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福島県:甲状腺がん:市町村別マップ:本格調査で地域差を示唆(201602)

2016年02月19日 | 東日本大震災・原発事故
昨日掲載した、
福島県の甲状腺がん:市部比較:先行[本宮>二本松>白河]、本格[伊達>本宮>南相馬] 2016年02月19日
http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/7070502417fa10c1e1c78963b03b8468

の続きですが、本格調査ではかなり心配な地図が出来つつあります。

本格調査(2016年2月発表時点まで)


先行調査(2015年8月発表確定版)


地図上の色分けは、それぞれ県平均(先行調査37.3人、本格調査21.6人/10万人あたり)を基準として「何倍の範囲か」で区分してあります。
 3 ≦   濃いオレンジ色
 2 ≦ < 3 薄いオレンジ色
 1 ≦ < 2 山吹色
 0 < < 1 クリーム色
 0    白色

本格調査は、一次受診率が62%、一次判定率が93.0%、二次受診率が64.4%(特に2015年度は32.6%)の段階ですから、まだ中通り・会津のデータが今後加わってくることになりますが、おおよその傾向はこの段階で見えてきたと言えるのではないか。。

先行調査では、小さな町村(川内村、川俣村、大玉村、平田村、湯川村など)で一人二人検出されると大きく頻度が上昇するので、かなりバラつきがありますが、これらの濃い色の町村を差し引いて眺めてみると、やはり浜通りと中通りの市町村に分布している傾向が見えてくるのかもしれません。この段階で地域差をはっきりと言うことは難しいと思いますが、その後のデータと比較するための基礎資料として残しておきます。

なお、同じような地図をネット上で掲載しているサイトがあるかと思いますが、先行調査と本格調査の患者数を「足して」マップに色分けしているために、上記のような変化が見えないものになっています。

一昨日(2/17)にも同じことを書きましたが、両調査の結果は「足す」のではなく「割る」(増減を比較する)ことが肝要です。

福島県の甲状腺がん:市部比較:先行[本宮>二本松>白河]、本格[伊達>本宮>南相馬]

2016年02月19日 | 東日本大震災・原発事故
これまで、地域差や市町村別の有病率・発症率の差を論ずるのは時期尚早と考えてきたが、県民調査の委員会では「地域差なし」、津田論文では「地域差あり」と断定的に書かれているので、この段階で検討してみることにした。

ポイントは、両論にあるような大きな括りで分けずに、統計的な正確さよりも、定性的な傾向を眺めながら考えられるようにすること。

相当数の母集団があって比較可能と考えられる市部(13市)と、浜通りの町村+川俣村(合計受診者数では須賀川より多く3市に次ぐ)、その他の町村の3つに分けて検討してみることにした。
恣意的ではないかと批判されるかもしれないが、「恣意的」ではなく「意識的」に振り分ける作業がこの段階では必要ではないかと考えて、あえてこうしてみた。(これも一つの仮説)

本論の前に、このような小さな頻度の比較の際に、県民調査の資料にあるようなパーセント%(百分の一)という大きな単位で表記することは、事態を過小評価するためのまやかしと言わざるを得ない。
有病率や罹患率(ここでは発症率と表記)などで標準的に使われる千人あたり、あるいは十万人あたりを採用すべきで、ここでは十万人あたり(パーセントの千分の1)で統一する。

0.10%=100人/10万人あたり この2つは同じ数字
「99.90%はがんではない」と言われれば、ほとんど心配ないようなイメージに受け取られかねないが、「子ども10万人あたり100人ががんになった」と表現すると、全く違った印象を受けるはず。

全体の比較は以下の通り。

■ 先行調査(2011-2013)
浜通り町村+川俣村 45.9人/10万人あたり(以下同じ)
市部平均      38.5
=県平均      37.3=
その他の町村    27.7

■ 本格調査(2014-2015)
浜通り町村+川俣村 24.9
市部平均      24.2
=県平均      21.6=
その他の町村    5.8

先行調査の「平均37.3人」と本格調査の「平均21.6人」の意味合いについては一つ前のentryに記載したように、先行調査ではスクリーニング効果10倍として1/10(=3.7人)、本格調査では受診間隔2.5年として1/2.5(=8.6人)を推定年間発症率と考えている。この数字は本格調査では14.4人まで増える見込みである。
「本格調査では先行調査より減った」のではなく、2~3倍程度の増加と推測されている。

以下、先行・本格調査について列記します(詳細は表を参照)。

先行調査・本格調査とも、浜通り町村>市部>全県>その他の町村となっている。特に、本格調査ではその他の町村と浜通り・市部との差が大きくなっている。
(2015年度の検診進捗状況により縮まるものと思われるが)

先行調査で県平均より高い市は、本宮・二本松・白河・いわき・田村・郡山・会津若松の7市。浜通り町村は7位の会津若松と同じ。

本格調査で県平均より高い市は、伊達・本宮・南相馬・田村・郡山・相馬の6市。浜通り町村は6位の郡山と7位の相馬の間。
伊達・本宮は県平均より約3倍高く、南相馬・田村は約2倍高く出ている。

特に本宮市が先行・本格とも1位・2位にランクインしてることと、本格調査で伊達市が他を引き離して断トツで多くなっていることには注意が必要であると思われる。

これだけだと眺めて考えるには視覚的材料が不足してるので、地図に落として考えてみたい。(明日以降)

(追記)市町村別マップは次のページに掲載しましたので、併せてご覧ください。
 ↓
福島県:甲状腺がん:市町村別マップ:本格調査で地域差を示唆(201602) 2016年02月19日
http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/ad7054c9962a2adf425dd3dc7ee11bab


----------------------------------------------------------
■ 先行調査(2011-2013) 201508確定

◎ 市部
本宮市   57.3
二本松市  56.5
白河市   55.5
いわき市  48.6
田村市   47.4
郡山市   46.2
会津若松市 45.9
=県平均  37.3=
須賀川市  33.1
福島市   25.4
伊達市   18.9
南相馬市  18.5
相馬市   0.0
喜多方市  0.0
----------------------
市部平均  38.5

◎ 浜通り(町村)+川俣村
川内村  357.1
川俣町  90.0
浪江町  61.6
大熊町  50.7
富岡町  43.4
=県平均 37.3=
飯舘村  0.0
新地町  0.0
広野町  0.0
楢葉町  0.0
双葉町  0.0
葛尾村  0.0
----------------------
浜通平均 45.9

◎ その他の町村 27.7
◎ 全県平均   37.3

----------------------------------------------------------
■ 本格調査(2014-2015) 201602発表

◎ 市部
伊達市   77.4
本宮市   62.9
南相馬市  46.1
田村市    40.6
郡山市    32.6
相馬市    22.3
=県平均  21.6=
福島市   18.9
会津若松市 18.7
二本松市  12.8
白河市   10.4
須賀川市  9.1
いわき市  6.1
喜多方市  0.0
----------------------
市部平均  24.2

◎ 浜通り(町村)+川俣村
浪江町  82.6
大熊町  60.5
=県平均 21.6=
川俣町  0.0
飯舘村   0.0
新地町  0.0
広野町  0.0
楢葉町  0.0
富岡町  0.0
川内村  0.0
双葉町  0.0
葛尾村   0.0
----------------------
浜通平均 24.9

◎ その他の町村 5.8
◎ 全県平均   21.6

一次受診者数と患者数の実数を含む表は、以下に画像として掲載。







福島県の甲状腺がん(2016年2月)39→51人、推定発症率7.8→8.6/10万に

2016年02月17日 | 東日本大震災・原発事故
2016年2月15日発表のデータをチェックしてみましたが、これまでの延長線上で増えている形で、新たな知見はありません。
先行調査のデータは追加修正なし。(2011-2013)

本格調査(2014-2015)は、前回(2015.11)と比較して、
2016.02発表 51人(A1 25人、A2 22人、B 4人)
2015.11発表 39人(A1 19人、A2 18人、B 2人)
     差 12人(A1 6人、A2 4人、B 2人)
(カッコ内は先行調査の結果で、A1からの発見がやや多めになってきている)

単純計算した発見率(患者数/一次受診者数)は、
先行 2015.08発表 37.3人
本格 2015.11発表 19.5人
本格 2016.02発表 21.6人/10万人あたり

これを、当サイトで従来より実施している
先行調査 スクリーニング効果10倍として 1/10
本格調査 受診間隔2.5年として 1/2.5
を掛けると、

推定の年間発症率は、
先行 2015.08発表 3.7人
本格 2015.11発表 7.8人
本格 2016.02発表 8.6人/10万人あたり



一次の判定率と二次対象者の受診率を加味すると、
 14.4人/10万人あたり
まで増加するものと推計されます。
(前回の推計値は12.4)

この数字は、現時点でベラルーシの思春期の1999-2000年の数字「6.6~9.5」に相当し、補正後の推計値は同じく2001年のピーク「11.3」を上回ることになります。(グラフは下に再度引用)

同日発表になった「中間とりまとめ最終案」でも、先行調査について「数十倍のオーダー」で発見されているが、放射線の影響は「完全には否定できない」としつつ、「考えにくいと評価する」と結論づけている。

一方、本来の目的である本格調査のデータの評価方法については、「どういうデータ(分析)によって、影響を確認していくのか、その点の「考え方」を現時点で予め示しておくべき」という前回の案とほぼ同じ内容であり、驚くべきことに、現在続々と発見されている本格調査の患者数が「増えているのか減っているのか」を評価する方法を全く用意していない事実が明らかになっている。

おそらく、これは現実を隠すための方便であろうと推測する。
先行調査で「数十倍のオーダー」だという一般的にはインパクトの強い結果の議論に焦点を向けることによって、先行調査の2~3倍(当サイトの評価方法)だということが明らかになりつつある本格調査の結果に、しばらくの間(=数年程度)目をそらさせることを考えているのだろう。

あるいは、気がついていないだけかもしれないが。

前回(201511)の結果についての記事;
福島県の甲状腺がん(11/30):本格調査で39人、推定発症率7.8人(補正後12.4)/10万 倍増は確実 2015年12月12日
http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/b244bf096d0d4f0d1a853a7101d9e47e

ベラルーシのグラフ



(追記)どうして「いわゆる脱原発派(※)」の人たちは、先行調査と本格調査の患者数を「足して」こんなに増え続けていると言いたがるのだろう。足すんじゃなくて「比較して」増えてるかどうかが問題なのに。。

※丸川環境大臣が創作した新用語である「反放射能派」と同義なのかは不明。また、ここで「いわゆる」を付けたのは、脱原発を考えて活動している人たちが皆んなそうなのではないという意味。

福島県の甲状腺がん:最大径30.1mm、男女差は再び女性優位、年齢構成は変化なし

2015年12月22日 | 東日本大震災・原発事故
8月発表の時点で「本格調査の方が男女差が少なく、震災時の年齢が平均1.6歳若い。腫瘍径は本格調査の方が小さい」と書きました。一部重複しますが、先行調査、本格調査(8月と11月発表)を比較してみたところ、
腫瘍径では30.1mmという大きながんが発見されたので、平均、標準偏差共に増加。
年齢、震災時年齢については大差なし。
男女比は、8月に比べて増加した14名のうち、男5、女9と女性の方が多く発見され、1:1.27から1:1.44に開いた。(先行調査では1:1.97)
これは楽観材料の一つとも言える。
ただし、前回のentryに書いたように、8月発表で予測されたペースを上回る頻度で発見されているのも事実。(ベラルーシのピーク前後に相当)

※→39人の先行検査はA1 19人、A2 18人、B 2人で、全員が先行調査も受診しているので、その後30mmまで増大したということ。

先行調査 113人(良性の1人を含む)
男性:女性 38:75(1:1.97)
年齢 17.3±2.7(8-22)
震災時 14.8±2.6(6-18)
腫瘍径 14.2±7.8(5.1-45.0)

本格調査(8/31発表) 25人
男性:女性 11:14(1:1.27)
年齢 17.0±3.2(10-22)
震災時 13.2±3.6(6-18)
腫瘍径 9.4±3.4(5.3-17.4)

本格調査(11/30発表) 39人
男性:女性 16:23(1:1.44)
年齢 17.1±3.2(10-22)
震災時 13.2±3.2(6-18)
腫瘍径 9.6±5.6(5.3-30.1)

第21回福島県「県民健康調査」検討委員会資料
http://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/21045b/kenkocyosa-kentoiinkai-21.html

福島県の甲状腺がん(11/30):本格調査で39人、推定発症率7.8人(補正後12.4)/10万 倍増は確実 2015年12月12日
http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/b244bf096d0d4f0d1a853a7101d9e47e

福島県の甲状腺がん(11/30):本格調査で39人、推定発症率7.8人(補正後12.4)/10万 倍増は確実

2015年12月12日 | 東日本大震災・原発事故
結論は8月発表と同じですが、予想を上回る割合で甲状腺がんが検出されています。甲状腺がん「確定+疑い」は、
8月 6+19=25人
11月 15+24=39人



単純に一次受診者数で割ると、発見率(有病率)は、
8月 14.8人/10万人(以下同じ)
11月 19.5人
先行調査からの受診間隔を2.5年と仮定すると、
8月 5.9人
11月 7.8人



一次受診者中の判定率と二次受診率で補正すると、
8月 10.4人
11月 12.4人
つまり、毎回の受診率で補正した以上に発見されているということになります。
補正前の「7.8人」、補正後の「12.4人」は、ベラルーシの1999年~2001年のピーク時に相当する数字です。



先行調査については今回の資料で新たな数字が出ていないので、前回(8月)の確定結果の数字を使うと、3.7人/10万人(スクリーニング効果を10倍として)ですから、補正前の「7.8人」の時点で倍増は確実と言えます。

前回も書いたように、この「10倍」という数字を大きくすれば本格調査との差が更に拡がることになるし、小さくすれば本格調査との差は縮まりますが、スクリーニング効果自体の意味がなくなり、先行調査の時点で多発と言わなければならなくなります。
(前回までスクリーニング効果の表現を「年数分」としていましたが、今回から単純に「何倍」かと書き改めることにしました)

同時に発表された「中間とりまとめ(案)」では、先行調査について「放射線の影響は考えにくいと評価する」としていますが、本来の目的である先行調査と本格調査の比較については全く触れられておらず、既に把握しているはずなのに意図的に隠そうとしているとしか思えません。
(これだけ単純な割り算で明らかになっているものですから、事務局も委員も当然把握しているはずと思われます。)

第21回福島県「県民健康調査」検討委員会資料
http://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/21045b/kenkocyosa-kentoiinkai-21.html

福島県の小児甲状腺がん 本格調査で「増加」が明らかに (業界紙掲載予定)

2015年10月09日 | 東日本大震災・原発事故
#ブログに掲載した内容を、県内の医師・歯科医師団体の新聞に掲載するためにまとめたものですが、最後のパラグラフは今回追加したものです。津田論文や県内における「先行調査での多発」論については時期尚早であり、最低でも三巡目の結果(あと2年半)を待たなければいけないと考えています。

「また甲状腺がんの話か」と思われるかもしれませんが、先行調査(2011~13年度)では「わからない」という結論だったものを、本格調査(14~15年度)で初めて「増加」の判断に転じたという重大な岐路に立っていると考えています。

 この判断はあくまで先行調査と本格調査の比較であり、脱原発派や一部の専門家が「先行調査で数十倍も増加」と主張しているのを支持するものではありません。

 本格調査の中間報告は2・5・8月に発表になっています。数字の詳細は県民健康調査HPに掲載されているので省略しますが、8月の時点で甲状腺がん「確定+疑い」が先行調査で112人、本格調査では25人に達しています。疑い例とは穿刺細胞診で陽性で、手術せずに経過観察している例であり、これまでの経緯からほぼ全例ががんだと考えて差し支えありません。



 有病率(発見率)と年間の発症率を推定してみます(単位は10万人あたり)。先行調査ではスクリーニング効果を10年分と仮定し、本格調査では受診間隔を2.5年とします。

 先行調査では有病率の1/10で発症率は3.7人、本格調査では有病率の1/2.5で発症率は5.9人と推定されます。ただし、本格調査で一次検診の判定率と二次検診の受診率まで計算に含めると発症率は10.4人と推定され、先行調査と比較して増加していることはほぼ確実です。(グラフは発表時の発症率の推移で、傾きには意味がありませんが、両グラフが交差することで増加と判断できます。)



 この数字をベラルーシと比較してみると、3.7人は小児の94~95年のピーク、5.9人は思春期の98~99年の急上昇期、10人は思春期の2000~01年のピークに相当します。



 これまで甲状腺がん患者が多数発見されてきた中で、①スクリーニング効果、②過剰診断・治療、③多発という3つの可能性が議論されました。8月発表の資料で、手術例のほとんどは従来の手術適応に沿ったものと報告され、②は否定的です。また、両調査は同じ方法で継続しているので、比較すればバイアスは相殺されます。①のスクリーニング効果を評価する手法が提起されていませんが、仮定とした10年という年数を短くすればスクリーニング効果自体が否定される方向になり、長くすれば本格調査との差がより大きくなってしまいます。残る可能性は③の多発ということになります。ここでその原因や因果関係まで論じることはできませんが、少なくとも原発事故との関連を否定することは不可能です。

 私たちは医師・歯科医師の立場から、社会に対する発言には責任が求められ、判断はより慎重であるべきで、数字を客観的に判断していくべき考えます。先行調査に対する安全・危険両派の主張には矛盾が存在するため判断は保留のままとしますが、本来の目的である本格調査における増加傾向には敏感に反応すべきと考えます。

 今回の推計で得られた傾向が今後どのように推移していくかを見通すことは困難であり、歴史的に確定するのは最低でも三巡目以降になると考えられます。

 調査に対する信頼が失われて受診率が低下していることも大きな問題であり、早期発見・治療のためにも、信頼性を高めて受診率を維持していくことが必要とされています。B判定の基準以下でも結節(+)の場合には受診間隔を短くすることも検討すべきです。

 6月に八戸で開催された高レベル放射性廃棄物シンポジウムについて詳報できませんが、日本学術会議の提言と山脇直司氏の『公共哲学からの応答 3・11の衝撃の後で』を共通理解のための基礎資料としてお勧めしておきます。再処理事業の認可法人化や、乾式貯蔵への交付金拡充など、先行きのない核燃サイクルを堅持するための姑息な政策が続々と打ち出されており、最終処分場選定は道を誤って早くも頓挫しています。国民の議論と同意、倫理、哲学なき政権が崩壊の道を辿ることは歴史の必然ですが、その際には子ども達や将来の世代に負の遺産が残されることになります。

福島の甲状腺がん患者、先行調査と本格調査の比較(2015.8) 男女差が少なくなったことが懸念材料か

2015年09月12日 | 東日本大震災・原発事故
メモですがここにアップしておきます。福島の甲状腺がん検診、先行調査(2011-13)と本格調査(2014-15)との比較。
本格調査の方が男女差が少なく、震災時の年齢が平均1.6歳若い。
年齢については先行調査でサイズの大きい年長児を多く検出していたことの反映と思われるが、男女差については3巡目を見ないとわからない。
腫瘍径は当然のことながら本格調査の方が小さい。

先行調査 113人(良性の1人を含む)
男性:女性 38:75
年齢 17.3±2.7(8-22)
震災時 14.8±2.6(6-18)
腫瘍径 14.2±7.8(5.1-45.0)





本格調査 25人
男性:女性 11:14
年齢 17.0±3.2(10-22)
震災時 13.2±3.6(6-18)
腫瘍径 9.4±3.4(5.3-17.4)



(図表は右クリックまたはcontrol+クリックで別ウインドウに拡大できます)

第20回福島県「県民健康調査」検討委員会(平成27年8月31日)資料
http://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/21045b/kenkocyosa-kentoiinkai-20.html

福島県の小児甲状腺がん2巡目で15→25人 発症率5.9~10.4人/10万(2.5年で)に上昇 「増加」は確実

2015年09月01日 | 東日本大震災・原発事故
8月31日の資料から、これまでと同じ表とグラフにして比較。
結論は前回(5月発表)の「増加ほぼ確実」と同じですが、
数字が上方にシフトして、
「発症率4.1~8.7人/10万人」から、
「発症率5.9~10.4人/10万」となっています。
(数字は小さい方が単純に一次受診者数で割ったもの、
 後者が一次の判定率と二次の受診率で割った予測数)
検討過程は前回のブログ(一番下のリンク)を参照して下さい。

第20回福島県「県民健康調査」検討委員会(平成27年8月31日)の資料
http://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/21045b/kenkocyosa-kentoiinkai-20.html


(右クリック等で別ウインドウ/タブに開けば拡大されます)

表の一番上の切れているところは先行調査(5月発表)。
今回の「先行調査(8月発表)」で、
「確定98+疑い13=111人」から、
「確定98+疑い14=112人」に1人増えています。
先行調査の数字は今回で確定。
(経過観察後の数字が変わる可能性はあると思いますが)

有病率の37.1人(10万人あたり)を「スクリーニング効果10年分」で割った数字が3.7人/10万。(先行調査における推定発症率)

本格調査は、
「確定5+疑い10=15人」から、
「確定6+疑い19=25人」に増加。

これは検査が進んだことに伴うものですが、
有病率(※)は10.1人から14.8人に上昇し、
(※一次受診者数で割った数字/10万人あたり)
受診間隔の2.5年で割った推定発症率(10万人あたり)も、
4.1人から5.9人に増加しています。

グラフはこの数字をプロットしたものです。


ただし、<一次判定者数/一次受診者数>が90.7%、<二次受診者数/B+C判定者数>が62.7%の段階のため、それぞれ100%になったと仮定した予測数が大きい方の数字。
同様に受診間隔2.5年で割った推定発症率(10万人あたり)も、
8.7人から10.4人/10万人に上昇。
(この数字はグラフには入れてません)

「増加がほぼ確実」という根拠は、本格調査のグラフが(前回の段階で)先行調査をまたいで更に高くなるのが確実だと判断できたからです。(実際に今回のデータで予想以上に増加している)

この4とか6とか8とか10という数字が何を意味するかというと、ベラルーシのグラフと比較して、


4人は小児(0-14歳)の95年頃のピーク
6人は思春期(15-18歳)の98-99年頃の急上昇期
10人は思春期の2000-01年頃のピーク
に相当する、ということです。

(以下は過去の記事のリンク)

甲状腺がん8→15例(5/18) 発症率4.1~8.7人/10万人(2.5年で) 「増加」はほぼ確実に 2015年06月03日
http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/9484f13f2d01ec85504b104e500d079d

福島県甲状腺がん 本格調査>先行調査の経緯を発表時の数値で検証してみた 2015年06月05日
http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/75c50cf497db6f29a441efd93159cbd1

福島県の小児甲状腺がん推定発症率をグラフ化/ベラルーシとの対比 DAYS JAPAN記事へのコメントも 2015年07月09日
http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/0acad3271c15441a0ad84aec88d1dc8d

福島県の小児甲状腺がん推定発症率をグラフ化/ベラルーシとの対比 DAYS JAPAN記事へのコメントも

2015年07月09日 | 東日本大震災・原発事故




ベラルーシのグラフの引用元は、
児島龍彦:チェルノブイリ原発事故から甲状腺癌の発症を学ぶ.医学のあゆみ, 231(4): 306-310, 2009.

このグラフは、5月までに発表になった福島県の小児甲状腺がん=細胞診で「疑い」+手術で「確定」の人数を一次検診受診者数で割った数字(受診集団のその時点での有病率)を、先行調査ではスクリーニング効果を10年と仮定して10で割り、本格調査では受診間隔の2.5年で割ったものです。

解釈とコメントについてはブログ既報(その1)
1)甲状腺がん8→15例(5/18) 発症率4.1~8.7人/10万人(2.5年で) 「増加」はほぼ確実に 2015年06月03日 http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/9484f13f2d01ec85504b104e500d079d

解釈とコメントについてはブログ既報(その2)
2)福島県甲状腺がん 本格調査>先行調査の経緯を発表時の数値で検証してみた 2015年06月05日 http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/75c50cf497db6f29a441efd93159cbd1

本格調査の受診間隔を2.5年としたが、2年間隔の人が多いはずなので過小評価している。その理由は「なるべく低く見せたいから」ではなく、過小評価しても高く出るなら確実に増加と判断できるから。。スクリーニング効果の「10年」については誰も言及していないが、仮定としては適当な数字だろう。

グラフの傾きは増えているスピードとは全く関係なく、検診が順調に進んで「疑い+確定」の人数が明らかになっていることを示しているだけ。時間がたてば先行調査のようにプラトーになっていく。ただし、本格調査のグラフがクロスして更に上に向かっていることで「増加」と読み取れる。

前記ブログにも書きましたが、本格調査は5月の時点で、
一次判定率 121997/148027=82.4%
二次受診率 593/1043=56.9%
であり、かけ合わせると46.9%
単純計算で、8.7人/10万人という発症率になる。

比較対象としている2枚目のグラフがベラルーシの甲状腺がん発症率。先行調査の3.7、本格調査の4.1という現時点での数字が、ベラルーシの95年の小児と思春期に相当するレベルになっている。本格調査で予想される「8人」という数字はベラルーシの思春期の2000年頃に相当。

この増加傾向が3巡目、4巡目にも続いていくのか、低下するのか、誰にもわからないが、現時点での判断は「先行調査でも多発、本格調査で更に増加」か「先行調査は判定不能、本格調査で増加」のどちらかで、「先行調査では増えていない」と断言することは不可能。

DAYS JAPANの特集記事は、この本格調査(2巡目)ではなく、先行調査の111人(確定98人+疑い13人)=記事では手術して良性だった1例を含めて112人について、評価部会のまとめで「数十倍のオーダーで多い」と触れられた点について、

比較は津金氏が第4回評価部会に提出した資料「2001-2010 年のがん罹患率(全国推計値)に基づくと、福島県において18 歳までに臨床診断される甲状腺がんは2.1 人(男性0.5、女性1.6)、受診率は約80%なので受診者集団からは約1.7 人」
http://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/21045b/kenkocyosa-kentoiinkai-b4.html

この1.7人と112人を単純に比較すると、65.9倍。これを「統計の性質上は試算なので『数十倍のオーダー』と丸めた」とのこと。津金氏は「スクリーニング効果だけで解釈することは困難」「別の原因があると解釈する方が合理的」「過剰発生か、過剰診断のいずれか」「個人的には後者と…」

過剰診断でないかどうか、宮内昭医師はいずれも手術適応通りで過剰診断ではないと。この点はそうだろうと思っていた。一人一人の患者さんについて、この子はスクリーニングから来たからとか、症状で発見されたからといって判断を変えるわけがない。医師ではない火山学者まで口を挟んでいたが。

清水一雄医師へのインタビュー(おしどりマコ氏)は面白い。同様に「過剰診断ではないことは診たものが一番わかっている」と。3県の調査(2012)についても、県全体のような調査を提案したが却下された」。地の文でも判定割合だけでなくがんの発生を調査しなければと。ここがポイント。

山下俊一「検査で発見されたのは、原発事故とは直接的な関係が無い『自然発症の小児甲状腺癌』であり、前述の通りスクリーニング効果であると評価しています」首相官邸(平成26年2月12日)
http://www.kantei.go.jp/saigai/senmonka_g62.html

第19回福島県「県民健康調査」検討委員会 配布資料
http://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/21045b/kenkocyosa-kentoiinkai-19.html
甲状腺検査に関する中間取りまとめ [PDFファイル/183KB]
http://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/115335.pdf

前述のように「本格調査が先行調査を大きく上回りそう」で、現時点での判断は「先行調査でも多発、本格調査で更に増加」か「先行調査は判定不能、本格調査で増加」のどちらか。DAYS JAPAN記事、評価部会まとめでも「先行調査の多発は過剰発生か過剰診断」。だが過剰診断は否定的。

本格調査で気になる要因は、受診率の低下がバイアスになる可能性。不信感から県の検診を受診せずに他の医療機関を受診している人も相当数いるようだが、その影響で高く/低くなる可能性はあるだろうか。検診不要説は排除された。不信感は別にして、まずは受診し続けないと。。

「低線量でも白血病リスク 国際がん研究機関」記事の「1mSvで相対リスク千分の3上昇」の意味を読み解く

2015年07月04日 | 東日本大震災・原発事故
「低線量も白血病リスク」の記事、流して読んだのでは理解できない。
1mSvで相対リスク(RR)が3/1000上昇の意味をチェックしてみる。
(未検討にてこのtogetterから)
2015.7.2報道【 疫学調査:低線量でも白血病リスク 国際がん研究機関】について マキノさんのツイートまとめ
http://togetter.com/li/842180

Jun Makino ?@jun_makino 7月2日
http://t.co/RnBRf85jSv
論文はこれ

元論文のサマリー
CLLを除いた白血病の過剰相対リスク(ERR)は1Gyで2.96(100mSvで0.3)これが「1mSvで3/1000上昇」という過小に読み取れる数字の意味。特にCMLではERR 10.45/Gy

Interpretation This study provides strong evidence of positive associations between protracted low-dose radiation exposure and leukaemia.
かなり強い調子。記事と印象が違う。

過剰相対リスク(ERR)と過剰絶対リスク(EAR)については、ここにまとめてあるので参考にして下さい。
「1Gy被曝でがん死リスク42%増」の意味 LNT仮説が「哲学ではなく科学」であることは明白 中川恵一批判 2012年03月19日
http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/2ad492da4a74ac761c45ccfd75842712

2012年の「CTによる白血病と脳腫瘍増加」の論文についてはこちら
「子どもに関しては楽観しない方が良い」鹿児島大・秋葉教授「小児の放射線被ばくと健康への影響」を聴いて 2012年07月04日
http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/9ec609b8405eb63f731ecaddc66b46ea

2012年の「CTによる白血病と脳腫瘍増加」の論文
過剰相対リスク excess relative risk [ERR] ERR=RR-1
 白血病 0.036/mGy
 脳腫瘍 0.023/mGy
相対リスク relative risk [RR] <5mGyと比較して
 白血病 30mGy以上 (平均51.13mGy) で3.18
 脳腫瘍 50-74mGy (平均60.42mGy) で2.82
(1mGy=1mSv)

小児のCT被曝による
 白血病の過剰相対リスク 0.036/mGy=36/Gy
今回の成人原発労働者
 CLLを除いた白血病の過剰相対リスク 2.96/Gy
小児のCT被曝の方が10倍以上高い…

(しかし中川恵一の「LNTは哲学」というのは哲学を随分馬鹿にした発言だな、今読み返してみても。。哲学はサイエンスではなく机上の空論だとでも。。そもそも科学が仮説で成り立っていることすら忘れている)

元の白血病リスクに戻る。
原発労働者で2.96/Gy=0.3/100mGyというのは
被曝がなくて白血病になるのが0.3%だとすると、100mSvの被曝で1.3倍=0.39%になる。0.09%の増加(EAR)。
(この数字は検討のための仮定の数字。白血病の自然の発症率を調べていないが、元の数字が低いのでERR0.3/100mSvとは言っても見かけ上は低そうに見えてしまう。)

LNTの説明で使われるのは全がん死が100mSvで0.5%(EAR)増加。
全がん死が30%だとしたら30.5%になる「だけ」というのが中川理論。
今回は白血病だけだから、この値とは直接比べられないし、確かにこれまでのLNTの数字を書き換える必要があるデータではなさそうだが。

記事の元グラフ
100mSv未満では90%信頼区間が1.0以下にかかっているので統計学的に有意ではないが、その直線が<300mGyと全体の直線に一致していること。(広島・長崎のLSSでも同じ)
LNTはほぼ確実に証明。
<img src="http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/20/1b/df11638e90eb500062ad2dbe6895a62a.png">

低線量でも白血病リスク 国際がん研究機関 毎日新聞2015年7月02日 http://mainichi.jp/shimen/news/20150702dde041040015000c.html
「ICRPは100mSvを超すと発がんリスクが高まると指摘。それより低い線量では、健康影響を懸念する専門家と心配ないとする専門家で意見が分かれている」これが結論?

100mSv未満の低線量被曝でも、今回のデータや2012年の小児CT被曝(白血病・脳腫瘍)などで証明が積み重ねられており、「心配ないとする」専門家の見解を支持するエビデンスはない。この記事の記載(千分の3程度上昇などという過小表現も含めて)はミスリーディング。

昨日のまとめだが、記事にある原発労働者だけでなく「子どもの白血病のリスク」を注視する必要がある → 「低線量でも白血病リスク 国際がん研究機関」記事の「相対リスク千分の3上昇」の意味を読み解く http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/875129890a6792dc4568aba5814e1ed0 (このentry)

2013年12月号(既読だが読み返してみる)
RT
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study2007 @study2007
岩波「科学」12月号 http://www.iwanami.co.jp/kagaku/
◎「子どもの外部被ばくと全がんおよび小児白血病リスク」(study2007氏)は、外部被ばくがもたらすリスクが、現実の福島県各自治体でどれほどのものかを見積もります。(続)
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福島県甲状腺がん 本格調査>先行調査の経緯を発表時の数値で検証してみた

2015年06月05日 | 東日本大震災・原発事故
2013年2月に甲状腺がん確定3疑い7合計10人で大騒ぎしてから2年あまり、2014年の本格調査開始から1年が経過したところで、これまで発表された数値を時系列で検証し、本格調査で「増加」と判断した根拠をお示しします。


(表は詰め込んでいて見にくいが必要分だけ抽出してスクリーニング効果の年数と、本格調査の方は前回調査からの間隔で数値を出してみた→別ウインドウで表だけ開くと拡大)

1)先行調査 確定+疑い(緑色)は10人から111人まで増えた。当初の予想どおり、細胞診での疑い例のほとんどは手術でがんと確定された。(残りも経過とともにそうなる見込み)

2)先行調査の有病率(単純に一次受診者数で割ったもの/10万人あたり)も二次検診が進むにつれ増加し、20人前後から37人まで増加。(赤色)

3)スクリーニング効果を10年とすると、年間の発症率は2.0→3.7人(10万人あたり)に上昇し、ベラルーシの1995年に相当。(水色)

4)本格調査 確定+疑い(緑色)は4→8→15人に増加。

5)有病率(赤色)は10.1人(10万人あたり)で、先行調査4分の1を超えてきた。

6)検査間隔を2.5年と仮定した場合の年間の発症率(水色)は4.1人(10万人あたり)で、スクリーニング効果10年とした場合の先行調査の3.7人を上回ってきた。

7)一次判定率や二次受診率がまだ低いので、この数字は8人程度まで上昇する可能性が高い。(ベラルーシ95年の2倍程度)

8)一次受診者中のBC判定の割合を見ると、0.7%程度で先行調査にほぼ匹敵する数字になってきた。

今後の発表データをみていかないと断定的なことは言えないが、少なくとも「増加していない」と判断することは不可能。

甲状腺がん8→15例(5/18) 発症率4.1~8.7人/10万人(2.5年で) 「増加」はほぼ確実に

2015年06月03日 | 東日本大震災・原発事故
過去の記事(一番下に列記)も読み返してみましたが、一貫して「わからない」という判断だったものが、今回初めて「2巡目での増加はほぼ確実」という判断に転じました。

データはチェックしてFBに載せてましたが、ブログでの解析が遅くなりました。解析といってもあくまで表面的なものですが、誰もやってくれないし、誰の意見もあてにできません。資料をパッと見てもわからないし、継続して比較することが肝要。

第19回福島県「県民健康調査」検討委員会資料(平成27年5月18日開催)
http://www.pref.fukushima.lg.jp/site/portal/kenkocyosa-kentoiinkai-19-siryo.html


抜き出してまとめた表。(クリックして別ウインドウで拡大)

一番上の行(その上が切れている)は先行調査の前回分(2月)。
赤の有病率36.5が、今回(5月)37.1人/10万人になった。
 2月発表 確定86+疑い23=109人
 5月発表 確定98+疑い13=111人
この差には特段の意味はない。

これを、(これまでと同じ前提で)スクリーニング効果10年分とすると、発症率は3.7人/10万人。
(スクリーニング効果10年分が正しいかどうかはここでは論じない。あくまで仮定の数字としてこれを基に比較するための数字)

福島の甲状腺がん 2巡目で4人 発症率1.9~4.9人/10万人(2.5年分) ベラルーシ95年に相当 2014年12月27日
http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/478ebf3d0fad4878507b9afc0fe0064b
これも比較のために毎回用いているベラルーシの95年は、0-14歳が4.0、15-18歳が3.8、19-34歳が1.4。

先行調査の3.7とはベラルーシの95年に匹敵する数字。
2014年の12月ですでに2巡目もそのラインを超えてきていた。

本格調査(2014~2015)
 2月発表 確定1+疑い7=8人
 5月発表 確定5+疑い10=15人
 有病率 7.5→10.1/10万人

検査間隔を2.5年とすると、
発症率は、
(8×10万)/(106068×2.5)=3.0人(10万人あたり)
(15×10万)/(148027×2.5)=4.1人(10万人あたり)

一次検査の判定率や二次受診率を考慮しない段階で、先行調査を上回っている。

この二つを考慮に入れてみると、
 一次判定率 121997/148027
 二次受診率 593/1043
それぞれひっくり返してかける(=割る)

15/148027×(148027/121997)×(1043/593)×(10万/2.5)=8.7人(10万人あたり)

2014年12月の時点で発症率1.9~4.9人/10万人と言っていたものが、今回(2015年5月)は発症率4.1~8.7人/10万人に倍増。

これが4→8→15人の意味。
(単純に数が増えたと情緒的に怒っていてはいけない)

この「発症率4~8人」が「先行調査と同じ」だと仮定すると、先行調査(有病率37人)のスクリーニング効果は5年程度ということになるが、
5年と仮定すると、先行調査の発症率は、
 37/5=7.4人
となって、ベラルーシ95年の2倍近い数字になり、先行調査の時点で多発だということになる。

スクリーニング効果をあれほど喧伝したのだから、最低でも10年分はあると仮定して考えるのが普通。
(この仮定の数字を誰も言ってないので議論が噛み合わない)

だとしたら、今回の「発症率4.1~8.7人/10万人」は、先行調査の「発症率3.7人/10万人」との比較では「増加」は間違いないだろう。

ただし、この「増加傾向」がこの後の3巡目以降も続くかどうかはわからないし、今回のデータも年齢分布や、被曝線量、地域などでの比較が必要だろう。

そこまで調べる能力も時間もないが、大雑把な「先行調査と2巡目の比較」という数字だけで、ここまでは推論することができる。

最終的には、3巡目以降、おそらく10年は要するだろう。
その間に何かできることがあるなら別だが、それが考えられない現在、調査結果を毎回チェックしていくしかない。

肝腎なのは、検診の受診率が低下してしまっては何もわからなくなること。政府や県に不信感があるならなおのこと、検診を受けてデータを明らかにすべき。
わかってもらえるだろうか。

14) 福島県の甲状腺がん「2巡目で1例確定が大事件なのか」を考えてみる 2015年02月15日
13) 福島の甲状腺がん 2巡目で4人 発症率1.9~4.9人/10万人(2.5年分) ベラルーシ95年に相当 2014年12月27日
12) 福島県の甲状腺がん検診 確定57+疑い46=103人に 3年目の増加で懸念は減少 実施基準に疑問も 2014年08月25日
11) 福島の甲状腺がん「確定49+疑い40=89例」 増えたこと(2年目)も増えないこと(3年目)も懸念材料 2014年05月20日
10) 福島県の甲状腺がん検診「スクリーニング効果は試算してから論じるべき」「なし~30年で比較」 2014年04月08日
9) 福島の甲状腺がん「確定32+疑い42=74名」 3年目は低くなりそうだが、懸念材料にも… 2014年03月06日

過去の記事(2013.3-2013.11)

1) 福島の甲状腺がん検査の患者数は? 感度・特異度により3人?12人? (応用できる一般式付き) 2013年03月18日
2) 福島県外3市と福島県内の甲状腺検査結果の比較 考えられる推論2つはいずれも不可解 2013年04月03日
3) 福島の甲状腺がん検査の患者数の推計式を感度・特異度でグラフ化してみました 2013年04月04日
4) 「福島の小児甲状腺がん:確定12人、疑い15人」のニュースについて(現時点での判断) 2013年06月05日
5) 福島県の小児甲状腺がん:7~15人(確定~疑い)/10万人:2012年は2011年より減少傾向か:判断は数年後 2013年06月06日
6) 福島県の甲状腺がん検診結果をどう読むか 発生率1~2人/10万人はベラルーシと同じ(某紙掲載原稿) 2013年06月11日
7) 福島の甲状腺がん18+25=43例 発生率は2-3/10万人に増加 二次実施者中の割合は変わらず 2013年08月21日
8) 福島の甲状腺がん「確定26+疑い32=58名」発症率は約3人/10万人で8月と同じ。判断は出来ず(11/12) 2013年11月13日

『地下水は語る 見えない資源の危機』守田優著

2015年04月24日 | 東日本大震災・原発事故
#図書館で借りた本のメモです。広瀬隆氏の首都圏地下水汚染説(福島から首都圏に流れて行っている)批判のために読んだはずなのですが、まとめる機会を逸していました。(2013年11月)

『地下水は語る 見えない資源の危機』守田優著

用語

不圧地下水 上部に加圧層がない 民家の浅井戸や崖下の湧水の元
加圧粘土層
被圧帯水層 被圧地下水

沖積世 最終氷期の最盛期にあたる1万8000年前以降。
沖積層 気候が温暖化して海水面が上昇し、堆積作用によって海岸平野が形成された。沖積平野。関東平野、大阪平野、濃尾平野など。
東京低地では有楽町層という沖積層が平均30mの厚さで被圧帯水層を覆っている。
沖積平野の表層(沖積層)は軟弱地盤としての特徴をもつ。表層収縮の主体。

洪積層 第四期(約260万年前から現在まで)の初めから最終氷期までの時期につくられた地層。沖積層より厚く、固く締まっている。
粘土・シルトや砂・砂礫、さらにはローム層のような火山噴出物などからなる。
洪積層という用語は現在では使われていない。

洪積台地 最終氷期までの洪積世に形成された扇状地、三角州、海岸平野などの平坦な面が、その後の海水準の低下、あるいは地殻変動によって隆起してつくられた地形。武蔵野台地など。

武蔵野台地
不圧帯水層 ローム層・段丘礫層
被圧帯水層 上総層群・東京層群 間に難透水層
武蔵野台地では不圧帯水層と被圧帯水層が接している。

第4章 環境としての地下水

共有資源としての地下水

エリノア・オストロム教授 2009年ノーベル経済学賞
共有資源のガバナンス
河川水、地下水などの水資源、森林、魚、牧草などの個人や組織が共同で使用し管理する資源
コモンズ Commons
共有資源の管理のための有効な方法は、「国家による解決」でも「市場による解決」でもなく、セルフ・ガバナンスという第三の道であるとした。
共有資源に利害関係をもつ者(ステークホルダー)が自主的に適切なルールを取り決めて保全管理する方法
持続可能な地下水管理は、共有資源のセルフ・ガバナンスによってのみ可能
結果として、豊かできれいな地下水を将来の世代に残すことができる

原発事故による地下水の放射能汚染

産業技術総合研究所「福島県の地下水環境」2011年4月6日
(探したが原文を入手できない)

表層(m層) 土壌と砂礫・砂・泥の入り混じった 5m
泥質岩層(Dm層) 難透水層 20m
砂質岩層(Ds層) 主要な帯水層 200m
地層は東に傾斜

汚染水が深部の砂質岩層まで到達することはない 地下水汚染は表層部に限定される
地下水の流速は、地下水が汚染された表層では1日に1cm程度

汚染経路を明確に特定する必要があるが、大局的には広域まで影響を及ぼすことはない、と結論

原発による地下水汚染の今後

地層の平均的なマクロな流れと汚染水のミクロな流れとは区別しなければならない
汚染水は流れやすい「水みち」を通り、流速は速くなる
「汚染経路を明確に特定する必要がある」とは、このことを意味している

井戸の遮水工に欠陥があると、汚染水が下方に漏れる可能性もある

放射性物質は数百キロメートルの範囲に飛散
降雨によって土壌を汚染し、さらに地下水を汚染する
微量であっても無視することはできない

今後、地下水汚染のリスク管理という観点から、原発周辺の詳細な水質のモニタリングが必須である

地下水は一度汚染されると回復が困難である。
地下水汚染のリスク管理としては、何よりも汚染源の適切な隔離と除去が最優先されなければならない。

繰り返す「国家の暴走を止められない歴史」戦争、原発、タバコ (某所掲載予定原稿)

2015年04月01日 | 東日本大震災・原発事故
「先の大戦、水俣病、薬害エイズ、原発事故などの歴史を見ても、この国の政府が合理的かつ国際的な判断の元に、国民の命を優先する政策に転換することを待つ猶予はない。国を置き去りにして現実を前に進めていくしかない」。これは原発・核燃問題ではなくタバコ問題について某所に書いた文章の一部だが、両問題は全く同じ構造にあり、安部政権下で政策転換が起こる可能性はない。

 いかにして「国を置き去りにして前に進めるか」が問題だが、原発ゼロ路線を選択した独伊だけでなく、米国では経済性による原発撤退が相次ぎ、仏アレバ社は4年連続の赤字、フィンランドの原発建設は費用高騰で見通しが立たず、未だに原発推進を掲げる主要国は日中韓露のみ(日露は重大事故の当事国)というのが現実である。この4国はタバコ大国という点でも共通しているが、すでに中韓露はタバコ規制政策に転換している。

『プロメテウスの罠8』によると、89年にベルリンの壁が崩壊して冷戦が終結した後に、今上天皇は「これでチェルノブイリみたいなことは起こらなくなるだろう。壁がなくなって情報の流れがよくなり、何が起こったか分からないうちに大変なことになってしまうようなことは、もうなくなるのではないか」と侍従長に述懐されたという。その22年後に自国で起きた原発事故と政府の情報隠しに何を思われたであろうか。

 匿名官僚作家による『東京ブラックアウト』では、天皇自身がセリフを持った登場人物として描かれ、フクシマより酷い事故の際に誰が収束させるのかと規制庁長官に問いつめ、原発再稼働に深刻な懸念を表明される。その懸念は現実となり、国民からの請願書一通一通に深夜まで目を通し、衆院議長に重大な決断を伝えるが…。これは全くの空想小説ではなく、前作『原発ホワイトアウト』と同様に半分は現実で、残りの半分も「現実に起きてもおかしくない」範囲での創作として読むべきであろう。

 今上天皇が皇太子時代から憲法の平和主義と象徴天皇制を具現化するために、諸外国との友好や、国民(特に被災者)と共にあることに心を尽くしてきた歴史は誰もが知るところであり、それが現在の圧倒的な皇室支持につながっている。「日本国民の総意に基づく、日本国と日本国民統合の象徴」という理解し難い概念を、永年の言動と存在で身を持って示されてきた。そうやって積み重ねてきた平和国家の礎が、「戦後レジームからの脱却」という一言で葬り去られ、「軍事活動の拡大による世界平和維持」という全く異質の国家像へと造りかえられようとしている。

「満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び,今後の日本のあり方を考えていくことが,今,極めて大切なことだと思っています」という新年の挨拶は、大元帥であり大権を保持していた昭和天皇でも国家の暴走を止められなかった歴史の教訓を、首相を含む国民一人一人が「今」まさに学ぶべきという、従来の慎重な発言から踏み出した「極めて」異例の強いメッセージであり、これを政治的発言と捉えるべきではない。

 冒頭の問いに対し、推進か反対かではなく、幅広い市民による公論形成を基とした、普通の人々が納得できる実現可能な「撤退・生き残り戦略」が求められているが、現実の動きには結びついていない。元経産閣僚の古賀茂明氏による「改革はするが戦争はしない」を基本理念とする「フォーラム4」には、改革の内容を検証しつつ注目していきたい。

(某業界団体新聞に掲載予定の原稿:紙幅の関係で最後の段落は説明不足ですが)

官房長官は正しくても間違っていても「事実に反する、極めて不適切」と言う。原発事故の教訓を忘れたのか?

2015年03月31日 | 東日本大震災・原発事故
古賀さんが間違っていれば官房長官は「事実に反するコメント、極めて不適切」と言うけど、古賀さんが正しくても官房長官は「事実に反するコメント、極めて不適切」と言う。それくらいのメディア・リテラシー(オツムの中味)すら震災後4年で失ったのか。。

震災直後「何を信じたらいいのかわからない」という人に対し、「誰が言っていることか」と「お金・利権の流れを理解すること」の二つを判断基準とすべきと言った(はず)。「誰が」というのはそれまでの発言や行動から信ずるに足りるかということ。「お金・利権」は追加説明不要かと。

古賀氏への報ステ官邸バッシングの元はこれ。インタビュー全体は素人でも理解できる極々当たり前の内容。

古賀茂明氏が語る「I am not Abe」発言の真意 2015年2月2日
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/156835/

「官邸の秘書官筋からテレビ朝日の上層部に抗議の電話が入り、大騒ぎになったとか」「局に対してはいろいろな声があったようですが、僕には直接ありません」これだけでは真偽はわからないが「何もなかった」と想像する方が奇特。この政権なら不思議ではない

前述の二つの基準から古賀発言を考えてみると「お金・利権」では古賀氏には(少なくとも現時点では)利得はなく、官房長官(安倍首相)は否定しないと失うものが大きい。「過去の言動から信ずるに足りるか」で古賀氏と菅官房長官のどちらを信じるか。それはあなたの判断にまかせます。(twitterへの投稿の再掲)