方することになります。
 要するに、検査結果が診断や治療方針に影響しないので、このような検査は本来は不要なのです。

※これまで日本中の内科や小児科で、求められるのに応じてやむを得ず検査してきたことが、現在の「検査狂想曲」に繋がっていると考えて間違いないでしょう。

4) 有病率 1%
 表には示しませんが、陽性的中率 98.7%、陰性的中率 96.7%となり、まずまずと思われるかもしれませんが、10万人の中の1000人の感染者のうち、300人は見落とし、残りの700人は陽性となったが、それに加えて99人が偽陽性となる計算になります。
 PCR検査で陽性の場合はそれ以上の検査はなく、真の陽性と偽陽性の区別はつかないので、感染者として隔離されたり治療されたりすることになります。
 799人中99人は少し多すぎるように感じられます。

3月13日現在、青森県ではPCR検査を68件に実施して、陽性はゼロのままです。医師が必要と認めた対象者の中でも、この「1%」に満たないレベルなので、一般の県民の中で検出される可能性は、上記の通り1/100万かそれ以下と考えられます。

新型コロナウイルス感染症について(青森県)
https://www.pref.aomori.lg.jp/welfare/health/wuhan-novel-coronavirus2020.html

新型コロナ:人口あたりの感染率・死亡率で比較:イタリア・韓国・日本の大きな違い

2020年03月12日 | 新型コロナ

イタリアは既に人口あたりの感染率、死亡率でも中国の3倍前後に達していて、致死率(CFR: case fatality rate)でもイラン、中国を上回っています。

主にイタリア、イランの状況がWHOのパンデミック(Pandemic)宣言の要因になっているのでしょう。
endemic(地域流行)→epidemic(流行)→pandemic(世界的流行):国中や世界中で、感染症が流行すること

米国はまだ数としては多くないが、致死率CFRがイランや中国並みに高くなっている。米国は大都市の高度医療は発達しているが、医療格差が大きく、無保険者も多く、世界の経済や人の交流の中心なので、ここが主戦場になるでしょう。

日本は「検査不足による感染者数の見かけ上の少なさ」を指摘する人もいるようですが、有症状者や接触者など比較的絞り込まれた検査で発見された中では、致死率は高くはなく、人口あたりの死亡率もまだ抑えられた段階にあると言えます。
(無症状や軽症の感染者が数倍〜10倍程度いるはずだということは医師や関係者は最初から想定していることで、北大教授の推計もその前提に沿ったものです。)

今後、検査件数が多くなるにつれ、軽症・無症状者の割合が増えて致死率が低下することが期待されます。
(CFRではなく、潜在的な患者数を母数に考えれば、その1/10程度まで下がります。例えば、日本人の1割が感染して、0.1%が死亡すると考えると、1万人程度という数字=季節性インフルエンザと同レベル=が出てきます。これをどう考えるかが問題なのです。)

一方、韓国は1つの宗教団体からのアウトブレイクとその接触者つぶしをかなり徹底して行った結果、感染者数、感染率はイタリアと同等ですが、致死率は1/7程度(日本の半分程度)に抑えられており、これが「軽症者を見つけて治療しているから検査を早くした方が良い」という見解を生んでいるようです。

しかし、人口あたりの死亡率は日本の8倍もあり、軽症者の割合が多かったことで見かけ上の致死率は下がっているが、死亡率から推定すると、相応の流行が起きて重症者が多数発生していたと考えて良いので、今後の二次・三次感染の拡大がどの程度抑えられていくのか、注目されます。

日本の流行は、2月中旬に予想したよりもずっと少なく、現在、八戸市内では子どもはもちろん大人の呼吸器感染症も流行していないようです。

青森県の検査件数と陽性者数(まだゼロ)の推移が一つの目安になります。
 ↓
新型コロナウイルス感染症について
https://www.pref.aomori.lg.jp/welfare/health/wuhan-novel-coronavirus2020.html
3月11日現在 検査件数 63件 陽性 0件

新型コロナ:主戦場は学校ではなく医療機関:一斉休校はどの専門家も否定

2020年02月28日 | 新型コロナ
■ 専門家会議メンバーが明かす、新型コロナの「正体」と今後のシナリオ
https://news.yahoo.co.jp/feature/1582
東北大学・押谷仁教授
「学校でクラスターが発生しないとは断言はできませんが、子供の感染例は中国でも非常に少なく、その可能性は低いです。一斉の学校閉鎖をすることは、全体の流れからするとあまり意味がない。大人が子供にうつす例はありますが、インフルエンザのように子供が流行の大きな原因になることは少ないことがわかっているからです。」
「感染が起きやすい行動とは… 対面で人と人の距離が近い接触(互いに手を伸ばしたら届く距離)が、会話などで一定時間以上続き、多くの人々との間で交わされる環境です。たとえば立食パーティーや飲み会など…」
「今の日本で、一番メガクラスターが起こると考えられる場所は病院です。」
「日本ではまだ全体の中で感染している人は非常に少なく、…心配だから診てもらいたいという人の99.99%以上は、感染していないと考えられます。しかし、医療機関には、残りのわずかの割合で存在する本当の感染者がいるかもしれない。…多くの人が待合室の中で押し合いへし合いの状況になると、メガクラスターが起こる可能性があります。」
「軽症者に対しては薬もないし、治療法もない。検査もなかなかしてもらえない。…重症化する徴候のある人に最大限の医療を提供するためにも、また自分が感染しないためにも、軽症者や過剰に心配に感じる人が医療機関に押しかけるような行動はすべきではありません。」

■ 休校要請 専門家「評価難しい」 02月27日
https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20200227/1000044708.html
東京慈恵会医科大学・吉田正樹教授「実施しないよりは感染者が少なくなる可能性はある。ただ、感染が起きていない地域で同じ対応をとることにどれほどの効果があるかはわからない。子どもたちが外に出歩き、友だちと遊んでしまっては効果は下がるだろうし、現時点で評価することは難しい」
川崎市健康安全研究所・岡部信彦所長「専門家会議で議論した方針ではなく、感染症対策として適切かどうか一切相談なく、政治判断として決められたものだ。判断の理由を国民に説明すべきだ」「一定の効果はあるかもしれないが、2009年に当時、新型と呼ばれたインフルエンザの経験をふまえると、各地域の状況に応じてそれぞれ対策をとることが有効だ。ウイルスに感染した患者がいない地域もあるのに、全国一律に小中高校の休校を要請するという、国民に大きな負担を強いる対策を、現時点ではとるべきではないと思う」

■ 村中 璃子氏/ Riko Muranaka
アウトブレイク対策では感染段階に応じたカードを切っていくのが基本。
リーダーシップとはトップダウンで必要のない無理を強いて権力を誇示したり、やっています感をアピールすることではない。
専門性のある人や機関から決定権を奪うことでもない。
今の目標は社会活動を維持しながら重症者の救命することです。
必要なカードは本当にそれですか?
https://www.facebook.com/rikomuranaka/posts/3043721279006168

■ 「今はまだ諦める時期じゃない」「一斉休校は議論していない」 新型コロナ専門家会議の委員が協力を呼びかけること
東京大学医科学研究所・武藤香織教授
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200228-00010003-bfj-soci
「もう封じ込めはできないけれども、今なら感染の拡大のスピードを遅らせることはできるかも、そして流行を防いで収束させられるかも、という目標が見えている時に、全国一斉に何かをやる、という対応は必要ない。しかし、多少の行動制限を徹底する必要があるという考え方でした。」
「北海道内の学校の対応については、状況に応じて学級か学校単位の休校を選ぶべきだという議論になりました。」
「新型インフルエンザの時とは違って、子どもが流行の原因になっていないし、子どもの重症者が増えていないためです。このウイルスは、インフルエンザとは違う特徴を持っているのです。」
「今回の全国一斉休校要請については、事前に政府から意見を求められておりませんし、議論もしていません。この政策の優先順位の高さ、どういう状況になったら解除できるかといった基準など、政府のご判断の根拠を理解できていない状況です。」
「体調が悪くなる前に検査しても意味がないのは明らかで、そこで陰性が出ても健康である保証はない。だから、「全ての人にPCR検査をすることは、このウイルスの対策として有効ではありません」と言い切っています。」

■ 全国一斉休校の速報に専門家も「ひっくり返りそうになった」 新型コロナ感染拡大防止のためにどこまですべきか?
国際医療福祉大学公衆衛生学・和田耕治教授
https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/covid-19-wada-2
「これは誰が決めたんでしょう。ひっくり返りそうになりました。」
「まず、根拠を出すべきです。今のタイミングが本当にいいという、根拠があるのでしょうか。」
「こんなカードは何度も切れませんよ。対策は何が難しいかと言えば、緩和するのがまた難しいのです。始めるのは比較的簡単なんです。」
「対策は止めるのが難しいのですから、始める時に「こういう基準になったら解除しますよ」というのを、公表するかどうかは別として腹案はもっておかなければならない。」
「私は全国で一斉にやる前に、いわゆるクラスターと呼ばれる感染者の集積が出た時には、その地域で制限してください、と少し地域ごとに対応するような段階があってもよかったのではないかと考えました。」
「3月いっぱい休校にしたとしても、また4月や5月に散発的な流行が起きたら、またやるつもりなのでしょうか?」
「政府はどういう根拠で、今のタイミングと決めて、いつまでやって、何をもってこれが成功したと判定するのか、説明責任があるのではないでしょうか。」

新型コロナ「希望者には全例検査を」してはいけない理由(おそらく首相は理解していない)

2020年02月28日 | 新型コロナ
正直、まともに論じる気力を失っています。(この国の政府に対しても国民に対しても)
前回、クルーズ船で3200人に対し、有病率30%、感度95.0%、特異度99.9%とすると数十人の偽陰性者(感染しているのに見逃される)が生じることを書きました。

ここで、あなたが10万人のまちの市長だとして、市内に100人(有病率0.1%)もの新型ウイルス感染者が野放しになっていて、残りの99900人の命を守らなければいけない。だから全市民に検査をして100人を強制隔離しようと強権発動したとします。

数式や用語は前回書いたので省略します。
(割り算とパーセントなので小学校の算数です)
比較のために特異度99.9%は同じにして、感度を80%まで下げます(現状ではもっと低いようです)。有病率は0.1%なので前回の1/300です。


偽陰性20人(見逃し)
陽性80人+偽陽性100人(濡れ衣)
陽性的中率 44.5%(半分以下)
陰性的中率 99.98%(ほぼ100%)

感染者の5人に1人(20人)は取りこぼして、残りの80人を見つけるために100人に濡れ衣を着せて強制入院させる。

検査を希望者1000人(1/100)に絞ったとしても、その中に対象の100人全員が含まれているわけはなく、有病率は同じ(感染者1人)か多くて10倍程度なので結果は省略します。

ここで、100人のうち80人は軽症か無症状なので、もし発症したとしても市中の医療機関に任せて、検査せずに対症療法で治癒したとします。
その上で、重症化する20人を確実にピックアップすることを目的に、「新型ウイルスを含むウイルス・マイコプラズマ・細菌等」により気管支炎か肺炎に進行しつつある市内の100人を検査対象とすると、その中に20人は確実に含まれていることになります。


偽陰性4人(見逃し)
偽陽性0.08人(濡れ衣は、ほぼゼロ)
陰性的中率は95%となりますが、偽陰性の4人も引き続き医療管理を受けているので、もし改善しないなら再検査して早期に対応することも可能。
偽陽性はほぼ無視できますが、1人と仮定しても、元々重症化しつつある患者なので、過剰治療と考える必要はありません。(症状や検査結果から区別できないし、する必要もない)

現実には、日本国内での有病率は0.1%には遠く及ばず、おそらく0.01%にも達しないでしょう。
でも、東京1千万人の中で0.01%、つまり1千人の感染者が野放しで満員電車に乗っているんです。
これは、放置できないと思うでしょう。
それなら、どうしますか?
(→冒頭に戻る)

新型コロナ:死亡率の減少:地域差:基礎疾患リスク:フェーズは「流行蔓延期」に

2020年02月24日 | 新型コロナ
中国の確定44,672例の続きについて、書きかけていたのですが遅くなりました。

死亡例のリスクファクターの最大のものは前述のように年齢で、80代以上14.8%、70代8.0%です。

基礎疾患別では、心疾患10.5%、糖尿病7.3%、呼吸器疾患6.3%、高血圧6.0%、がん5.6%と続き、基礎疾患なしは0.9%(全体の平均は2.3%)となっています。



ここでは喫煙者について検討されていませんが、SARSやインフルエンザなどと同様に、喫煙者は死亡率が相当高いことが推測されます。
(慢性の呼吸器疾患の大半は喫煙者だと推測されます)

地域別では、武漢を含む湖北省で2.9%、中国のその他の地域では0.4%と大きな差がみられます。

注目すべきデータとしては、発症時期別の死亡率が、1月中旬以降激減しており、2月以降では0.8%まで減少していることです。

この「地域差と時期による変動」については、当初は武漢に限定して、重症例だけがピックアップされて統計に揚げられていたと考えられるので、そのバイアスを差し引いて考える必要がありますが、それにしても他地域の0.4%(全時期)と2月以降の0.8%(全地域)という数字を見比べてみると、これまでの平均2.3%を大きく下回っており、名目上の致死率も今後相当下がってくるものと予想されます。

当初より、名目上の致死率は1%以下、実質の致死率はその1/10の0.1%程度と見込んでいます。

これらの数字は、楽観的な予測を示唆しているとは言えません。
致死率1/1000(0.1%)は、もし東京の1千万人のうち百万人が感染したら、千人が死亡するという意味です。
(国内では一千万人の感染者のうち1万人が死亡)

これは、インフルエンザの超過死亡数と同じレベルですが、毎年インフルエンザで高齢者を中心に1万人が亡くなってもニュースにもパニックにもなりませんが、新型コロナで1万人が死亡すると仮定すると「国難」ということになってしまいます。

問題は、治るか重症化=サイトカイン・ストーム(免疫系の暴走)=するかという分かれ目がわかっていないことです。リスクファクターは上記の通りですが、リスクの少ない比較的若い人の一部が重症化していることには注意が必要です。

95%くらいは軽症か無症状だとしても、千人に一人が亡くなる(インフルエンザと同等)というのは、対処法は普通に扱っていいけれども、強い感染症であるということも確かだということです。

ごく一部の重症化しそうな方をピックアップすることが肝要で、これは普通の診療と何ら変わるものではありません。特に、子どもでは重症化は非常に稀であり、旧型コロナ、新型コロナ、その他の風邪を分けて考える意味はないし、見分けはつきません。

新型コロナ感染症(COVID-19):年代別致死率をグラフ化:10-30代0.2% 80代14.8% 男性は1.6倍

2020年02月21日 | 新型コロナ
グラフにして可視化したら一目瞭然です。

中国における72,314例のうち、確定44,672例
一つ前に「子どもの重症例は稀で死亡はゼロに近い」と書きましたが、残念ながら10代で1例の死亡があったものの、全体の傾向はSARSと同様です。
致死率は10代〜30代で0.2%、40代でも0.4%で、死亡例の水色はほとんど読み取れません。
50代で1.3%に上昇し、平均の2.3%を超えるのは60代(3.6%)からです。
なお、男性2.8%、女性1.7%で、男の方が1.6倍も死にやすい。喫煙率の高さが影響しているものと思われます。

致死率の分母は確定例数ですが、軽症や無症状者も相当数いるはずなので、実際にはもっと低いものと推測されます。(軽症や無症状者は数えられないので、確定した数字で出てくることはありませんが)

なお、現在(2/21)までに、日本国内(クルーズ船を含む)の感染者数は728人、死亡は80代の3人で、死亡率は0.4%となっています。(クルーズ船の感染者には無症状者も多数含まれているようですが詳細不明)

出典は、
China CDC Weekly COVID-19.pdf
https://www.docdroid.net/XyuMmdb/china-cdc-weekly-covid-19.pdf

表は一番下にスクリーンショットを掲載しますが、要点だけを書き出してみました。



新型コロナ:SARSから学ぶ:小児の重症化は稀で死亡はゼロに近い

2020年02月18日 | 新型コロナ
Facebookに限定公開で書きかけたことをまとめ直してみます。
新型コロナウイルス感染症 *1において、「小児の重症化は稀で死亡はゼロに近い」と推測されますが、現時点では必要な情報が全く不足しています。

毎日のニュースのほとんどは役に立たない。
必要なのは、年齢性別の死亡者数、あるいは重症者数。
感染者数というのは氷山の一角なので、それを分母にした致死率(2%)は目安に過ぎません。
(実際の感染者はおそらく10倍くらい)
政府、中国政府、WHOは、そういった情報をリアルタイムに収集し、発信すべき。*3 →中国4万例のデータが発表されたので追記しました。
できれば、数十例、数百例の小児の実際の臨床経過と治療、転帰などのまとめが欲しい。*2

この状況で、参考にすべき最大の経験は、2003年のSARSです。
同じコロナウイルスで、今回の新型コロナがSARSの致死率を上回ることはないはずなので、SARSの時の疫学的情報を目安にして判断することが可能。

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重症急性呼吸器症候群(SARS)に関するQ&A
2)疫学・サーベイランス
http://idsc.nih.go.jp/disease/sars/QA/QAver2-01b.html
「小児は報告例も少ないのですが、死亡者も報告されていません。この理由については現在研究対象となっており、まだ解明されていません。」
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やはり、子どもの死亡例はなかった。

このQ&Aで言及されている
「SARSの疫学に関する合意文書」
http://idsc.nih.go.jp/disease/sars/update101who.pdf
の該当ページのスクリーンショットを2枚掲載しておきます。

表3 致死率

香港では0-29歳はn=0ですから、死亡者だけでなく感染者(患者)もゼロだった。
中国本土では、高齢者ほど致死率は高く、20-29歳では0.9%で、0-19歳の情報がないのは、死亡者はゼロで感染者も少なかったのだろうと推測されます。

調査を必要とする特別な対象人口
「小児のSARS」

子ども→大人 2例
子ども→子ども 報告なし
香港で8人の子どもが同級生に感染を伝播した事実は全くない
広州市でも学校での感染伝播の証拠は何も見つからなかった

これらのSARSにおける情報と、現在までに新型コロナで小児の重症例や死亡例が伝えられていないことを合わせて考えると、冒頭の「小児の重症化は稀で死亡はゼロに近い」という推測は相当に根拠があるものと考えられます。(その理由はわかりませんが)

なお、高山義浩氏(感染症専門医)が2月16日にFacebookで公開した「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の臨床像について…」というまとめが大変参考になるので紹介しておきます。
https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=2695806897139467&id=100001305489071
「いまだ、世代別の疫学報告はありませんが、私個人のざっくりとした印象で言うと・・・、若者の重症化率と致命率は、統計的に見れば、ほぼゼロ%でしょう。」
「なお、風邪症状に過ぎないのに新型コロナかどうかを確認するためだけに、救急外来を受診することは避けてください。」

と、ほぼ同様の見立てをしています。

メディアでも「高齢者や基礎疾患のある人は重症化しやすい」ということは伝えられていますが、じゃあ若者や子どもはどの程度なのかということは全く伝えられていません。

少なくとも、基礎疾患のない子どもが感染することについて、過度に心配する必要はなさそうです。
おそらく、子どもは感染しないのではなく、感染しても発症しないか、普通の風邪の経過で治っているのだろうと推測しています。

この点について、中国(特に武漢)で家族が感染したり死亡したような子どもでの情報が求められます。

(以下、追記しました)
*1 メディアだけでなく医学系のページでも「新型コロナウイルス(COVID-19)」という誤用が後を絶ちません。
「COVID-19」は新型コロナウイルス感染症(病名)の略称で、ウイルス名は「SARS-CoV-2」。
エイズAIDS(病名)とHIV(ウイルス名)を混同するような初歩的なミスですが、明らかに「COVID-19」という酷い命名が原因です。
ちなみに、
SARS → SARS-CoV(SARSコロナウイルス)
MERS → MERS-CoV(MERSコロナウイルス)
COVID-19 → SARS-CoV-2

COVID-19というのは「coronavirus disease」つまり「コロナウイルス感染症」という一般的情報に19がついただけの名称ですから、現在の感染・流行状況とはギャップがありすぎます。
あるいは、メディアがウイルス名に「SARS」が入っていることを意図的に隠している可能性もあります。

ウイルス名と病名の法則で考えれば「SARS 2」とするか、明らかな発生源である武漢(Wuhan)をとって「WARS」とすべきでしょう。

*2 乳児9例の報告が14日付けでJAMAに掲載されましたが、全例で家族内感染があるものの、「ICU・人工呼吸器・重度の合併症」いずれもゼロであり、症例数は少ないものの貴重なデータと言えます。
Novel Coronavirus Infection in Hospitalized Infants Under 1 Year of Age in China
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2761659

*3 中国における72314例(確定44672例)のまとめが発表になりました。残念ながら10代で1例の死亡がありますが、全体の傾向はSARSと同様です。別にまとめる予定です。
China CDC Weekly COVID-19.pdf
https://www.docdroid.net/XyuMmdb/china-cdc-weekly-covid-19.pdf

新型コロナ:有病率が上がればPCRでも偽陰性は無視できない(陰性でも感染していないとは言えない)

2020年02月13日 | 新型コロナ
クルーズ船乗客への全員検査が議論されているようですが、感染症の専門家がPCR検査でも偽陰性があり得ると述べていたので、どの程度なのか調べようと思っていたところ、次のような解説記事が昨日(2/12)掲載されていました。

「有病率が上がれば陰性的中率は下がる(検査で陰性でも感染している可能性は上がる)」という原則は、どの検査、どの病気でも変わりありません。

クルーズ船の乗客の有病率が上がってきていると仮定すると、全員検査で陰性とされた人の中で、数十名の偽陰性者が「感染なし」と判断される可能性があります。

一方で、ホテルに隔離していた帰国者は、十分な日数が経っていて症状がない人達なので、有病率は非常に低いと考えられ、検査で陰性なら感染なしと判断することができます。

以前作成した、計算式が埋め込まれているエクセルのシートにこの記事の数字を当てはめてみて、全て確認できました。

数字の羅列では理解しにくいので、「」内に引用・抜粋した文章と、それぞれについての図表と数字を出して説明してみます。

■ 新型コロナウイルス感染症との闘い 知っておくべき検査の能力と限界 2020.02.12 鎌江伊三夫
https://www.canon-igs.org/column/macroeconomics/20200212_6236.html

「4つの可能性:①真陽性(「感染あり」で陽性)、②偽陰性(「感染あり」なのに陰性)、③偽陽性(「感染なし」なのに陽性)、④真陰性(「感染なし」で陰性)」
「PCR検査は、検体から得られた遺伝子を増幅し、遺伝子レベルでウイルスを特定する方法である。そのため、一般には、感度も特異度もかなり100%に近い値になるのではないかと考えられる」


→ここで、基本の表を出しておきます。准看護学院の講義に使っているものです。

感度と特異度は検査の性質・精度に関する指標、
陽性的中率・陰性的中率は検査結果の判断に関する指標です。
有病率は(a+c)/(a+b+c+d)です。

感度、特異度、有病率の3つが変数となるので、同じ検査結果でも判断は異なってきます。

「ここではリスク分析上の通例としてやや低めに見積もり、感度95%、特異度99.9%と仮定」
「想定される有病率が1%とかなり低い場合でも、陽性適中率91%、陰性適中率99.95%と算出される」


→表の★のところに、感度95%、特異度99.9%、有病率1%を入れると、陽性的中率90.56%、陰性的中率99.95%と計算されます。
有病率が低いときには、検査で陰性なら感染していないと判断して差し支えありません。
(それでも1万人に5人は偽陰性となる)

ただし、この有病率の数字は実際にはわからないので、臨床的な流行状況から見当をつけて判断することになります。

「439人のうち135人が陽性。名目の有病率は31%」
「有病率を同レベルの30%としてみよう。全乗客・乗員数3711人から439人は除いて、全員検査の対象は3272人を想定」
「偽陰性49人、偽陽性2人、陽性適中率は99.8%、陰性適中率も97.9%と推計」


→同様に有病率30%、検査対象者の3272人を入れると、この記事の数字が出てきます。
ここで、陰性的中率は97.9%と高そうに思えますが、対象者数が多くなると、偽陰性者数の49人は無視できない数字となります。

(文中では「適中率」と表記されていますが同じものです。臨床医学では「的中率」が通常使われていると思います。)

「有病率が50%であれば、推計される偽陽性はほぼ同じの2人であるが、偽陰性は82人」


→同様に、図表の通りです。陰性的中率は95.2%に低下します。

「全員検査を行えば、2人に濡れ衣を着せ、49人から82人ほどの感染者を見落とすことになる」

→臨床診断ではPCR検査の結果で最終判断するので、「濡れ衣」(偽陽性)の2人が誰だということはわかりません。

同じように、偽陰性者の49〜82人というのも特定できないので、全ての陰性者について「感染している可能性は否定できない」ということを、本人も、政府・メディア関係者も、国民も知っておく必要があります。

ちなみに、この解説記事では最初にことわっているように感度95%と低めに見積もっているので、これを99%まで上げれば、有病率30%の時に陰性者2298人中10人、50%では1651人中16人まで偽陰性は減少します。
減りはしますが、「陰性でも感染している可能性は否定できない」という結論は同じです。

「以上のような問題をできるだけ避けるためには、本来、集団スクリーニングは、対象をハイリスク集団に絞って行うべきものである。この原則に従えば、水際作戦としての感染防御の観点からは、全員検査を急いでやるべきではないとの結論になる。その意味で、これまでの厚労省が取ってきた方法は間違っていないと言えよう」 
「医師や公衆衛生の専門家と呼ばれる人からも、全員検査を行うべきとの意見が聞かれるのは、まさに驚きである」

今回のような混乱は、日本人の検査至上主義と、検査の特性に対する基本的知識の不足(全員に検査すればシロかクロかがはっきり分かると思っている)によるものと言えます。
正しく恐れるためには、最低限の知識は必要なのです。
(上記のような用語や数式まで覚える必要はありませんが)

「遠野物語におけるホウリョウ」八戸と遠野

2020年01月10日 | ART / CULTURE
八戸には法霊山龗神社(ほうりょうさんおがみ神社)という、耳馴れない名称の古社(三社大祭の三社の一つ)がありますが、八戸と関係の深い遠野にもホウリョウという地名が登場します。

同神社のHPによると「平安時代にはすでに存在していたことが記録上判明しておりますが、はっきりした創建は不明で、郷土史家や研究者の方々によって弥生期・飛鳥期など諸説ございます」とのこと。

この地域で平安時代よりも古い歴史があるとしたら、田村麻呂以前の古代蝦夷に繋がる聖地だったのかもしれません。
(なのに、道路を通すために神木を伐採してしまった)
http://www.ogami-jinja.jp/

以下、青空文庫よりダンノハナ・蓮台野の段の後半から抜粋
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● 山口のダンノハナ 館趾のつづき
  蓮台野はこれと山口の民居を隔てて相対す
 南の方 星谷 蝦夷屋敷 四角に凹みたる
  石器
● 石器は二ヶ所(山口)
1)蓮台野(星谷) 技巧いささかもなく 蝦夷銭とて土にて銭の形=渦紋などの模様
2)ホウリョウ 模様なども巧 埴輪も 石斧石刀の類 丸玉・管玉
● ホウリョウ権現は遠野をはじめ奥羽一円に祀らるる神なり。蛇の神なりという。名義を知らず。
https://www.aozora.gr.jp/cards/001566/files/52504_49667.html
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石器の部分の描写をみると、ホウリョウの方は縄文から弥生時代、蓮台野(星谷)の方は古代蝦夷ではないかと思われます(…蝦夷屋敷、蝦夷銭という言葉が使われていることも参考にして)。現代の調査結果は調べていませんが。。

「ホウリョウ権現」については「遠野をはじめ奥羽一円に」とあるように、国替えで八戸から遠野に伝わったものではなさそうだが、八戸の法霊山龗神社にも権現様の歯打ちがあるので、同じルーツと考えて良いでしょう。

前記のように、蝦夷征討と仏教伝来よりも古い信仰につながっているものと思われます。

一方、「龗」という珍しい漢字は、万葉集で藤原夫人から天武天皇への返歌の中で使われています。
(元は万葉仮名ですからこの字ではありませんが)

「我が岡の龗(おかみ)に言ひて降らしめし雪の摧(くだ)けしそこに散りけむ」
 ※「龗」水の神。竜神。
https://sanukiya.exblog.jp/26826883/

遠野物語では、ホウリョウ権現は蛇の神と書かれていますが、蛇は水や龍と結びついているので、龗とホウリョウの意味も繋がってくるように思われます。

明石市「子どもを核としたまちづくり」で人口・出生数増加 八戸との大きな違い

2019年12月24日 | 地域・社会
明石市・泉房穂市長「子どもを核としたまちづくり」「やさしい社会を明石から」↓
https://www.city.akashi.lg.jp/seisaku/kouhou_ka/shise/koho/tokusyoku/kosodate.html
<6年連続で定住人口が増加>
<出生数も4年連続で増加>
<税収増により市の貯金が市長就任前から約5割増>

・中3以下の医療費、第2子以降の保育料、市営施設の子どもの利用料などをすべて無料化(所得制限なし)
・児童養護施設や児童相談所を設置
(明石市の中核市移行は2018年。八戸は2017年に移行したが児相設置計画はない)
・こども食堂を全28小学校区で41ヶ所オープン(市の支援あり)。すべての子どもが無料、障害者・認知症の高齢者も利用。
・子ども関連予算は約100億円から2倍に増やし、担当職員数も3倍に増やした。
・財源として、道路や下水道などの公共事業費を半額ぐらいにした。

市民に安心感が生まれ→移住者が増加→地域経済が回り始めた
(神戸や大阪に企業や学校があり、通勤通学可能なので、誘致する必要がなく、「働く」「学ぶ」は市外で、明石市は「暮らす」を重点におくことができた。)

(以上、『通販生活』連載『人生の失敗』溝口敦、より引用。失敗とは職員に対する「暴言問題」のこと)

<新刊>
『子どもが増えた! 明石市 人口増・税収増の自治対経営』湯浅誠・泉房穂ほか(光文社新書)

「三内丸山考」サンナイは縄文語、古代蝦夷や中世アイヌとの繋がりは?

2019年08月22日 | ART / CULTURE

ここは三内霊園の裏口、新青森からゆるやかに下った池。。三内霊園は三内丸山遺跡に隣接していますが、その間には沖館川が流れていて、その両岸の丘陵が三内という地名。。


サンナイは多くの人が指摘しているようにアイヌ語地名とみて間違いなさそうで、そこに縄文遺跡がある。こういうところは滅多にないのではないかと思う(調べてませんが)。

当然考えられる推論として、縄文語でもサンナイかそれに似た発音だった可能性がかなり高いと思う。

三内(さんない) サン(浜の方へ出る)・ナイ(川)

今回(8/17)は暑かったし時間もなかったので遺跡には足を運ばなかったが、是川と同じように海岸(縄文海進で自衛隊か運動公園のあたり)にも河口にもほど近い緩やかな丘で、海と山の幸を得るには好適ですが、例によって防御には向かない。。

岡田康博氏は狩猟採集民だから戦いがないとは言えないと書いていますが、実際に明らかな戦いの痕跡は見つかっていないようだし、隣村や周辺地域を武力で制圧しようとしても、弥生人のように鉄器と馬と米があれば別だけど、大規模な軍事行動は起こせない。。

起こせないし、起こす必然性も見当たらない。もし隣村を併合しても、同じようにサケやクリをとっているだけで、支配のためのコストがかかるだけで、メリットはあまりなさそう。。

ただし、三内丸山には中世の館の跡も同時に発掘されたとのこと。是川や大湯では近隣でも台地の辺縁部の断崖を利用しているので、少し意外な感じがするが、この三内丸山に縄文以降どんな歴史があったのかは全くの謎。。(たぶん江戸時代の菅江真澄らの記載まで空白なのでは…中世の浪岡の歴史にも関わっていないし)

上述の「サンナイ」という地名が縄文時代から続いているという仮説も、そこに人が居続けなければ成り立たないので、これも謎のまま。。

岡田氏は、アイヌ人が縄文人の末裔だという説については、身体的特徴などでは認めていながら、冷淡とも言える記載。。(2000年時点の著書ですが、門外漢の梅原猛氏の仮説を意識してのものではないかと。。)

岡田氏は同時に、縄文人はどこに行ったのかという問いに、どこにも行かない、そこに居続けたと答えています。おそらく、その通りなのではないかと思う。

縄文人、アイヌ人、弥生人、倭人、現代の近畿人、東北人、そこに古代蝦夷、隼人などがどう位置付けられるのかというのが、私の頭の中でも全くの謎のままで、毎年の特別展や書籍などを見ても、何もわからないまま。。
今となっては古い説かもしれませんが、故・梅原氏の言説が最も説得力を持つのではないかと。。

一方で、昨年の丹後平古墳展で「蝦夷(エミシ)は政治的な用語」という冒頭の説明には強い違和感を覚えたことを今でも記憶しています。

その傍証は、三戸南部氏の「聖寿寺館跡」(室町・戦国時代)で中世アイヌが館内に居住していたことを示す皿が出土していること。
この中世アイヌは、古代蝦夷の末裔ではないのか?
鉄の文明を導入し、蕨手刀を作ってこの地を支配していた人たちは、どこに消えてしまったのだろう。
(アテルイ・田村麻呂の時代と三戸南部氏の時代では、700年もの隔たりがあります。)

この辺りの関係を明快に推測している仮説があるのかどうか、それすらわかりません。ご存知の方、あるいは自説がある方はご教示ください。

※この文章はFacebookに2回にわたって書いた三内丸山遺跡の特別展探訪記の続きですが、友達限定から公開に変更しておきますので、興味のある方はご覧下さい。
https://www.facebook.com/odorusyounikai/posts/2249735151746613
https://www.facebook.com/odorusyounikai/posts/2253722774681184

「選挙序盤の情勢報道は信頼性が高い 参院選全選挙区をチェック」

2019年07月24日 | 政治・行政
 2019年7月の参院選について、試しに調べてみたところ、予想通りの精度の高さでした。調査結果の解析に加えて、記者の判断も加味されているはず。
 というのも、こういった世論調査の結果を見ると、あたかも「陰謀論」のように、数字が操作されているとか、世論誘導だとか言い出す人がいて辟易とさせられるから(…皆さんの周りにはいないかもしれませんが)。。

「調査結果はそのまま受け止めて、自らの判断で投票すればいいだけ」(無論、無条件で信じたり、それに従って投票すれば間違いがないという意味ではありません。)



 今回の参院選の序盤(7/5)と終盤(7/17)の情勢報道(共同通信)を選挙結果と比較してみました。
 外れた選挙区はいずれも序盤で接戦と伝えており、選挙戦の中で追い上げ、逆転が起きたものと考えられます。
(ここで浮かんでくるのは、序盤=選挙戦が始まる前=に接戦になっていなければ、大きなことがない限り、覆すことは難しいという仮説です。青森の「善戦」も、結果的にはその範囲内に含まれました。)

 方法としては、序盤の情勢報道で「名前が出てくる順」に順位をつけ、結果と照らし合わせてみました。結果として、外れたのは下記の9選挙区のみで、他は全て一致していました(複数区での順位の違いは別として、当選者だけでみれば)。

 ☆印は終盤情勢で接戦とされた8選挙区で、野党優勢の2選挙区★と合わせた10選挙区全てを野党が制しています。

 複数区では、静岡は国民現職が立民新人を抜き返し、大阪は立民新人が落として維新が2議席目を獲得(結果はトップ)、広島は国民現職が当選して自民現職が落選(自民新人と入れ替わり)。

 無所属で当選した9人のうち8人は1人区の野党統一候補、広島は立国社推薦(国民)で、いずれも野党系です。

 結果的に、序盤情勢では自民65+公明14+維新9=88(改選数は自民66+公明11+維新7=84)だったものが、最終結果は自民57+公明14+維新10=81となり、
 自民 序盤情勢から-8 改選数から-9
 公明 序盤情勢から±0 改選数から+3
 維新 序盤情勢から+1 改選数から+3
自民の−9を公明維新の+6でカバーした形になりましたが、「改憲勢力」2/3のための85議席には4議席届かないことになりました。
(公明維新の+6の意味を考えることも必要でしょう)

 なお、「れいわ」は序盤情勢で1議席獲得の可能性ありと報じられていましたが、2議席目とN国の1議席を合わせた「+2」は序盤では誰も予想していなかったと思います。
(序盤情勢と比較して、比例で自民−2、立民−1が「れいわ・N国」の影響を被ったものと判断できます)

<外れた選挙区>
☆岩手「平野[自]やや先行、横沢[無]が猛迫」
☆秋田「中泉[自]、寺田[無]大接戦」(中泉が先)
☆山形「大沼[自]わずかに先行、芳賀[無]巻き返しを図る」
☆新潟「塚田[自]と打越[無]横一線」(塚田が先)
・静岡「2議席目を巡り、徳川[立]と榛葉[国]がデッドヒート」(徳川が先)
☆滋賀「二之湯[自]がわずかに先行、嘉田[無]が激しく追う」
・大阪「亀石が当選圏、梅村[維]、辰巳[共]が追い掛けている」(梅村当選、亀石落選)
・広島「議席独占狙う自民」(森本[無]が当選)
☆大分「磯崎[自]が優勢で、安達[無]が懸命に追う」

<情勢報道通り>
☆宮城「石垣[立]、愛知[自]横一線」(石垣が先)
☆愛媛「永江[無]ややリード」

<最初から野党優勢>
★長野「知名度で羽田[国]先行」
★沖縄「高良[無]ややリード」