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福島県の甲状腺がん検診結果をどう読むか 発生率1~2人/10万人はベラルーシと同じ(某紙掲載原稿)

2013年06月11日 | 東日本大震災・原発事故
 今年2月に「福島県で甲状腺がん確定3人、疑い7人」という報道がありネット上でも大きな議論になったが、6月に入って「2年間で確定12人、疑い15人」という新たな数字が公表され波紋を呼んでいる。

 福島県の検討委員会では、チェルノブイリとの比較や年齢の高さなどから、原発事故の影響ではなく大規模な検診により早期に発見された「スクリーニング効果」であるとの見解を崩していない。本当にそれで何の疑問もないのか、数字を元にして検討してみたい。


(表1)福島県の県民健康管理調査「甲状腺検査」結果

 まず、この疑い例の解釈について、感度と特異度を変えてシミュレーションしてみたところ、穿刺吸引細胞診の特異度は十分高く(偽陽性は少ない)、感度は少し劣る(偽陰性あり)と考えると、疑い例のほとんどは甲状腺がんだと推計することができる。実際に、11年度の確定例は3例から7例に増えており、経過観察中の15例の中からも今後確定例が出て来るものと予想される。

 初年度と2年目の有病率を比べると、疑い例を含めて10万人あたり27人から12人に減少しているが、二次検診受診者からの検出率は約6%で同程度であり、受診率が上がれば有病率も上昇する可能性が高い。初年度は浪江町などの避難地域が、2年目は福島市などの中程度汚染地域が対象となっているが、汚染レベルとの関連は明らかではない。従来の常識では、原発事故から1年以内に増加してくることは考えにくいが、3年目の低汚染地域の結果を見てみないとまだ安心できない。

「従来の100万人に1~2人の発生率と比べると…」という議論も散見されるが、発生率と有病率を区別して考える必要がある。有病期間を10年と仮定して、スクリーニング効果により10年分まとめて発見されたと考えると、発生率は10万人あたり1~2人程度となり、従来の約10倍という推計になる。この数字は、ベラルーシで90年代初頭に甲状腺がんが急増していた時期と同じレベルだということに注意が必要だ。


(図1)甲状腺癌のベラルーシにおける発見率

 一方で、弘前・甲府・長崎3市における一般小児の超音波検査でも福島と同程度の頻度で嚢胞や結節が検出されており、検討委員会では「福島は安全だ」ということの根拠としているが、この結果と甲状腺がんの発見状況を矛盾なく説明することは難しい。

 いずれにせよ、二巡目以降の傾向を見てみないと判断はできない。現時点で、甲状腺がんの予想外に多い発見状況に対して、放射線被曝が原因だと大騒ぎすることには賛成できないが、この結果を受けても「チェルノブイリは4年目から増加したから…」「チェルノブイリとは被曝量も違うしヨード環境も違うから…」原発事故と関係ないと断定することの方が非科学的だと言わざるを得ない。

 問題の根源には「避難の必要なし」として適切な情報提供をせずに被曝回避策を怠った行政や医学者が、舌の根も乾かぬうちに「原発事故とは関係ない」と言っても何の信頼も得られないという現実がある。

 チェルノブイリでは甲状腺がん以外のがんや他の疾病には影響がなかったことになっているが、ヤブロコフ博士の『チェルノブイリ被害の全貌』によれば、無視できない健康影響が現在も続いていることは間違いなさそうだ。日本でも同じことが起きるというわけではないが、もし何らかの変化が生じたとしても、現在の態勢では検知することは難しい。

「脱原発を実現させたい運動家が福島の子どもたちに健康被害が出ることを願って騒いでいる」などという言説が医師の間からも出ていることを憂慮している。結果的に何の健康影響も無ければそれに越したことはないが、冷静に考えれば、放出された放射能の総量と被曝人口を考えると、全く何も無いという前提に立つことはあり得ない。甲状腺検診もそのような観点から実施されているはずだ。

 もし二巡目以降に増加傾向が明らかになったと仮定して現時点に立ち戻って考えてみても、被曝を避ける一般的な注意以外には、やはり検診を進めていくことしか無さそうだ。しかし、積極的に避難を勧める時期は過ぎたとしても、除染・帰還を推進する政府に対して、子どもを持つ親には予防原則に従って慎重な立場を崩さないでほしいと強く願う。

(青森県保険医協会新聞の「核燃リレートーク」に掲載予定)

福島県の小児甲状腺がん:7~15人(確定~疑い)/10万人:2012年は2011年より減少傾向か:判断は数年後

2013年06月06日 | 東日本大震災・原発事故
昨日の続きです。
資料が掲載されたのでそちらの数字で計算し直してみました。

福島県 第11回「県民健康管理調査」検討委員会(平成25年6月5日開催) 
http://wwwcms.pref.fukushima.jp/pcp_portal/PortalServlet?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=24809#10kentouiinkai

概要(数字が間違っていたので訂正しました)

2011年度 40764 細胞診82 確定7 疑い4 合計11 良性1
2012年度 134735 細胞診63 確定5 疑い11 合計16
合計 175499 細胞診145 確定12 疑い15 合計27

頻度(受診者10万人あたり)

2011年度 7.9~26.2人(2月発表の時点)
2011年度 17.2~27.0人
2012年度 3.7~11.9人
合計 6.8~15.4人



端数が少し変化しているだけで、昨日書いた計算とほぼ同じです。
4月に書いた「1万人あたり1~3人程度のレンジ」と比べると、2011年度は確定診断が増えたが全体では3人未満、2012年度はいずれも2011年度を下回っている。
(2012年度は二次検査の受診率が低いので今後もっと増える可能性が高い)
全体の受診数が増えたので、平均値も低下。

これが多発なのか、潜在的ながんをスクリーニングでまとめて早期発見しただけなのか、どちらにしても不可解。これは4月に書いた通りです。

→福島県外3市と福島県内の甲状腺検査結果の比較 考えられる推論2つはいずれも不可解 2013年04月03日
 http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/46d539e4482351e8ee38cd08c4f56e8a

判断は結局のところわかりません。
昨日の記者会見でも「今までにないのもと比較しろと言われても言えない」と答えていたように、今後の推移、特に2巡目の検査で今回A判定だった人の中から甲状腺がんが増えてくるかどうかをみないと何とも言えない。





(追記)

福島の小児甲状腺検査:現時点では被曝との因果関係や多発を主張する根拠は乏しい。しかし、最初から被曝の影響ではないバックグラウンド値という前提はもっと非科学的。結局、検査結果の推移を見ていくしかない。これが当たり前の考え方。

元々、一人ひとりについて因果関係を証明することは出来ない。しかし、因果関係の有無に関わらず子どもの健康に何かあれば親が自責の念に苦しむことは目に見えていた。だから避難を訴えた。これは事故直後の話。

いま甲状腺がんが発見された子どもの親は、被曝とは関係ない(明らかな因果関係は認められない)と説明されて、そう思うことで自分を納得させようとしているはず。とは言っても、頭で納得しても、ときどき溢れてくる感情まで抑えるのは難しいだろう。

一つの仮説として、1年目、2年目、3年目と線量の低い地域に移るにつれ、頻度が低下する傾向が見えてくるとしたら、2巡目以降に新たな甲状腺がん発生が増えてくる可能性がある。これが否定できるなら良いのだが、それを知るためには何年も待たなければいけない。

(しかし、タバコとのリスク比較の間違いを指摘した時もそうだったし、瓦礫問題以来、この甲状腺検査騒ぎも、危険・安全・中立いずれの人にとっても有害無益になっている。なまじfollowerや信奉者が多いだけに厄介。)

(更に追記)

福島の小児甲状腺がん:有病率「1万人あたり1~3人程度のレンジ」を注目しながら、というのは、この福島の調査から今後の推移をチェックするための目安という意味で、普通に考えれば高すぎる数字。

有病期間10年とすると有病率「1~3人/1万人(10~30人/10万人)」は発生率「1~3人/10万人」に相当する。これはベラルーシの1990年代前半の発生率。それが福島の今だというのは理解不能。

忌野清志郎『メルトダウン』のオリジナルの歌詞を読み直す

2013年06月06日 | 東日本大震災・原発事故
忌野清志郎&2・3's「メルト・ダウン」
http://www.youtube.com/watch?v=AWWrPboyMzs

1993年発表の「Music From POWER HOUSE」収録の問題曲。
このCDにはもう1曲「善良な市民」という面白い曲も収録されている。

問題の「メルトダウン」だが、各種歌詞サイトをみると、オリジナルの歌詞と細かいところが随分違っている。
神様仏様のくだりはほとんど省略されている上に、オリジナルにないキリスト様なんてのが入っていたり。。
意図的な改変や省略か、あるいは本人が改定した可能性も無きにしもあらずだが、歴史的に非常に価値のある曲となってしまったので、各種歌詞サイトが訂正するまで、ここに記録として残しておく。

※ POWER HOUSEはpower stationと同じく「発電所」のこと

『メルトダウン』

オレの脳が メルトダウン 大脳も小脳も ダウン
                    ダウン
                    ダウン
                    ダウン
     Ah  メルトダウン  メルトダウン

      恐ろしい事になってしまった

   もう だめだ 助けられない 誰も

     Ah  メルトダウン
         メルトダウン
         メルトダウン
         メルトダウン

    取り返しのつかない事が 起こってしまった

   もう だめだ 助かりゃしない もう遅い

               神様
               仏様
             阿弥陀様
              先生様
             お医者様
             ご近所様
             お師匠様
     これは これは どなた様
            MATT様
             お代官様
             お地蔵様
             お疲れ様
              お月様
        RED・KING様

     Ah  メルトダウン
         メルトダウン
            ダウン
    科学の力を 信じていたのに

             メルトダウン
             メルトダウン
                ダウン
                ダウン
                ダウン
                ダウン
                ダウン



『善良な市民』

泥棒が 憲法改正の論議をしてる
コソ泥が 選挙改革制度で揉めてる
でも 善良な市民は 参加させてもらえず
また 間違った人を選ぶ

泥棒が 建設会社に 饅頭を貰ってる
金屏風の裏で ヤクザと取引してる
でも 善良な市民は ゴールデン・ウィークに
ディズニーランドで 遊ぶしかない

泥棒が 国際貢献をしたがってる
大義名分を掲げ また 二枚舌を使う
でも 善良な市民は 見知らぬ土地で
弾に当たって 死んじまうだけさ

(中略)

どうせ 何処かで 死んじまうだけさ
弾に当たって 死んじまうだけさ



清志郎、タバコという1/2の確率のロシアンルーレットの弾に当たって、死んじまった。。

あの日以来、清志郎が生きていたらと何度思ったことか。。

「福島の小児甲状腺がん:確定12人、疑い15人」のニュースについて(現時点での判断)

2013年06月05日 | 東日本大震災・原発事故
現在開催されている委員会の資料がまだ掲載されていないので、ニュースの数字だけで比較してみます。

福島県 第11回「県民健康管理調査」検討委員会(平成25年6月5日開催) 
http://wwwcms.pref.fukushima.jp/pcp_portal/PortalServlet?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=24809#10kentouiinkai

2011年度
(今年2月時点の情報) 対象 38114人 穿刺細胞診76人
  確定3人 疑い7人 合計10人 …(A)
(今回発表) 対象約4万人 二次検査205人
  確定7人 疑い4人 合計11人 …(B)
  (その他に手術施行して良性だった例が1人)
2012年度 対象約13万4千人 二次検査935人
  確定5人 疑い11人 合計16人 …(C)
合計 対象約17万4千人 二次検査1140人
  確定12人 疑い15人 合計27人 …(D)

甲状腺がん有病率
(A)2011年度:3~10人/38114人=0.79~2.62人/1万人(今年2月時点)
(B)2011年度:7~11人/約4万人=1.75~2.75人/1万人
(C)2012年度:5~16人/約13万4千人=0.37~1.19人/1万人
(D)合計:12~27人/約17万4千人=0.69~1.55人/1万人

確定例は2011年度の「確定3人+疑い7人」から「確定7人+疑い4人」に増加しており、2012年度の「確定5人+疑い11人」でも確定例は今後もっと増えるはずだ。

調査対象地域の違いがあるので増減を論じるのは難しく、時間的経過による違いがもしあるとすれば2012年度の方が多くなるはずだが、逆に低くなっている。

4月の時点でブログに「甲状腺がん有病率1万人あたり1~3人程度のレンジで網を張りながら経緯を見守る必要がありそうだ」と書いたが、今回の発表はその範囲内であり、これまでの発表について何らかの新たな知見が加わったものではなく、ただ積み上がったものと考えた方が良いだろう。

→福島県外3市と福島県内の甲状腺検査結果の比較 考えられる推論2つはいずれも不可解 2013年04月03日
 http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/46d539e4482351e8ee38cd08c4f56e8a

ただし、甲状腺がん有病率「1万人あたり1~3人」程度、あるいは約17万4千人中12~27人という数字はちょっと目がくらむほどの高さで、2012年度が少なめだからと言って安心出来る材料は何もないのだが。。

(現在記者会見中)
多発かどうか、今までにないのもと比較しろと言われても言えない。

今中哲二『サイレントウォー 見えない放射能とたたかう』読書メモ

2013年05月21日 | 東日本大震災・原発事故
今中哲二『サイレントウォー 見えない放射能とたたかう』

LNTが批判に耐えられるタフな考え方。どんなにわずかでも“安全な被曝”などない。年間1mSvがガマン量の目安。最もしっかりした評価は米国科学アカデミーのベアー報告。1mSv被曝でがん発症は1万分の1。子どもは千人に1人。孫が福島市にいたら?「しゃあないなぁ」と言えるのは自然放射線+1mSvまで。食品は自分の子が小学生なら10Bq/kg、妊婦や乳幼児はゼロベクレルを目標に。(Bookmeterへの短評)

図書館から借りた本なので備忘録としてメモしておく。引用だったり要約だったりするので注意。(カッコ内は感想やコメント)

東京より北の本州太平洋側には“無視できないレベルの放射能汚染”が起きてしまった。(もちろん八戸も) 安全性は確率では語れない。百万年に1回の大災害が起こるのは今日かもしれない。

スリーマイル以来「原発は安全か危険か」ではなく「危険なものに決まっている。どのくらい危険なのか」という問題の立て方でシミュレーションしてきた。

チェルノブイリで強く感じたのは、科学的アプローチで明らかにできることは、原発事故という災厄全体のほんの一部にすぎない、ということ。

これから先、子どもや孫の代まで放射能と向き合っていかなくてはならない。一人ひとりがほどほどに判断できるくらいにならないと、かえって不安を大きくしてしまうことになる。

(第1章は、放射能を「正しく恐がる」ための基礎知識。この「正しく恐がる」はカッコ付きの「正しく恐がる」。「正しく恐がる」論者に騙されずに、かつ過剰に怖れないための「正しく恐がる」だ。)

放射能の食品基準は、規制値以下だったら安全というわけではない。私たちにとって規制値は「ガマンさせられ量」だといえる。

今の日本では子どもたちを絶対に被曝させないのは無理。「どこまで被曝をガマンするか、どこまで子どもたちを守れるか」を自分自身で判断できるようになること。

目安として、食品中の放射性セシウム1000ベクレルで20μSvの被曝。3200Bq/kgのステーキを200g食べると640Bq。12.8μSvの被曝。一部の専門家は「健康に影響はない」と。(調べてみたら安斎育郎氏だ)

年間約1mSvの自然放射線は「けっこう強い」。だからこそ、上乗せ分の被曝には注意しなければいけない。

1ベクレルは1秒間に1回原子核が崩壊。セシウム137は放射線はガンマ線を1本(0.85本)出すが、セシウム134は2本以上。ガンマ線のエネルギーは2倍以上強い。

被曝量はお金に換算して比較(お金を落とした)。
放射線従事者:1μSV=1円、100μSV=100円、
1000μSV(1mSv)=1000円(始末書もの)、
1000mSv(1Sv)=100万円(大変だ、すぐ病院へ)

被曝量はお金に換算。
一般人は10倍、妊婦・子どもは100倍。
1μSV=10円、100円。100μSV=1000円、1万円。
1000μSV(1mSv)=1万円、10万円。
年間5mSvは子どもが50万円落とした感覚(あり得ない)。厚労省基準はとんでもないもの。

年間1ミリシーベルトが「ガマン量」の目安。年間1ミリまでは大丈夫、ではない。自然放射線の変動内に入る程度なら、神経質になることはない。例えば年間0.2mSv程度。(←注意:年間200μSv!)

「直線・しきい値なし仮説」が様々な批判に耐えられるタフな考え方。100mSv以下では直線的なモデルよりリスクが大きくなる傾向がみられる。「どんなにわずかでも“安全な被曝”などない」という考え方が世界の主流(ICRP、米国科学アカデミーなど)。

被曝は「予防原則」が大前提。

次々と登場する妄言に惑わされるな。
①生涯100mSvなら安全説(食品安全委員会)、
②年間20mSvなら安全説(文部科学省)、
③年間100mSvでも安全説:「広島・長崎データ」を都合良く解釈しているだけの“原子力ムラ”住人の言葉にはくれぐれも注意を

次々と登場する妄言
④わずかな放射線は体によいというホルミシス説、
⑤「放射線の影響はクヨクヨしている人に来る」説:山下俊一教授は「ご本人がそう思うのは自由ですが、このような社会的発言をするのなら、お孫さんも含めて家族で飯舘村に移住してからにすべきでしょう」

次々と登場する妄言
⑥「ほんの少しでも放射線は怖い」説:子どもの将来を悲観し絶望的になってしまうのは避けるべき。子どもでも自然放射線の1/10(年間100μSv)くらいなら、あまり神経過敏になることもないのでは。(←線量に注意!)

外部被曝と内部被曝の怖さに違いはあるか? 内部被曝のためのICRPの係数がそれほど間違っているとは思っていない。マヤック、テチャ川などのデータをみても、ICRPの評価に比べて内部被曝が数百倍から千倍も危険ということはない。

被曝による遺伝的影響は、広島・長崎データを見るかぎりでは、それほど大きくないというのが共通認識。晩発的影響の回避策をまったく講じなかった日本国政府。

ICRP:1Sv(1000mSV)被曝でがん死は5%。1mSvなら10万分の5。2万人に1人。「原子力利用の利益と比較し、この程度のリスクは社会として受け止めましょう」というのがICRPの立場。(←ちゃんと掛け算してる。これが常識的な考え方)

最もしっかりした評価は米国科学アカデミーの「ベアー報告」。1mSv被曝でがん発症は1万分の1。子どもは大人の10倍とすると千人に1人。

日本で2009年のがん死は約34万人、2%が自然放射線とすると6800人。福島事故による被曝影響が上乗せされても、よほどの大量被曝でなければ断定は困難。

事故直後に山下先生のラジオを聞いていて「子どもたちの甲状腺被曝が心配だ」とはひとことも言わなかった。“嘘は言ってないが、嘘つきのような発言だった”と思っている。

被曝影響の観察がむずかしい小児白血病。よくわからない“がん以外”の低レベル被曝影響。チェルノブイリ周辺の子どもの健康悪化が放射線被爆によるものかはっきりしていない。

どこまでの被曝なら引き受けられるか。答えはないが、自分の家族だったら、大阪の汚染は気にならない。東京の汚染は無視できないが娘が避難するほどではない。自分が福島市に住んでいても住み続ける。孫が福島市にいたら…。答えはないが、(続)

孫が福島市にいたら…。答えはないが、「しゃあないなぁ」と言えるのは「自然放射線+1ミリシーベルト」まで。

どこまでの被曝なら引き受けられるか。自分の家族だったら、東京の汚染は無視できないが娘が避難するほどではない。自分が福島市に住んでいても住み続ける。孫が福島市にいたら…。答えはないが、「しゃあないなぁ」と言えるのは「自然放射線+1ミリシーベルト」まで。

日比谷公園 0.09μSv/h(2012年3月)、自然バックグラウンドの約2倍。逆算すると、Cs137と134を合わせて2万Bq/m2(300Bq/kg)。核実験フォールアウトをはるかに超えている。

IAEAによると、放射性セシウムの濃縮係数は、イカ・タコが9、エビ・カニが50、貝類が60、魚が100。

実効半減期=1/((1/物理学的半減期)+(1/生物学的半減期))

①物理学的半減期②生物学的半減期③実効半減期
ヨウ素131①約8日②約120日③約7.5日
セシウム137①約30年②約100日③約99日
ストロンチウム90①約29年②約50年③約18年

Cs134とCs137を含む食品を食べた場合の実効線量係数
Cs134
  0歳  ~2歳  ~7歳 ~12歳 ~17歳 18歳~
 0.026  0.016 0.013  0.014 0.019  0.019
Cs137
  0歳  ~2歳  ~7歳  ~12歳 ~17歳 18歳~
 0.021  0.012 0.0096  0.01  0.013  0.013

等価線量 実効線量 組織荷重係数
肺の組織荷重係数は0.12
胸のエックス線検査で1mSv
実効線量=0.12mSv

食品の汚染レベルをどうとらえるか。個人の目安としては「10Bq/kgの食品なら、もうしゃーない」。子どもは汚染レベルが低いに越したことはないが、自分の子が小学生なら「10Bq/kg」。妊婦や乳幼児はゼロベクレルを目標に。「わからないところでは慎重になる」

体重1kgあたり10Bqの体内セシウム量が継続していたら、年間約30μSvの内部被曝に相当する。

汚染の不安が少ない白米を選ぶか、栄養価で優れた玄米を選ぶか。各自の判断になるが、50Bqkgまでなら玄米を選ぶだろう。(←前記の10Bq/kgと矛盾するが、そこまでして玄米から栄養を取る必要はないのでは?)

一家で1冊だけ選ぶならこの本がお勧め。避難や食品の目安もバランスが取れていると感じる。

福島の甲状腺がん検査の患者数の推計式を感度・特異度でグラフ化してみました

2013年04月04日 | 東日本大震災・原発事故
少し前に書いた福島の甲状腺がん検査の患者数の推計式をグラフ化してみました

福島の甲状腺がん検査の患者数は? 感度・特異度により3人?12人?(応用できる一般式付き)
http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/6a02a115e45411901a865df6cf4dcb34

有病者数を「x」、感度「s」、特異度「p」
検査陽性者数「m」、陰性者数を「n」とすると、
x=(pm-(1-p)n)/(s+p-1)
となる、ということを説明しました。
(この式を一見してわかることは感度よりも特異度の方が重要だということ)

ここで、感度と特異度によって有病者数(ここでは甲状腺がん患者数)を推計するグラフを書くために、(わかりにくくて申し訳ないが)変数を入れ替えて、有病者数xを「y」に、特異度を変数にして「x」とします。

x=(pm-(1-p)n)/(s+p-1)
  ↓
s=0.8, 0.85, 0.9, 0.95, 1.0
p→xに
m=10
n=66
x→yに

書き換えて数値を代入した式
y=(76x-66)/(x+s-1)

y=(76x-66)/(x-0.2) s=0.8
y=(76x-66)/(x-0.15) s=0.85
y=(76x-66)/(x-0.1) s=0.9
y=(76x-66)/(x-0.05) s=0.95
y=(76x-66)/x s=1.0


(クリックして別ウィンドウで拡大)

グラフは上から下に感度s=0.8, 0.85, 0.9, 0.95, 1.0の順
横軸(x)が特異度、縦軸(y)が甲状腺がん患者数の推計値

このグラフをみると、
感度・特異度がいずれも1.0の時は10人になる(当たり前か)
感度が低下すれば取りこぼしが多くなり患者数は増える(上の曲線)
特異度が0.99以上あれば10人かそれ以上となる(感度1.0はあり得ないので)
最初に議論の前提となった特異度0.9では偽陽性が多すぎるので考えにくい

細胞診で取り逃しはあっても正常細胞をがんと判定することは考えにくい(特異度0.99以上)ので、10人前後という数字の可能性が高い。

福島県外3市と福島県内の甲状腺検査結果の比較 考えられる推論2つはいずれも不可解

2013年04月03日 | 東日本大震災・原発事故
ネット上でいろいろと議論になっているようだが、フォローできてません。
ざっと眺めてみておおよその方向性を探ってみます。

結論だけ先に書いてしまいますが、

1)福島県内外で頻度が変わらず、他県でも同程度の頻度で甲状腺がんが発見されると仮定したら、全国で全小児にスクリーニングをしなくてはいけなくなる。無論そのようなことは必要ない。ならば福島での検査の意味がわからなくなる。

2)福島県内外で頻度が変わらず、福島県だけB判定に二次検査を実施してがんが発見され、他県では二次検査の必要がないとしたら、同じ割合であっても福島だけB判定から高頻度にがんが発見されるという意味になる。同じB判定でも福島だけハイリスクで他県ではローリスクだということ。しかしその根拠がない。

導かれる推論はいずれも不可解で納得できるものではありません。

専門家の言っている意味は、福島県内外で頻度が変わりないので、特にA2判定については全く心配がないということと、甲状腺がんとされた3~10例については、原発事故とは関係なく(←ここで検査結果に関わらず断定)検診によってたまたま早期に発見されたものだから心配ない(?)、ということらしい。

さてさて。。

(追記:5mmという区切りが甲状腺がんの有無を検出するには小さすぎて差がでない(福島の10症例はもっと大きい)可能性も否定できないが、子どもの甲状腺で5mmの結節があっても本人に知らせないし以後フォローなしという他県3市の扱いは混乱を助長しただけ。)

平成25年3月29日
福島県外3県における甲状腺有所見率調査結果についてhttp://www.env.go.jp/press/press.php?serial=16520

弘前市 1630人
甲府市 1366人
長崎市 1369人
合計  4365人

A 4321人 99.0%
A1 1852人 42.4%
A2 2469人 56.6%
B 44人 1.0%
C 0人 0%

結節5.1mm以上 44人
結節5.0mm以下 28人
嚢胞20.1mm以上 0人
嚢胞20.0mm以下 2482人
(人数に重複あり)

要するに、B判定の44人は全員5.1mm以上の結節(+)で、一部に20.0mm以下の嚢胞を伴う人もいた、ということ。

B判定の割合は
弘前 1.3%>甲府 1.1%>長崎0.6%と西に行く程低くなっているように見えるが、この人数でこの差を評価することは意味がないだろう。

一方、福島県内の調査は現在も進行中だが、年代・性別の県内外の比較は以下の記事に掲載されている。

しこりの割合本県低く 4県の子ども甲状腺検査(福島民報)
http://www.minpo.jp/pub/topics/jishin2011/2013/03/post_6779.html



甲状腺検査のこれまでの結果と今後の検査日程(放射線医学県民健康管理センター)
http://fukushima-mimamori.jp/thyroid/thyroid-info01.html

ここに掲載されている以下のPDF(2013年1月時点での集計)が最新版だろうか。
http://fukushima-mimamori.jp/thyroid/media/thyroid_status_201301.pdf

H23年度 38114人
A 99.5%
A1 64.2%
A2 35.3%
B 186人 0.5%
C 0人 0.0%

H24年度 94975人(2013年1月現在)
A 99.4%
A1 55.8%
A2 43.6%
B 548人 0.6%
C 1人 0.001%

----------------
福島県外3市(比較)
A 99.0%
A1 42.4%
A2 56.6%
B 44人 1.0%
C 0人 0.0%
----------------

A2,B,C判定の内訳

H23年度
結節5.1mm以上 184人
結節5.0mm以下 201人
嚢胞20.1mm以上 1人
嚢胞20.0mm以下 13382人

H24年度
結節5.1mm以上 538人
結節5.0mm以下 413人
嚢胞20.1mm以上 6人
嚢胞20.0mm以下 41433人
(人数に重複あり)

----------------
福島県外3市(比較)
結節5.1mm以上 44人
結節5.0mm以下 28人
嚢胞20.1mm以上 0人
嚢胞20.0mm以下 2482人
----------------

問題の甲状腺がん3名、残り7名もがんの可能性が高いという件については、こちらのブログに検討委員会の文字おこしが掲載されています。

第10回「県民健康管理調査」検討委員会2013.2.13 <質疑応答文字起こし・ほとんど全部>
http://kiikochan.blog136.fc2.com/blog-entry-2775.html

当ブログに書いた計算上の推定値についての記事はこちら。

福島の甲状腺がん検査の患者数は? 感度・特異度により3人?12人?(応用できる一般式付き)
http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/6a02a115e45411901a865df6cf4dcb34

H23年度 38114人のうち、二次精検をした76人中10名が陽性(うち3名が摘出し診断確定)、66名が陰性という数字になっています。

甲状腺がん「被曝の影響、否定出来ず」~疫学専門家インタビュー
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1549

ここで津田先生が説明しているように、3名だとして、有病率(有病期間7年または10年)で比較しても、数倍高く「多発」だということになる。


津田先生の「有病率と発生率」の式に3人と10人をあてはめてみると、

有病割合(P)=発生率(I)×平均有病期間(D)
 P=3÷38114=78.7人/100万人
 P=10÷38114=262.4人/100万人

発生率(I)=P/D

100万人あたりの発生率は

患者数=3人のとき 平均有病期間を7年または10年として
I=3×100万/(38114×7×100万)=11.24/100万人
I=3×100万/(38114×10×100万)=7.87/100万人

患者数=10人のとき 平均有病期間を7年または10年として
I=10×100万/(38114×7×100万)=37.48/100万人
I=10×100万/(38114×10×100万)=26.24/100万人

患者数は10人前後と考えた方がよさそうなので、従来の平均発生率を100万人に2人とすると、それぞれ18.7倍、13.1倍という数字になる。

大雑把に言って、
 超音波で結節 0.5-1% 500-1000人/10万人
 甲状腺がん有病率 0.01-0.03% 10-30人/10万人 ←「1万人あたり1~3人」程度
 甲状腺がん発生率 0.001-0.003% 1-3人/年/10万人

今回のデータで明らかになったこのあたりのレンジで網を張りながら、その後の経緯で更に増えるのか発見される人数が減ってくるのか見守る必要がありそうだ。

このことと、

子どもの甲状腺「福島、他県と同様」 環境省が検査結果
http://www.asahi.com/national/update/0308/TKY201303080179.html

長瀧重信・長崎大名誉教授「超音波検査の性能が上がり、嚢胞などが見つかりやすくなった。福島が異常な状態ではないとわかった。ただし今回の調査だけでは、被曝の影響の有無は判断できない。福島で生涯、検査を続けることが必要だ。地域性もあるため、福島県で事故後に生まれた子への検査との比較も必要だ」

このコメントが論理的に結びついていない。
(最初に書いた専門家の見方)
「多発」自体を否定しているのが前提なので、その後の筋道も理解不能になる。

考えられる筋書きは、冒頭に書いた2つの推論だが、いずれも不可解。

1)福島県内外で頻度が変わらず、他県でも同程度の頻度で甲状腺がんが発見されると仮定したら、全国で全小児にスクリーニングをしなくてはいけなくなる。無論そのようなことは必要ない。ならば福島での検査の意味がわからなくなる。

2)福島県内外で頻度が変わらず、福島県だけB判定に二次検査を実施してがんが発見され、他県では二次検査の必要がないとしたら、同じ割合であっても福島だけB判定から高頻度にがんが発見されるという意味になる。同じB判定でも福島だけハイリスクで他県ではローリスクだということ。しかしその根拠がない。


福島の甲状腺がん検査の患者数は? 感度・特異度により3人?12人? (応用できる一般式付き)

2013年03月18日 | 東日本大震災・原発事故
福島の甲状腺検査で「細胞診76人中10名が陽性、うち3名が摘出して甲状腺がん確定」という問題が話題になっているようです。

NATROMさんの日記
2013-03-15 陽性反応的中割合と「100%引く偽陽性率」を取り違えた甲状腺癌数の推計について
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20130315
2013-03-16 そんで、結局のところ、甲状腺癌の患者数は?
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20130316

この3/15の記事を読んで、これは方程式で解けるはずと思って計算していたら、すでに翌日に解答が記載されていました。

ここでは、
「感度、特異度、検査陽性人数、検査陰性人数が既知の場合の実際の患者数は?」
という一般化した方程式をつくってExcelのシートで色々と代入してみたので、紹介します。

少し前に、
「インフルエンザ検査の陰性的中率」「新しい母体血出生前検査の陽性的中率」について紹介したので、その続きとも言えます。

まず計算式。いつもの「2×2分割表」。


この図の上から順に解いていくとわかるはずなので、詳細は省略します。
本当に病気の人の数(有病者数=a+c)を「x」とします。
感度「s」、特異度「p」の定義から、それぞれaとc、bとdが式で表せます。
検査陽性者数を「m」、陰性者数を「n」とすると、横方向に計算して、bまたはdの式ができます。
bとdについて2つの式ができたので、bまたはdのどちらかで連立方程式を解くと(←どちらでも結果は同じ)、
x=(pm-(1-p)n)/(s+p-1)
となります。
これでabcdが全部決まります。

エクセルのシートに計算式を入れて、数字を動かしてみます。

「感度 s 0.90、特異度 p 0.90、陽性 m 10、陰性 n 66」を入れると、


上記のNATROMさんのページにある計算結果と同じx=3となり、この条件では「検査陽性の10人中3人程度が甲状腺がんである」可能性が高いという結果になります。

有病率(二次精検者の)は3.95%、陽性的中率は27%しかありません。(陰性的中率はほぼ100%)

二次精検(細胞診)までして陽性であっても、更に7割は偽陽性だというのは、確かに受け止め方としては厳しいものがあるかもしれない。

実際にこの数字に近いかどうかはわからないし、ここではそれは問題にしません。
シミュレーションを続けます。

「感度90%、特異度90%」というと、直感的にはこんな数字だと理解しやすいかと思います。


陽性者10人中9人が疾患あり、陰性者10人中9人が疾患なし。
有病率50%、陽性的中率90%。

これは陽的中率が90%で感度・特異度と同じ数字になるのでなんとなく理解しやすいのですが、実際には、陽性的中率は「感度、特異度と有病率」によって大きく変化します。

同じ「感度90%、特異度90%」であっても、有病率が9%まで下がれば陽性的中率は5割を切ってしまう。


元の甲状腺検査に戻ると、二次精検なんだから一般的には「感度99%、特異度99%」くらいのイメージを持ってしまう。


もしそうだとしたら、この表にあるように「10人中9人強が疾患あり、陽性的中率93.4%」となって期待通りの数値が得られるのですが、こうしてみると「感度90%、特異度90%」というのはかなり低い数字だということがわかる。

この「感度90%、特異度90%」は確定した数字ではなく、「偽陽性・偽陰性10%未満」という記載のようです。「感度95%、特異度95%」に上げてみると、a=6.5 c=0.3 x=6.9(四捨五入しているため足し算が合わない)となり、あと4人程度のがん患者含まれていてもおかしくない。

穿刺吸引細胞診で取り逃しはあっても誤ってがんと診断する可能性はゼロに近いという前提で、感度80%(見逃しが20%)、特異度99.9%(偽陽性なし)とすると a=9.9 c=2.5 x=12.4となり、10人よりも多い可能性ありという元の話に近くなる。

いずれも、仮定の話です。

一方、一次スクリーニング検査では、有病率0.01%(10万人あたり10人)程度の疾患を検出しようとすると、「感度100%(取りこぼしゼロ)、特異度99.9%」という優秀な検査であっても、陽性的中率は1割にも満たない。9割は偽陽性ということになる。


この数字をどう評価するかは、検出すべき病気の性質(決して見逃してはいけない、もし見逃したら次の検査までに進行して手遅れになる病気かどうか)によって違ってきます。
(甲状腺エコー検査がこの数字にあてはまるという意味ではなく、あくまで一次スクリーニング検査一般についてのシミュレーションです)

感度、特異度、有病率(見込み)の数字だけでなく、実際には小児の甲状腺がんの性質や進行スピードなどが問題になって来るのですが、勉強不足なのでこの点についてはコメントできません。

このような検査の性質をあらかじめ理解して、偽陽性が検査によって相当の割合で発生するということを前提として話を進めるべき、というのが当面の結論か。

(このExcelのシートは結構便利)

追記:(誤解無きよう念のため)甲状腺がんが3人だけで7人は違うという意味ではなく、4~10人(あるいはそれ以上)のいずれの可能性も否定できません。感度・特異度が安定している検査でも、確率的にバラツキは当然あり得るので。

追記2:OurPlanet-TVで津田先生が言っているように、甲状腺がん3人確定という「多発」状況にあり、今後の変動について厳しい目で見ていく必要があり、7人についても定期的な経過観察が必要なことは当然です。

鎌田慧『六ヶ所村の記録』メモ 「白河以北一山百文」 核燃サイクル悲喜劇のツケは県民に

2013年03月14日 | 東日本大震災・原発事故
何度もため息をつきながらこの長い物語を読み終えた。鎌田慧さんが最初に取材を始めてから40年以上の歳月が流れ、その間にスリーマイル、チェルノブイリ、そして福島原発事故という大惨事を経験してもなお、核燃サイクル堅持を叫んで青森にお金を落とすために全国の原発を動かし続けようとしている三村知事や、「世界一安全な原発」を再稼働させようとしている安倍首相の姿は、ここに登場する竹内知事や北村知事以上に、県民や国民の真の幸せを考えない醜悪なものだ。

鎌田さんは昨年も今年も3.11あおもり集会で「白河以北一山百文」という言葉を用いて、原子力産業や中央政権が六ヶ所村や青森県で行ってきた「開発」の差別性や欺瞞を強く指弾した。その欺瞞や差別のあからさまな実態がここに描かれている。この(欺瞞や差別の)歴史を知ることが原発・核燃の問題を知る第一歩だ。私自身、3.11以前からちゃんと読まなければと思いつつ、後回しになっていた。

青森の高校生が、核燃マネーによる海外エネルギー視察にこぞって応募するなどということではなく、自ら越えるべき壁としてこの県で起きてきた歴史の実態に目を向けるようになれば、少しは希望が持てるようになるのだが。

「83年12月、総選挙の応援で青森を訪問した中曽根首相は、下北半島が「原子力のメッカになると発展する」と語った。六ヶ所村は、いわばメッカであり、トイレである。」(←ここで思わず吹き出してしまった)

「そして、「むつ小川原開発」に失敗した竹内知事の長男、黎一が第二次中曽根内閣の科学技術庁長官に抜擢され、それを合図として、一挙に「核燃サイクル」建設が押し進められることになった。」

「核廃棄物は、それぞれの原発用地内に保管すればいい。それができないのなら、原発の稼働をやめるしかない。核の生ゴミをひとに押しつけてはいけない。原発政策とは、原爆とおなじように、ひとに害を加えて自分だけ繁栄しようという、あさはかな思想のあらわれでしかない」

91年版あとがき「原発と廃棄物をどうするか、いまや国民レベルで討議する時期にはいっている。すべての危険性を六ヶ所村に押しつけて解決したと思っている無関心は、将来、事故発生によって報復される危険性がたかい」

2011年版あとがき「村を核の掃きだめにする計画をたてたものは、呪われるべきだ。ただカネのためにだけ受け入れた、歴代の青森県知事と村長も同罪である。高濃度核廃棄物の運搬専用船に六栄丸(六ヶ所の繁栄)、低レベル運搬船は青栄丸と名づけたものの罪は深い」

97年文庫版の解説は広瀬隆氏。「いよいよ原子力も幕をとじる日が来た。鎌田慧氏と寺下力三郎氏に、みなでその言葉を贈りたい。敬愛の念をこめ、感銘のうちに」(←その後、寺下氏は亡くなり、福島の大惨事が起こり、原子力劇場の悲喜劇は未だ幕を閉じる気配がない)

同じく広瀬隆氏解説より「高レベル放射性廃棄物は、…つまり三十年は五十年となり、五十年が永久となることは、青森県民より、ほかの四十六都道府県が熟知のことで、みな心中でそう願っている。こんなものを保管してくれるお人好しがいるとはありがたい、と」

ちなみに、六ヶ所村民図書館の蔵書には鎌田慧さんの著書は16冊あり、『六ヶ所村の記録』も3冊含まれている。さすがにそこまで弾圧することはできなかったようだ。八戸市図書館には2011年の岩波現代文庫版も所蔵されている。高校の図書室にあるだろうか。

鎌田慧さん91年知事選でのコメント
 北村氏が強いとは思っていたが、予想以上だったので愕然としている。核燃選挙といわれていたが、それが焦点になっていなかったからだ。
 核燃をどうしようかという前の段階でのファクター、つまり権力、経済構造という保守基盤を、突き崩せなかった。(焦点が)核燃問題にぶつかる以前に、いろいろな問題に拡散したのではないか。北村氏が、副知事時代を含めた24年間で形成してきた権力構造をぎゅっと締め、核燃問題がそこに入り込めなかった、ということだと思う。
 代議士選挙とちがい、知事選は待ったなし。県知事を代えるということは、大変なこと。核燃には反対だが、北村氏に入れよう、ということになったのではないか。それだけ県民にも古い意識が根強い、ということだ。
 金沢氏は「県民は核と運命共同体になるのを選んだ」といったが、そう単純なものではなく、そこまでいかないうちに、古い県民意識と自民党がつくった「権力のガード」に疎まれたのだと思う。
 さらに、山崎氏の「凍結」とい選択肢にうやむやにされた。今日の敗北は反対運動にとっては確かに打撃は大きい。しかし、白紙撤回、凍結を合わせれば北村票を上回る。
 六ヶ所村の土田村長は今後、どうするのか。県民が賛成しているとして「ゴーサイン」を出すかもしれないが、そうではない。県民がノーという前に、締め付けの緩衝剤をばらまかれて、「核燃反対」が直撃しなかった、といえる。
 北村氏も「おれを支持したから、県民が核燃を選択した」と言うかもしれないが、そういう論理は成り立たない。相対的にみれば、明確に、賛成しないという人が多い。過半数以上の根強い反対を無視して(核燃サイクル基地建設を)強行するのは、誤りだ」(朝日新聞2月4日朝刊)

長々と引用してきたが、その再処理工場が、福島原発事故を経て再び全ての原発が停止する今年の秋に向けて、本格稼働を目指すという馬鹿げた事態になってきている。この40年もの記録は過去の話ではなく、今もその続きの物語がより喜劇性を強めながら繰り広げられている。

(そのツケは必ず県民にまわってくる…)

もう1冊、本棚から島田 恵さん(写真・文)の『六ヶ所村 核燃基地のある村と人びと』を引っ張りだして読み直している。その前著『いのちと核燃と六ヶ所村』も、うちの待合室に置いてあります(貸出可)。

(オマケ)

「低線量セシウム無害」(3/13国会質問)の維新・西田譲議員について、私の興味は、1)どうして選ばれたのか、2)どうやったらこういう人間が形成されるのか。1)については、選挙で投票したのにこんな人だったのかと頭を抱えている選挙区民もいるかもしれないが、それは選んだ貴方の責任。

西田譲1)どうして選ばれたのか? 何年か県議をやっていたならトンデモとかアブナイ言動とかはわかるはず。公開討論会でもやれば一発。維新というブランド(?)や、公約や演説の字面、見てくれ(顔見るとちょっとこれは?と感じるが若くてイケメンと思う人もいたかも)で選んだか。

西田譲2)どうやったらこういう人間が形成されるのか? こういうのは謎。学歴見るといわゆる学力はあるようだが、まともな判断力、論理的思考能力がない。ただ未熟だとか思い込みともちょっと違う。ボーダーラインっぽい感じもするが、情報不足。幼児期、小児期はどうだったのか。

(ネトウヨとほとんど変わらないという気もするが…)

「政府・マスコミ・専門家を信じるな」 自分で判断できる子どもに 八戸市学校保健功労賞を受賞して

2013年02月02日 | 東日本大震災・原発事故
 以下の文章は八戸市学校保健功労賞の受賞に際して八戸市医師会の会報に掲載された文章ですが、そのまま再掲します。

 2011年3月15日には放射性物質の最大級の放出があり、関東から東北の広い範囲が汚染された。この日は平日で、福島の中通りでも学校は再開していた。体育などの屋外活動も行われていたかもしれない。この時に「学校があるから避難できなかった」という複数の方の声を確認している。4月になって学校の汚染が社会問題となったが、放射性物質の大量放出が続いていたこの週は、避難させるか最低でも自宅待機とすべきであった。しかし、そのような声は教師からも校医からも寡聞にして聞かない。

 3月21日に福島市で開催された山下俊一教授の講演をいち早くネットで聞き、これは大変な時代が来ると暗い予感に脅えたが、現実はその予想を遥かに越えたものとなった。当時の「何も言えない」風潮に対し、ブログで率直な意見を訴えたのは中学2年生、まだ14歳のアイドルであり、匿名の大人たちからバッシングの嵐を浴びせられた。しかし、彼女の危惧の方が的を射ていたことはその後の歴史が証明している。彼女は大多数の大人とは違い、自らものを考え、判断し、行動することができたのだ。

 現在、校医を務めている二つの小学校で、毎年6年生に「だまされないで!タバコの害の真実」と題した喫煙防止教室を開催している。タバコ問題と原発・核燃問題はほとんど同じ構造にあり、政官財学メディアの癒着の中で、命よりもお金を優先させる生き方から生じている。震災後は必ず原発事故の話を交えて、政府やマスコミ、「先生」と呼ばれる専門家(医師や教師を含む)、世の中の大人たちの話をそのまま鵜呑みにして信じないようにと訴えている。

 今のこのご時世では、この話に対して教育委員会が何らかの圧力をかけてくる時代が来ることもあり得ると考えている。その時に、医師会が守ってくれることもあまり期待していない。

 依頼された原稿の趣旨とかけ離れた内容となったことをお詫びするが、15年勤続による功労賞を頂戴したお礼にかえて、子どもたちの未来のために一言申し述べさせていただいた。

(院内報2012年12月・2013年1月号より)

『この国はどこで間違えたのか 沖縄と福島から見えた日本』青森の悲喜劇は「福島にすらなれなかった」こと

2013年01月31日 | 東日本大震災・原発事故
<短評>誤解を恐れずに言えば、青森で起きている悲喜劇は「福島にすらなれなかった」ことによるのではないか。青森の人は「事故が福島で良かった。福島で起きたから青森ではもう起きないだろう」と思っている。福島の人もかつては「チェルノブイリで良かった。福島では起きない」と思っていたし、チェルノブイリの人も「スリーマイルで良かった…」(01/22)

『この国はどこで間違えたのか 沖縄と福島から見えた日本』
http://www.tokuma.jp/book/tokumabooks/3053306e56fd306f3053959390553048305f306e304b

どこで間違えたのかと言うからには「間違えた」ことは自明との前提だが、現在のこの国の中枢(政官財学メディア)は「間違えていない」との認識で「成長戦略・原発再稼働・強い日本」という過去の幻想を追い求め続けている。

本書で言及されている一つのポイントは1972年(沖縄返還・日中国交)~1973年(オイルショック・ベトナム戦争終結)。1973年には名護市から「逆格差論」が提案された。

沖縄返還からの40年間は、団塊の世代(1945-50年生)が働きだして現役引退するまでとぴったり重なる。1972年:27~22歳 → 2012年:67~62歳。(蛇足だが、1972年には私は小学校4年生)

無論、福島第一原発1号機が運転開始し(1971年)、3機がメルトダウンを起こして4機が爆発する(2011年)までの40年間ともぴったり重なる。名護市の「逆格差論」は無視され、高度経済成長の終焉とバブル崩壊のあとも成長神話を追い求め続け、フクシマのカタストロフィから何も学ばずに「強い日本の復活」という過去の幻想を今また掲げる安倍政権。

司馬遼太郎は、日露戦争・ポーツマス条約を不服とする日比谷焼討事件(1905年9月5日)が、その後の十五年戦争(1931年満州事変~1945年太平洋戦争)へ突き進んでいく転機だったと何度も述べている。ここで民衆を煽って国家を滅ぼす道へ導いたのはメディア。

戦後も考え方や体質はほとんど変わらないまま、表面だけ民主主義に付け替えて経済成長、バブル崩壊、東日本震災・福島原発事故へと突き進んでしまった。日比谷焼討事件から今までずっと続くのは、本当の事を言わず、伝えず、隠したまま先送りしようとする体質。

中高生必読 堤未果 著『政府は必ず嘘をつく』 歴史は偽りを理解し政府を鵜呑みにせず判断するためにある

2013年01月07日 | 東日本大震災・原発事故
堤未果著『政府は必ず嘘をつく』の「読書メーター」への短評と、本文から一部メモしたものを引用しておきます。

中高生必読。NIEでメディアを信じて学びましょうなどという馬鹿げた教育をするより、本書と『社会の真実のみつけ方』を必須課題に指定して、政府・学校・メディアに騙されない人間をつくっていくしかない。無論、政府・学校・メディアが支配されている現状では困難だが。。第3章の「アメリカ型資本主義から脱出したアルゼンチン」から、国民があきらめずに国を変えていくことを学ぶ。

「政府は嘘をつくものです。ですから歴史は、偽りを理解し、政府が言うことを鵜呑みにせず判断するためにあるのです」 ハワード・ジン(歴史学者)

「私の国であれだけ政府に都合がいい報道をさせようとしたら、ジャーナリストを拷問することになるでしょう。いったい日本政府は、どんな方法を使っているのですか?」 ジプシー・トーブ(ロシア人ジャーナリスト)

「あなたたち日本人は、リビアのことを何もわかっていない。西側のマスコミしか見ないからです。私にはリビアにたくさん友人がいるけれど、彼らは高学歴・高福祉の国であるリビアを誇りに思っています。アフリカ大陸で最も生活水準が高いリビアでは、教育も医療も無料で、女性も尊重されている。日本の人たちは、そういうことを知っていますか?」 ヴェロニカ・ランソデール(チリ出身・東京在住)

「いったいアメリカの子供たちは、どこで情報リテラシーを身につければいいのでしょう? 自分の頭で考えなくなる点数至上主義教育と、この国を支配する企業メディアのダブルパンチを受けながら」

「私たちが忘れてはならないことは、フェイスブックもツイッターも民間企業だということです。すみずみまで<コーポラティズム>が支配するこの国で、8億以上のアカウント人口を持つフェイスブックと2億人のユーザーが利用するツイッターが、政治から中立だと考えるほうが不自然ですよ」

「資本主義が犯した最大の罪は、人間性を破壊したことです」 アルバート・アインシュタイン

「ネットで見る限り、日本の大手マスコミの報道は全体国家に近いですね。9.11後のアメリカの報道とそっくりだ」 マーク・オルセン(イラク帰還兵)

「それでも、人間を壊すこの価値観に飲み込まれそうな世界の中で、未来をあきらめない大人たちの存在が、子供たちの勇気になると信じたい。世界が変わるのを待っていないで、それを見る私たち自身の目を変えるのだ」

-- 堤未果『政府は必ず嘘をつく』より

堤未果『政府は必ず嘘をつく』によると、アメリカでは低所得者層ほどテレビの視聴時間が長い。データがあるかどうか知らないが、おそらく日本でも同様だろう。低所得者層ほど肥満も多く、喫煙率も高い。多分パチンコも。中高年でテレビをよく見てネットは利用せず選挙では投票する。メディア操作は簡単。

「このまま安倍自民党政権が圧勝の元に誕生したら、真っ先に手をつけるのは言論統制、ネット規制の強化だろう。」(2012.12.13のtwitter)

太陽光発電を始めました 脱原発・エネルギーシフトへの力に プロパンガス発電機も導入

2012年11月07日 | 東日本大震災・原発事故
 かなり離れないと下から見えないかと思いますが、10月中旬に太陽光パネルを設置し、太陽光発電を開始しました。パネル25枚で5.5kW、一般家庭に設置できる容量としては大きな方で、7月から始まった固定価格買取制度により十数年で元が取れるという皮算用です。診療所兼住宅のため日中の使用電力量が大きくなり年数がかかりますが、一般家庭なら売電量が大きくなるため十年ちょっとでプラスになるのではないでしょうか(メーカー・価格・屋根や気象条件などにより異なります)。

 4kW程度の太陽光パネルを25万世帯が設置すれば計算上は100万kWの原発1基が不要になります。もちろん夜間の電力は買わなければいけませんが、特に夏の日中のピークには大きな戦力になるはずです。東北電力では東通・女川あわせて4基が停止中ですが、この夏も一時的に火力が停止して厳しい時期はあったものの電力は足りています。原発反対のデモや集会も大切ですが、持ち家のある方や今後建てる予定の方なら自分で電力をつくることが脱原発・エネルギーシフトの大きな力になっていくはずです。

 なお、停電時も日中の発電中であれば1.5kWまで電気が使えますが、曇天時や夜間のためにプロパンガスの発電機も購入しました。自家発電で全てをまかなうことはできませんが、長期の停電や大規模災害のときに最低限の診療や対応ができることを目標としています。(使う機会がないことを願いますが)

(以上、院内報より)

→山匠電気のHPにも設置工事の写真が掲載されています


10月13日。朝方の雨もあがって半日で架台設置終了。


10月14日。快晴。25枚の太陽光発電パネルを設置し、屋内工事もほぼ終了。


太陽光発電パネル(Panasonic)。畳を二まわりくらい小さくしたサイズ。


下から見上げても、かなり離れないとよく見えません。


屋内に設置されたパワーコンディショナー。直流から交流に変換される。233W×25枚で計算上は5.825kWがmaxなのですが、パワーコンディショナーの5.5kWが上限となる。


停電時には自立運転で1.5kWまで使うことができる。

食品の放射能汚染その後 キノコとタラはもう大丈夫?

2012年11月06日 | 東日本大震災・原発事故
 「食品の放射性物質 年齢の数字が目安か キノコとタラに注意」と書いたのは2011年12月・2012年1月号でした。その後、マダラが100Bq/kgの基準値オーバーを繰り返して出荷制限に追い込まれたことは御存じの通りです。11月から解除になりましたが、基本的な状況は昨年から何ら変化していません。

 マダラに関しては、100を切ったから良い悪いという問題ではなく、次の2点について全く分かっておらず、県も関係者もマスコミも解明する気が全然ないということ自体が最大の問題です。

1)マダラの回遊ルートや範囲がわかっておらず、汚染度の高かった個体が福島や宮城沖から来たのか近海で汚染されたのかがわからない。
2)それに関連して、海底の汚染状況がほとんど調査されていない。

 マダラは海底に近いところに棲息していて食物連鎖の最上位に位置しているため、他の魚と比べて格段に海底汚染の影響を強く受けるようです。個人的な推測としては、事故後に莫大な量(詳細は不明のまま)が放出された福島の海洋汚染に加えて、広い流域から放射性物質を海に流し続けている阿武隈川の河口~仙台湾の海底汚染が今後更に蓄積されていくのではないかと懸念していますが、具体的なデータの裏付けはなく、解明される見込みもなさそうです。

 ですから、マダラは出荷制限が解除されて「安全宣言」が出されても依然として要注意であり、八戸港の出荷前検査も大きな進歩ですが、検査値までは表示されないようなので、子どもに安心してお勧めすることはできません。津軽海峡や日本海なら大丈夫だとは思いますが、引き続き検査情報のチェックを続けていく必要はあります。昨年と同様に<年齢の数字>を目安に。。

 キノコに関しては「岩手県南は要注意、県北はたぶん大丈夫」と書きましたが、10月に入ってから少し様相が変わってきました。

 十和田市 チチタケ   Cs137 120 Cs134 ND Bq/kg
 階上町  ホウキタケ  Cs137  98 Cs134 18 Bq/kg
 青森市  サクラシメジ Cs137 107 Cs134 ND Bq/kg

 十和田市、階上町に続いて青森市にも野生キノコの出荷制限が指示されました。ただし、ここで注意してほしいのはセシウム(Cs)137と134の割合です。福島原発事故では137:134がほぼ1:1の割合で放出されました。1年半経って、Cs137(半減期30年)に比べてCs134(半減期2年)の方が多く減少しているとしても、上記のデータはアンバランス過ぎます。

 この結果から推測されることは、1950-60年代の核実験による汚染やチェルノブイリ由来が7~8割、福島原発事故による汚染が2~3割程度であり、過去40年以上にわたって私たちは放射能キノコを食べ続けてきたという事実です。過去にはもっと汚染されて時期もあったのに、検査してないからわからなかった。フクシマ以前の基準はチェルノブイリの時に定められた370Bq/kgだったし、国内のキノコなど誰も気にかけていなかったので、フリーパスで市場に出回っていた。

 もちろん、階上のデータでわかる通り、フクシマの影響が無いわけではなく、過去の汚染に更に上乗せされた状況にあります。山林の除染、特に青森県のような比較的汚染度の低い地域の除染がなされる見込みはゼロ(不可能)ですから、今後もCs137がゆっくりと減るのを待つしかなさそうです。(60年で1/4にはなりますが…)

新井田川堤防で津波浸水予測図を確認 保健センター構想見直し→八戸市は丘陵地中心の街づくりを

2012年10月19日 | 東日本大震災・原発事故
#以下の文章は地域の医療系MLに投稿したもので、八戸市の田向地区に保健センターを建設して急病診療所や健診センターなどを移転させようという構想が市や医師会などの間で進んでいることについて書いた2回目の文章です。

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唐突に結論から先に書きますが、八戸市は五十年後、百年後の人口半減社会と津波防災を考えて、今後低地の開発は行わず、市街地を縮小して中心街や周辺の丘陵地域を残していくようにすべきと考えます。
(無論、港湾施設や沿岸部の企業・工場などは必要ですが)

先日、津波対策と急病診療所移転(保健センター構想)について書きましたが、その日に発表された県の予測図は皆さんご覧になったかと思います。

津波浸水予測図
http://www.pref.aomori.lg.jp/kotsu/build/tunami-yosoku.html
八戸市(3/4) PDFファイル 1,283KB
http://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kendo/kasensabo/files/2012-1001-2259.pdf

一昨日(10/17)、新井田川の堤防をゆっくりジョギングしながら、自分の目と足で確かめてきました。

45号線を下って塩入橋を渡り、招運橋、新井田中央大橋、新井田橋、対泉院、風の道公園というルート。

塩入橋~新井田橋の間は、川が流れる程度には緩やかに上っていますが、走っていてもほとんど意識することはありません。

塩入橋と招運橋の間では河川敷に下りてみましたが、川面から河川敷まで50cmもなく、堤防は河川敷から3m強しかない。
(当然、潮位や降水量によって変わってきますが)

45号線が少し高くなっているので、ある程度の障壁にはなると思います。
「予測図」でもそのようになってます。

招運橋~新井田中央大橋で川が大きくカーブするところでは、堤防は水面から5~6m(目測)と高くなり、川幅も思った以上に余裕があるので、集中豪雨や「普通の大津波」で決壊することはちょっと想像しにくい。。

また、塩入橋~招運橋では、新井田側は堤防が土地の高さそのものなのに対し、南類家側は1~2m低くなっていて、新井田中央大橋に近づくにつれ堤防の高さと同じくらいになっていきます。

「予測図」では、諏訪がピンク(2m以上5m未満)、45号線を越えて類家~南類家でオレンジ(1m以上2m未満)から黄色(0.3m以上1m未満)、緑色(0.3m未満)となり、田向の市民病院の手前で白になっています。

今まで何度か45号線~市民センター~市民病院前~新井田中央大橋というルートをジョギングした時に、ほとんど標高差を感じることがなかったので、この色分けに疑問を抱いていたのですが、「ある程度の」根拠はあるのかなと感じました。

ただし、昨年の震災でも市民病院付近まで船が打ち上げられたし、普段でも満潮時はこのあたりまで逆流しています。石巻のような直撃を受けた時に本当にここで水が止まるのか、堤防を乗り越えないのか、、これで大丈夫と言う気にはとてもなれません。

「北上川河口、堤防決壊した集落の水引かず」2011/4/1
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK0100L_R00C11A4000000/
阿武隈川・鳴瀬川・北上川の被害 - エイト日本技術開発(PDF)
http://www.ejec.ej-hds.co.jp/sinsai/houkoku/23.pdf
 ↑
地震の揺れや液状化による堤防の損傷もあり得るようです。

いずれにせよ、もし田向まで浸水する時には市内は壊滅的な被害になるわけですから、あまり考えたくないし、多分生きているうちにはないだろうと思いますが、これから何十年も使う公共施設を新たにつくるときには検討すべき重要な要因かと思います。
(私には責任もないし個人的にはどうでも良いのですが)

保健センターの候補地を探してみましたが、旧柏崎小跡地(標高8m)か旧警察署・消防署跡地(同17.5m)しかないだろうと考えます。
(最初から「田向で」という結論を前提に検討しているのだから他の候補地は全く念頭にないことは承知していますが)

標高がわかるWeb地図(国土地理院)
http://www.gsi.go.jp/johofukyu/hyoko_system.html

(蛇足)
今回走ったルートは6.7km、46分52秒で、ちょうどキロ7分ペースのスロージョグ。
今年度の准看学院最後の講義(11回目・禁煙講義90分)を終えてぐったりしていたのですが、気持ちよく汗をかいて走り終えたら体も楽になっていました。
健康維持が目的なら、この程度の距離・スピードがちょうど良いのかもしれません。
ちなみに、流行の「超スロージョギング」というのは歩くのとほとんど同じ時速4~5km(キロ12~15分)で、この遅さで走るのは結構しんどいかも。。